ピンチはチャンス?北朝鮮の暴発リスクに投資家はどう向き合うべきか

北朝鮮リスクが市場を揺るがし、マーケットは軟調な展開となっています。再度のミサイルの発射も懸念されていることから、市場はすっかりリスクオフモードです。軟調な市場に、バリュー株投資家はどう向き合うべきでしょうか。

金正恩の目的は「膠着状態」か

やりすぎとも思える挑発を繰り返す北朝鮮ですが、それに対して国際社会は何もできないことが白日の下にさらされています。経済制裁は効果を発揮せず、戦争になることを恐れる中ロは実効性のある策を取れない状況です。

軍事の専門家ではないので詳細な分析はできませんが、金正恩委員長の目的は自身の政権維持にあると考えられます。国内では粛清により反乱分子を摘み取り、対外的には核をちらつかせて具体的な行動に出られないようにけん制しています。実際に何もできない国際社会を見ていると、金正恩の戦略は実は功を奏しているように思います。

もっとも、一連の行動によって北朝鮮が得られるのは体制の維持くらいのものでしょう。一部の報道はアメリカとの対話を目的としていると言っていますが、アメリカがこの状況で対話に応じるとは思えません。金正恩はアメリカを威嚇し続けることで、自身に手を出せないようにしている、まさにギリギリの外交を繰り広げているのです。

この状況を学校のクラスに置き換えるとわかりやすいかもしれません。アメリカはクラスの番長、北朝鮮は喧嘩は必ずしも強くない問題児とします。北朝鮮が周りの子に意地悪をしたとしても、「キレると何をするかわからない」と言う評判があれば、アメリカといえどなかなか手を出すことはできません。それを逆手に取り、北朝鮮は「何をするかわからない」の度合いをどんどん高めているのです。

この見方で行けば、これから起こることはただただ「膠着状態」ではないかと考えます。トランプ大統領は軍事攻撃も選択肢にあると言っていますが、下手に手を出せる状況ではないことも事実です。マーケットは一進一退を繰り返すでしょう。

もっとも、地政学的リスクはマーケットにとって本質的なリスクになる可能性が低いと考えます。なぜなら、ほとんどの企業にとって価値を揺るがすような事態にはならないからです。為替の変動等による間接的な影響はあるかもしれませんが、それも一時的なものでしょう。

長期投資家が気にすべきことは、企業の業績や価値に影響するイベントです。北朝鮮リスクは単にお金の出し入れの話にすぎません。マーケットを動かすイベントが発生したら、企業の業績に与え得る中長期的な影響を考える癖をつけましょう。

マーケットが軟調な時の振る舞い方

現在のようにマーケットの方向感が分からず軟調なとき、長期投資家はじっと身を潜めていることをおすすめします。

少し下がったからと言って、まだ本格的な下げがいつ来るか分かりません。少しのリバウンドを狙ったがために、その後大きく値下がりしてしまったら元も子もありません。短期的な株価の動きだけで買いに回ることは控えたほうが良いでしょう。

買うとしたら、曖昧な要因でダラダラ下げている時ではなく、昨年のブレグジットのように決定的な要因で大きく値下がりした時でしょう。下がった要因が明らかなので、それを分析して企業の価値に問題がなければ、割安なものから拾っていくのが賢明です。

保有株についても慌てて売るべきではないと考えます。そもそも本質的な価値よりも割安なものに投資しているはずですから、一時的に値下がりしたとしても、長い目で見れば再び上昇する可能性が高いからです。

ここで慌てて売ってしまったら、その後すぐに上昇して本来得られるはずだったチャンスを逃してしまうかもしれません。本質的な価値に自信を持っているなら、一時的な下落リスクは気にすべきではないと考えます。

もちろん、上記のような決定的な要因で保有株が値下がりしたときは、それが価値に与える影響を分析し、問題がないことを確認してから買い増しを検討すべきです。「保有株が値下がりした」と残念がるのではなく、「割安度が増して買いやすくなった」と考えるのです。

そもそもマーケットが軟調なときは、好業績であっても株価指標が割高なものから売られていきます。利益確定売りと割高感から来る値下がりリスク回避の動きが重なるからです。

一方で、割安な銘柄はそのような時でも売られにくく、下落幅は限られます。「これより下がることはない」手堅い銘柄だとなおさらです。そのため、リスク管理の観点でも、割安銘柄でポートフォリオを固めることは重要だと考えます。

バリュー株投資では、「マーケットに左右されない投資」を目指しています。マーケットの動きばかりを見て右往左往していては、腰を据えて資産を増やすことはできません。マーケットに動かされるのではなく、その波を利用することがバリュー株投資家にとって必要なことでしょう。

※本記事は会員向けレポートの一部を抜粋したものです。

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執筆者

執筆者:栫井 駿介

栫井 駿介(かこい しゅんすけ)

つばめ投資顧問 代表
株式投資アドバイザー、証券アナリスト
ビジネス・ブレークスルー(株)「株式・資産形成実践講座」講師

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