昔からの相場の格言は今も生きている!

これまでバフェットやソロスなど、海外の著名投資家の投資哲学や格言を取り上げてきましたが、日本でも昔から語り継がれてきた投資の格言が少なくありません。皆さんも耳にしたことがあると思われる格言の一部を、バリュー株投資の観点から解説します。

人の行く裏に道あり花の山

私も常々引用するこの格言は、まさにバリュー株投資の基礎となるものです。多くの人が群がる銘柄は割高になっていることが多く、そうでないにしても旨みは残っていません。割安なものに投資するには、多くの人が敬遠する銘柄にこそ、割安な旨み、言い換えると「安全域」が残っている可能性が高いのです。

もちろん、闇雲に嫌われている株を買う「逆張り」とは異なり、しっかりとした理解の上で周囲の雑音に惑わされず冷静な判断を下す必要があることは言うまでもありません。

名人になるより素人らしく

投資経験が長くなると、だんだんと相場の癖が分かった気になり、上がり下がりを読もうとするようになります。しかし、多少当たっていたとしてもそれが続く時間は長くはなく、大きな利益を得ることはできません。逆に、読みが外れて大きな損失を被ってしまうこともあります。

大きな利益をあげようと思ったら、ちょっとのことで分かった気にならず、細かな動きよりも自分の信じた道を突き進むことこそが必要です。中途半端な玄人よりも素人であるほうが、常識に流されない「人の行く裏」を取ることができるのです。

遠くのものは避けよ

言い換えると「知らないものに投資するな」ということです。バフェットも「自分が理解できないものには投資しない」ことを徹底しています。理解できないものは本質的な価値を見抜けないだけでなく、ちょっとした株価の動きに惑わされて不用意な売買を行ってしまいます。投資は最終的に自分との戦いでもあり、理解できないものへの投資はそのスタートラインにも立てていないということです。

行き過ぎもまた相場

相場はあるべき水準に収束するものだと考えられていますが、その過程では明らかに行き過ぎることもあります。これがいわゆる「バブル」です。バブルは歴史上何度も繰り返されてきたことであり、それを「おかしい」と論評していても仕方がありません。大事なのは、次に起こることに備えて準備を進めることです。

前回取り上げたソロスが唱える「再帰性」にも似ています。ソロスは近年になって行動経済学が脚光を浴びる半世紀前からその説を唱えていましたが、同じような考え方が日本ではもっと古くから経験則で知られていたことになります。シンプルな格言も決して侮れません。

【参考】「イングランド銀行を潰した男」ジョージ・ソロスを成功に導いた「哲学」

閑散に売りなし

出来高が少なく、取引が閑散としている相場には短期投資家は見向きもしませんが、長期投資家にとってはこういう時こそ種まきに励むべきです。私が経験してきたところでは、リーマン・ショック後の低迷期には、東証一部の1日あたり売買代金は今の半分程度にまで減少しましたが、後から振り返るとその時が絶好の買い時だったことがわかります。

同様のことは個別の銘柄についても言えます。取引が少ないということは、多くの投資家から見過ごされているということです。「人の行く裏に道あり花の山」にしたがうと、まさに裏の道を行っているということになります。チャートを見る際は、株価そのものよりも出来高に注目した方が意味があると考えます。

天井三日、底百日

特にバリュー株投資では、株価に大きな動きがない「底」と見られる期間がとても長く続く一方で、ある時急に上昇することが多くあります。投資家は見過ごしている期間が長い一方、上昇し始めたら慌てて飛びつく傾向があるためです。そのため、保有する銘柄がなかなか上がらなくてもじっと待つことが大切であり、上がった時には機を見て売却する機動性も必要ということになります。

この動きはバリューか株投資家にとって決して悪いことではありません。「底百日」ということは、買える期間が長いということです。そのため、買う際にはその銘柄をじっくり検証することができます。この性質を考慮した「売り早かれ、買いは遅かれ」という格言もあります。

株を選ぶ前に時を選べ

いくらいい銘柄であっても、ただ買って持ち続ければいい訳ではありません。割高な価格で買ってしまっては、儲けを出すのは容易ではないでしょう。株価は常に動いていますから、「時を選ぶ」ということは「価格にこだわる」と言い換えることができます。

バリュー株投資的な考え方で言えば、これは「安全域」がある時に買うべしということに他なりません。いい銘柄は少なくありませんが、それを買うタイミングは慎重にすべきでしょう。

見切り千両

最初にいい投資だと思って投資しても、自分の考えが間違っていたり、環境の変化で思い描いたストーリーが実現しそうにない場面に出くわすことがあります。そのような時に過去の自分の判断に固執するのではなく、見切りをつけて次に行った方が的確な判断ができるということです。もちろん、見切った後に上昇することもありますが、下落するかもしれなかったリスクを考えると、十分に元が取れていると考えるべきでしょう。


相場の経験の長さにかかわらず、自己流の判断だけでは大きな失敗を犯してしまうことがあります。自分ではわからない状況にぶつかった場面や苦手な分野では、先人の教えにしたがった方が良い結果に結びつくでしょう。みなさんもぜひ、自分の好きな格言を探してみて下さい。

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執筆者

執筆者:栫井 駿介

栫井 駿介(かこい しゅんすけ)

つばめ投資顧問 代表
株式投資アドバイザー、証券アナリスト
ビジネス・ブレークスルー(株)「株式・資産形成実践講座」講師

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