関西電力(9503)の上昇要因

関西電力(9503)の株価が上昇しています。上昇率は1年で約5割にのぼります。

上昇の理由は何と言っても原子力発電所の再稼働です。2016年3月に大津地裁が高浜原発運転停止の仮処分の決定を下しましたが、2017年3月28日に大阪高裁が仮処分を撤回しました。これを受け、関西電力は5月17日に高浜原発4号機を再稼働しています。

2011年3月の福島第一原子力発電所事故以降、全国で原子力発電所が稼働していない期間が続きました。それでも電力会社は電力の供給を止めるわけにはいかないので、火力発電による発電を増やしました。

火力発電は燃料を購入しなければ行えないため、コストがかさみます。電力各社は燃料コストの大幅な上昇により、赤字を計上し続けました

関西電力 経常利益推移 (出典)関西電力ホームページ

しかし、次第に業績は回復に向かいます。その要因は①電気料金の引き上げ②原油価格の下落③コスト削減です。

発電コストが上がれば、電力会社は上昇分を電気料金に転嫁できます。東日本大震災以降、各社は電気料金を引き上げてきました。2016年4月の電力自由化により、安易な値上げは難しくなりましたが、それでもこれまで地域を独占してきた圧倒的なシェアの力は健在です。

原油価格の低下は経営に苦しむ電力会社にとってオアシスとなりました。燃料費の低下は長期的に考えると電気料金に反映されてプラスマイナスゼロになりますが、これにより2015年度には各社とも黒字に回復しました。

さらに電力会社はこれまで競争もなく安穏と過ごしていましたが、業績悪化や電力自由化の荒波によりはじめて経営体力を強化する必要性が生まれました。そこでコスト削減に取り組むと、これまで無駄が多かったせいか関西電力でも年1,000億円単位のコスト削減が実行されました。

このような状況で原発の再稼働が決まることは、もはや鬼に金棒です。燃料購入量の大幅な低下が想定される他、継続的なコスト削減効果が発揮され、場合によっては事故前以上の好業績を叩き出す可能性もあるでしょう。

もちろん、裁判により再び原発の稼働が差し止められる可能性は捨てきれません。しかし、安倍政権は原発を容認する姿勢であり、どちらかと言えば再稼働が進む方向性にあると考えます。経営体力が強化されつつある電力会社から、これからも目が離せません。

Print Friendly, PDF & Email

執筆者

執筆者:栫井 駿介

栫井 駿介(かこい しゅんすけ)

つばめ投資顧問 代表
株式投資アドバイザー、証券アナリスト
ビジネス・ブレークスルー(株)「株式・資産形成実践講座」講師

詳細はこちら

気に入ったらシェアしてもらえると嬉しいです!

コメントを残す

Popular Article - よく読まれている記事Popular Article

  • 【紅麹問題】それでも小林製薬の株価はなぜ暴落しないのか
    今回は小林製薬を改めて取り上げます。 前回、小林製薬を取り上げてから約3ヶ月が経ちましたが、そこからの進捗と、今何が起こっているのかを示して...
  • 本田技研工業 配当利回り4% PBR0.65倍は投資チャンスか?
    本田技研工業(以下、ホンダ)の株価が好調です。 出典:株探 月足チャート 過去20年の平均PERは約10倍ですが、24年7月9日現在のPER...
  • 配当利回り 3.4%のキリンHDに投資して良い?成長性を考える
    今回は国内大手のビールメーカー、キリンホールディングス(以下、キリン)を分析します。株価は2018年にピークをつけた後、2,000円前後でほ...
  • ヤクルトの株価下落が止まらない!その原因と今後の見通しをアナリストが解説
    今回はヤクルトについてです。 ヤクルトの株価が下落し続けていますが、その理由と今後の見通しについて解説したいと思います。 長期的に成長してい...
  • 次の出世株を探せ!中小型株編【1】
    普段私が取り上げている企業は、やはり皆さんが注目する企業ということになりますが、実際の投資は必ずしもそういった動きにはならないかもしれません...

Article List - 記事一覧Article List

カテゴリから記事を探す