本質的な価値は企業が抱えるリスクによって幅を持つ

バリュー株投資では、企業が持つ「本質的な価値」を導き出すことが最初の一歩となります。私も推奨銘柄の「目標株価」として適正な価値を示していますが、実際の価値は特定の株価で示せるほど単純なものではありません

あるべき価値の幅=リスクの大きさ

抽象論になってしまい恐縮ですが、価値には一定の幅があると考えています。「ある企業の適正な時価総額は1兆円~1.5兆円」という感じです。その範囲の中にあれば適正価格、安ければ割安、高ければ割高という具合です。

なぜ特定の数字で示せないのかというと、企業の価値は未来の利益の合計によって計算されるからです。未来のことは誰も正確に予測することはできません

将来の利益が不安定であるほど、企業の「あるべき価値」には大きな幅が出ます。この幅の大きさが、一般的に「リスク」と呼ばれるものです。リスクの小さい企業の価値の幅は小さく、リスクの大きい企業の価値の幅は大きくなります。

価値の幅が小さい企業は安心して持てる

あるべき価値の幅が小さい企業としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 電力会社
  • 食品会社
  • 会員制ビジネスを行う会社

上記のような企業は、安定した需要が常に望める上、為替などの外部環境の影響も受けにくい特徴があります。そのため、将来の利益が計算しやすく、価値を求めやすいのです。

あるべき価値の幅=リスクが小さい会社は、投資のハードルは低いと考えます。価値に対する確度が高いため、少しでも割安になれば購入でき、安心して保有し続けることができるからです。

どのような相場環境にあっても難しく考えずに手が出しやすい銘柄と言えるでしょう。

価値の幅が大きい企業は大きなリターンが狙える

逆に、あるべき価値の幅が大きい企業としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 急成長中の若い会社
  • マンション販売会社
  • 輸出企業

急成長中の会社は、価値の大部分を投資家の成長期待が占めます。投資家の期待はとても移ろいやすく、PERが30倍から一気に50倍に急騰するなんてことも珍しくありません。もちろんその逆もあります。

この場合、PER30倍も50倍もどちらが正しいということはありません。なぜなら、将来どこまで成長するかということは誰にも分からないからです。とは言え、常識では説明のできない水準になっていることもあるので、それは明らかに割高ということになります。

マンション販売会社や輸出企業は、それぞれ不動産市況や為替水準に大きく左右されます

不動産市況や為替は自分ではコントロールできないため、いくら会社が優良であっても避けることのできないリスクです。そのため、あるべき価値の幅が大きくなってしまうのです。

そのような観点では、国内最大の時価総額を誇るトヨタ自動車も、為替の影響を大きく受けるため、どちらかと言えば価値の幅が大きな企業に分類されます。

あるべき価値の幅が大きい企業にも、バリュー株投資のチャンスは眠っています。それは、市況が悪化したときや成長が鈍化して投資家の期待が剥落し、株価が大きく下落したときです。

株価の下落により、あるべき株価の下限近くやそれを下回る水準になれば、逆に再び幅の中央や上限近くにまで上昇する可能性があるということです。

もちろん、会社の中身をよく検証する必要はありますが、うまくいけば価値の幅が大きい企業こそ、より大きなリターンをあげられるでしょう。

価値の幅を意識する

あるべき価値の幅が小さい企業も大きい企業も、「株価が価値を下回った時に投資する」という原則に違いはありません。

しかし、それぞれの特性を抑えていれば、どのような心持ちで投資し、いつ売るべきかということが自ずと見えてくるでしょう。

皆さんも投資を行う際には、まずはあるべき価値の幅が大きい企業か小さい企業かをよく考えてみてください。

※本記事は会員向けレポートの一部を抜粋したものです。

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執筆者

執筆者:栫井 駿介

栫井 駿介(かこい しゅんすけ)

つばめ投資顧問 代表
株式投資アドバイザー、証券アナリスト
ビジネス・ブレークスルー(株)「株式・資産形成実践講座」講師

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