iPhoneの成功と誤算 〜「旧機種遅延問題」からわかること〜

アップルがiPhoneのアップデートにより旧端末の動作を「意図的に」遅くしているという疑惑を認めて謝罪しました。電池への負荷による急なシャットダウンを防ぐ措置で悪意はなかったとしながらも、電池交換費用を値下げすることで矛を収めさせようとしています。

【参考】Apple、iPhone旧機種の”減速”問題で謝罪、バッテリー交換を1年間値下げ(マイナビニュース)

アップルのビジネスモデルは「買い替え」に依存

この問題から透けて見えることは、アップルのビジネスモデルの肝とその限界です。

アップルはiPhoneのほか、iPadやApple Watchなどを発売していますが、売上高の7割はiPhoneによるものであり、事業の核をなしています。様々な新サービスを模索してはいますが、現段階ではiPhoneを売り続けない限り成長は困難です。

しかし、世界中の人々はあっという間に1人1台スマートフォンを手にしてしまったため、市場の拡大には限界が見えました。市場の拡大が見えなければ、既に持っている人に買い替えてもらうしかりません。そのために、アップルは年に2回もiPhoneの新端末を派手に発表し、買い替え需要を掘り起こしているのです。

打ち破った「常識」が自らの首を絞める

一方で、アップルは無料でOSアップデートを提供しています。アップデートにより様々な新機能が追加されるため、古い端末のままでも最新の機能を味わうことができ、高性能のカメラや顔認証がいらないのであれば、多くの人は買い替える必要はないのです。

OSアップデートと言えば、先駆けはマイクロソフトでしょう。Windowsのアップデートを無料では提供せず、新しい端末・ソフトを買ってもらうことで継続的な需要を獲得してきました。ソフトウェアの業界ではこれが「当たり前」だったのです。

アップルはその常識を打ち破り、OSアップデートを無料で提供しました。今ではマイクロソフトもこの動きに追随するようになりました。ユーザーの利便性は向上し、私がメインで使っているPCも9年前のものですが、いまだに支障なく使用できています。

「挑戦者」であるうちは功を奏した戦略でしたが、世界最大の時価総額を誇る企業となった今、自らの首を絞める結果となっています。

かつてマイクロソフトが行っていた「新OSによる買い替え」はもう使うことがでません。公式には否定していますが、今回の「遅延化」はその問題を解決するための一手だった可能性はあります。

このように、企業ニュースの根本を辿ると、その会社が抱える本質的な問題に行き着くことが少なくありません。それが投資のヒントに結びつくこともあるでしょう。何より、ニュースの見方が面白くなります。投資をすることによる価値のある副産物と言えます。

※本記事は会員向けレポートの一部を抜粋したものです。

Print Friendly, PDF & Email

執筆者

執筆者:栫井 駿介

栫井 駿介(かこい しゅんすけ)

つばめ投資顧問 代表
株式投資アドバイザー、証券アナリスト
ビジネス・ブレークスルー(株)「株式・資産形成実践講座」講師

詳細はこちら
サイト訪問者限定プレゼント
あなたの資産形成を加速させる3種の神器を無料プレゼント

プレゼント①『株式市場の敗者になる前に読む本』
プレゼント②『企業分析による長期投資マスター講座』第一章
プレゼント③『YouTubeプレゼン資料』

メールアドレスを送信して、特典をお受取りください。
メールアドレス *
※送信したメールアドレスに当社からのお知らせやお得な情報をお送りする場合があります。

※個人情報の取り扱いは本>プライバシーポリシー(個人情報保護方針)に基づいて行われます。
※送信したメールアドレスに当社からのお知らせやお得な情報をお送りする場合があります。
※上記は企業業績等一般的な情報提供を目的とするものであり、金融商品への投資や金融サービスの購入を勧誘するものではありません。上記に基づく行動により発生したいかなる損失についても、当社は一切の責任を負いかねます。内容には正確性を期しておりますが、それを保証するものではありませんので、取扱いには十分留意してください。

気に入ったらシェアしてもらえると嬉しいです!

コメントを残す

Popular Article - よく読まれている記事Popular Article

  • 銀行株は今後どうなる?そろそろ売り時?
    今回は銀行株についてです。 銀行株が上がりましたが、もう売るべきなのか、まだ持ち続けるべきなのか、悩んでいる方はぜひお読みください。 売るか...
  • 【LIXIL】配当利回り4.75%の裏にあるヤバい現実
    LIXILは住宅設備の最大手である LIXILの中核事業会社、株式会社LIXILは、2011年に国内の主要な建材・設備機器メーカーのトステム...
  • REITの利回り4.65%!今買うべき?
    今、株式市場で流行っているものといえば半導体株です。 半導体株が上昇し、それにつられて日経平均株価も上昇しています。 しかし、今、半導体に投...
  • 【さくらインターネット/住石ホールディングス/三井E&S】売るべきか買うべきか
    今回は「仕手株の流儀」についてお話します。 最初に断っておきますが、つばめ投資顧問では仕手株を推奨していま...
  • 日の丸半導体ルネサス 時価総額6倍は達成可能か?AI半導体ブームに隠れたリスク
    ルネサスは、日本を代表する半導体製造メーカーであり近年業績を拡大させています。 一方で、2010年代の初頭は赤字が続く厳しい時期もありました...

Article List - 記事一覧Article List

カテゴリから記事を探す