音楽が鳴っている間は、踊り続けなければならない

トランプ次期大統領の決定後、相場は過熱感を強めています。NYダウ平均は史上初めて1万9,000ドル台を記録し、日経平均も一時年初来最高値を更新しました。この上昇はとどまるところを知らないようにも感じられます。

市場は踊る

専門家のコメントとして、「市場の雰囲気が変わった」というものを見かけます。確かに「雰囲気」は変わったかもしれません。しかし、経済の実体は何か変化したでしょうか。ここに大きな誤りが潜んでいます。

「音楽が鳴っている間は、踊り続けなければならない。」これは2007年にサブプライム・ローンのリスクが高まっている最中に、シティグループCEOのチャック・プリンスがフィナンシャル・タイムズ紙のインタビューに答えたものです。ご存知のように、その後サブプライム・ショックが発生し、市場は大混乱に見舞われました。

プリンス氏の言葉はサブプライム・ローンに関して述べたものですが、株式市場も同じような傾向があると考えています。上昇相場においては、仮にそれが根拠なき熱狂だとわかっていたとしても、市場参加者は上がり続ける相場を前に踊り続けなければならないというのがウォール街の習性です。

投資家必読の一冊ウォール街のランダム・ウォーカー』では「より馬鹿理論」というものが紹介されています。これは、もし株価が実体を伴わないほど高くなっていたとしても、それよりも高い値段で買ってくれる人がいる限り、その株を買う理由があるというものです。

これらはいずれも市場がバブルを形成するメカニズムを示しているものです。「市場の雰囲気が変わった」という発言は「音楽が鳴っている」状況や「より馬鹿理論」に似てはいないでしょうか。上昇相場に直面した時は、バブルの形成とその崩壊のメカニズムをよく知っておくことが大いに役立つでしょう。

トランプノミクスは失望を招くか

トランプ次期大統領の発言内容は多くが矛盾に満ちたものです。例えば、彼は強いアメリカの象徴としてドル高を容認していますが、それは国内産業の保護にはつながらないものです。国内産業のが活性化しなければ、トランプを支持してきた白人労働者層の人気が離れてしまうでしょう。

また、アメリカ株が上昇している理由に、減税による企業活動の活性化があります。しかし、アメリカのGDPの7割は個人消費に支えられており、企業減税を行ったところで個人消費が盛り上がらなければ新たな投資に踏み切る事はありません。

企業が自主的に投資に踏み切らないのなら、国主導によるインフラ投資を促そうとしています。しかし、インフラ投資は財政悪化を招き、悪い意味での金利上昇を招いてしまうリスクがあります。金利が上がってしまったら、企業はますますお金を借りなくなり、新規投資の機運が鈍ってしまうでしょう。

このように矛盾に満ちた政策ですから、それを取り繕ううちに、やがてアメリカ国民を失望させる結果にもなりかねません。そうなれば、株式市場の熱狂も一気に冷めてしまうでしょう。

踊っている人々を上から眺める

この上昇相場がどこまで続くのか予想することは困難です。音楽が鳴っている間は踊り続けなければならないのが市場の習性ですから、ここからもう一段上昇する可能性を否定することはできません。

しかし、過去のバブルが示しているように、音楽はやがて鳴り止みます。上昇が大きくなればなるほど、急落するリスクも高まっていると考えるのが冷静な投資家の見方です。

歴史上、市場はバブルの形成と崩壊を何度も繰り返していますが、人々は一向に学ぶ気配がありません。これは単に勉強不足ということにとどまらず、避けることのできない遺伝的な習性なのかもしれません。

賢明な投資家ならば、実体の伴わない上昇相場で一緒になって踊るのではなく、人々が踊っているのを上から眺め、音楽が鳴り止むタイミングを待ってから動き出すことを考えると良いでしょう。

※本記事は会員向けレポートの一部を抜粋したものです。

Print Friendly, PDF & Email

執筆者

執筆者:栫井 駿介

栫井 駿介(かこい しゅんすけ)

つばめ投資顧問 代表
株式投資アドバイザー、証券アナリスト
ビジネス・ブレークスルー(株)「株式・資産形成実践講座」講師

詳細はこちら
サイト訪問者限定プレゼント
あなたの資産形成を加速させる3種の神器を無料プレゼント

プレゼント①『株式市場の敗者になる前に読む本』
プレゼント②『企業分析による長期投資マスター講座』第一章
プレゼント③『YouTubeプレゼン資料』

メールアドレスを送信して、特典をお受取りください。
メールアドレス *
※送信したメールアドレスに当社からのお知らせやお得な情報をお送りする場合があります。

※個人情報の取り扱いは本>プライバシーポリシー(個人情報保護方針)に基づいて行われます。
※送信したメールアドレスに当社からのお知らせやお得な情報をお送りする場合があります。
※上記は企業業績等一般的な情報提供を目的とするものであり、金融商品への投資や金融サービスの購入を勧誘するものではありません。上記に基づく行動により発生したいかなる損失についても、当社は一切の責任を負いかねます。内容には正確性を期しておりますが、それを保証するものではありませんので、取扱いには十分留意してください。

気に入ったらシェアしてもらえると嬉しいです!

1 個のコメント

  • もう一度振込用紙を送って頂けますか?普段の質問はどのメールアドレスにおくるのでしょうか。よろしくお願い致します。

  • 山口須美子 へ返信するコメントをキャンセル

    Popular Article - よく読まれている記事Popular Article

    • 銀行株は今後どうなる?そろそろ売り時?
      今回は銀行株についてです。 銀行株が上がりましたが、もう売るべきなのか、まだ持ち続けるべきなのか、悩んでいる方はぜひお読みください。 売るか...
    • 【LIXIL】配当利回り4.75%の裏にあるヤバい現実
      LIXILは住宅設備の最大手である LIXILの中核事業会社、株式会社LIXILは、2011年に国内の主要な建材・設備機器メーカーのトステム...
    • REITの利回り4.65%!今買うべき?
      今、株式市場で流行っているものといえば半導体株です。 半導体株が上昇し、それにつられて日経平均株価も上昇しています。 しかし、今、半導体に投...
    • 【さくらインターネット/住石ホールディングス/三井E&S】売るべきか買うべきか
      今回は「仕手株の流儀」についてお話します。 最初に断っておきますが、つばめ投資顧問では仕手株を推奨していま...
    • 日の丸半導体ルネサス 時価総額6倍は達成可能か?AI半導体ブームに隠れたリスク
      ルネサスは、日本を代表する半導体製造メーカーであり近年業績を拡大させています。 一方で、2010年代の初頭は赤字が続く厳しい時期もありました...

    Article List - 記事一覧Article List

    カテゴリから記事を探す