株式投資と心理学の密接な関係

株式投資に役立つ学問として、私は会計学や経営学と並んで心理学を挙げます。株式市場は人々の心理の集合体ですから、心理学を学ぶことによって相場に惑わされない投資への態度を身につけることができます。

ノーベル経済学賞を受賞した本

株式市場を「心理学的に」読み解く上で役立つ本が、ノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマンのファスト&スローです。

「ファスト」「スロー」とは人間の心理に関する二つの機能のことを言います。「ファスト」は「システム1」と呼ばれ、簡単に言うと人間の直感です。それに対して「スロー」の「システム2」は論理的な思考のことを言います。

システム1はすぐに働くため、人間は多くの場合これに頼って動きます。人類が生き残るために長い時間をかけて獲得したシステムであり、私たちの身体に深く染み付いています。

これに対しシステム2は大変な怠け者です。なかなか動こうとせず、動いたとしても非常に時間がかかります。しかし高度な思考を伴って論理的に考えますから、合理的な判断を行うことができます。

「システム1の誤り」と「同調」

株式市場は、システム1とシステム2がわかりやすく表れている場といえます。人々がニュースに直感的に反応することで、まず株価が動きます。その後、時間をかけて企業の業績などを論理的に分析することで、次第に正しい価値に収束していくのです。

システム1は非合理的な判断を行いますから、出来事が企業の価値に与える影響が限定的だったとしても、ニュースのインパクトにより過剰反応してしまうことがしばしば起こります。これを助長するのがマスメディアです。メディアはインパクト重視ですから、システム1による行動を助長し、株価は暴落あるいは暴騰を招くのです。

それでは常に合理的に考えればいいと思うかもしれませんが、なかなかそううまくはいきません。多くの人が、システム1にしたがって同じ行動をとっている中で、自分だけ違う行動をとることは心理的に大きな負荷が伴うからです。これを心理学の用語で「同調」といいます。

悪いニュースが出たときは、同調により人々は一斉にその会社を非難して株を売却するので、その会社の株に投資するのには勇気が必要です。逆に、みんながその会社の株を持ち上げる中で、懐疑的な目を向けて上がるかもしれない株を売却するのも強い苦痛を伴います。

「システム1の誤り」と「同調」によって株価が異常に上昇するのがバブルで、株価が下がりすぎるのがリーマン・ショックのようなセリング・クライマックスです。どちらもその後時間をかけて合理的な水準に落ち着いてくるので、バリュー株投資家はこの差からリターンを生むことを考えるのです。

合理的に考えよ!

群集心理だけでなく、投資家個人の心理も非常に重要です。

人は損失の痛みを利益の喜びよりも大きく感じる「損失回避」の傾向を持っています。それにより、損が発生した時には損失を確定することを嫌がり、かえって損を拡大させてしまうことがあります。逆に利益が出たときは、少しの利益でもすぐに確定してしまい、大きな上昇を逃してしまうものです。

株価はあなたが買った価格とは関係なく動くので、今の損益はあなたがとるべき行動と関係ありません。合理的な投資家は、過去の費用は将来の選択には影響を与えないという「サンクコスト」の考え方を徹底しています。極端な話、自分が買った価格は投資した瞬間に忘れてしまった方がいいものなのです。

心理学を学ぶことで、投資に対する重要な示唆を得ることができます。しかし同時に、人が心理に抗うことの難しさも示しています。常日頃から合理的に考えるのはもちろんですが、心理に負けそうになった時に、隣で引っ張ってくれる伴走者が必要です。

つばめ投資顧問はあなたの伴走者になることを目指しています。興味がある方は下の登録フォームよりメールアドレスを送信して下さい。サービス開始をいち早くお知らせします。

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執筆者

執筆者:栫井 駿介

栫井 駿介(かこい しゅんすけ)

つばめ投資顧問 代表
株式投資アドバイザー、証券アナリスト
ビジネス・ブレークスルー(株)「株式・資産形成実践講座」講師

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