各国がガソリン車の販売を禁止・・・これから30年の自動車業界はどうなるか?

テスラの電気自動車を筆頭に、自動車業界が大きく動こうとしています。携帯電話が一気にスマートフォンに移行したように、自動車もあっという間に電気自動車に移行してしまうのでしょうか。

エコカーの主流は電気自動車で決定か

自動車業界が目まぐるしく動いています。フランスやイギリスが将来的にガソリン車の販売を禁止する方針を発表し、中国でもその検討を始めました。スウェーデンのボルボは2019年にも生産する全ての自動車を電気またはハイブリッド自動車にするとし、仏ルノー・日産や独フォルクスワーゲンも電気自動車比率を大幅に高めるとしています。

私は世界的にエコカーの主流は電気自動車になる流れだと考えています。その理由は、やはり水素などに比べて、電気自動車のメリットが大きいからです。

第1のメリットは、電気という非常に入手しやすいエネルギーを使うことです。ガソリンスタンドに代わる補給インフラがすぐに整備でき、究極的には自宅で充電することができます。トヨタが目指している燃料電池(水素)自動車は、補給インフラ整備に多額の費用と時間がかかってしまうことが大きな足かせとなるでしょう。

第2のメリットは、生産コストを大幅に削減できる可能性が高いことです。ガソリン車の内燃機関では非常に多くの部品が必要ですが、モーターで走る電気自動車は4割部品を削減できると言います。そうなると全体のコストが下がるだけでなく、新規参入も起こりやすくなるでしょう。究極的には、パソコンなどのデジタル家電のように、容易に手に入る部品で誰でも自動車が作れるような時代も来るかもしれません。

第3のメリットは、自動運転との相性です。完全自動運転ということになれば、運転を制御する様々な箇所で電気の出番があるでしょう。そことの親和性が最も高いのが電気自動車なのです。

電気自動車の最大の難点は電池です。まだ長距離を走るには電池の容量が小さく、頻繁な充電が必要です。その充電も、急速充電で30分も時間を取られるなど、長距離を航行する際には大きなストレスとなります。耐久性に関しても、使っているうちに携帯の電池のように劣化することも懸念されます。

逆に言えば、電池の問題さえ解決できればほぼデメリットはないのです。そう考えると、電気自動車の主役は自動車メーカーではなく電池メーカーでしょう。技術的なことは分かりませんが、ここで圧倒的な技術を開発する企業が現れ、その会社がうまく経営されていれば世界的な大企業に成長する可能性があります。

電池は自動車だけの問題ではなく、スマートフォンをはじめとするコードレス電化製品の宿命です。そのような観点も、今後の銘柄探しに役立てて行きたいと思います。

それでも今後30年間の主流はガソリン車!

電気自動車について滔々と書きましたが、私は今後30年はガソリン車が主流である状況は大きく変わらないと考えています。

2016年の世界電気自動車販売台数は47万台で販売比率は0.5%です。2035年には13倍の630万台となる予想ですが、それでも販売比率は4.6%。先に販売されているものを含めると、走っている自動車全体では微々たる割合にすぎません

車の寿命は携帯電話のように短くありません。新車で一度買ってしまえば10年乗ることは珍しくなく、その後も中古市場で活躍します。日本では廃車になるような中古車でも、アフリカなど新興国では「良車」として販売されて、まだまだ長く使用されます。

携帯電話は先進国のみならず、新興国でもあっという間にスマートフォンに置き換わりました。それを可能にしたのは、従来の携帯電話がスマートフォンになって「生活の形」が変わったことと、大量生産により価格が大幅に下がったことでしょう。

自動車に関しては、電気自動車や自動運転車がいくら発達したところで、「人や物を運ぶ」という基本的な機能が変わるわけではありません。これが空を飛ぶようなことがあれば大きく変わるでしょうが、今のところその可能性は低そうです。

したがって、価格が数万円のように大きく下がることがなければ、まだ30年はガソリン車の時代が続くと考えています。

世の中は新しいものに飛びつきたがりますが、古くても残るものには必ず意味があります。あくまで数字で冷静に判断しながら、企業の価値を見極めていきたいと思います。

※本記事は会員向けレポートの一部を抜粋したものです。

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執筆者

執筆者:栫井 駿介

栫井 駿介(かこい しゅんすけ)

つばめ投資顧問 代表
株式投資アドバイザー、証券アナリスト
ビジネス・ブレークスルー(株)「株式・資産形成実践講座」講師

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