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以下、文章化したものです。
今回は東証マザーズ指数が14年ぶりの高値を記録していることについてお話ししたいと思います。
マザーズというと日本の新興市場の代表格と言えて、赤字でも上場できたりと、若い企業が多いです。
そのマザーズの指数が14年ぶりの高値を記録していて、実はこれはアメリカのナスダック総合指数を上回るパフォーマンスで、新型コロナ後にそれだけのパフォーマンスを生んでいます。
これは果たしてバブルなのか、あるいは本格上昇なのかということについてお話ししたいと思います。
結論としては私はバブルだというふうに断じています。
その理由について説明します。
「絶好調」マザーズの中身
まずマザーズ指数の推移です。
このリーマンショック前後に非常に大きく下がりましたが、その後アベノミクスを経て大きく上昇してきていながら2018年1月をピークにまた下落に転じ、この新型コロナショックで527ポイントという所まで下がりました。
しかしその後急回復して今や1368ポイントと2倍以上の上昇になっています。
これは世界でもまれに見るコロナ後の上昇率です。
世界ではアメリカのナスダック、これはamazonやマイクロソフト、アップルなどのハイテク企業が中心となっている指数ですが、これが調子がいいと言われている中で3月31日以降の上昇率はそれでも40%50%というところです。
それに対してマザーズは100%、2倍という驚異的な数字を記録していて、まさにこの半年間においては世界最強ということができるわけです。
ではそのマザーズ指数は一体どんな銘柄で構成されているのかというと以下のようなものです。
一社ずつ簡単に解説します。
メルカリは皆さんご存知の通り、フリーマーケットアプリをやっていて、株価が上場してからさえないところもありましたが、この新型コロナで不用品の処分にインターネットで物を売買するということが根付いてくるのではないかということが考えられて、そこから大きく上昇して3月から2倍以上の株価になっています。
ラクスというのは経費精算など企業がデジタル化するにあたって必要なシステムを作っている企業です。
実は私もよく利用していまして、当社のメール配信アプリはこのラクスが作っている「配配メール」というものを利用しています。
これが非常に使いやすくて、また営業の人に「ここをこうしたいんですけど」という要望を伝えたらすぐにそれを反映していくものすごい開発力を持っていて、とてもいい企業だと実感しています。
私がこのサービスを使い始めたのが2018年頃なんですけれども、その頃に買っていれば今ごろ大きな利益を手にしていたんじゃないかと思うと非常に悔やまれるところではあります。
それからフリーです。
これは会計ソフトの会社です。
中小企業ではこれまで会計が手書きや excel、あるいはダウンロード型の会計ソフトでやっていたりしたかもしれないのですが、このフリーだったら全てオンライン上でやることができるので、在宅勤務にも適しているということになり、その辺りの期待が上昇してこれも株価2倍以上に上昇している状況です。
弁護士ドットコムは電子印鑑システムクラウドサインがとても期待されて伸びているというところになります。
今、菅政権ではハンコ廃止が声高に叫ばれています。
ハンコがなくなると一方で誰か署名したのかということを証明しないといけませんからそこでこの弁護士ドットコムが持っているクラウドサインが有力なのではないかということがあります。
この弁護士ドットコムを立ち上げた元榮太一郎参議院議員も自民党に所属していますから、弁護士ドットコムに非常に追い風になるのではないかと、株価はこの半年で3倍にまで上昇しているというところです。
BASEはインターネットショッピングのシステムを提供している会社ですが、上場して間もないものの、このコロナ禍で中小企業などにもネットショッピングが流行るのではないかということが見られまして株価も一直線に上昇していて、この半年でテンバガーをすでに達成しているというような状況です。
株価に比例していない業績
新型コロナに対応したDX(デジタルトランスフォーメーション)などの銘柄が非常に力強く上昇しているということがわかります。
では業績も上昇しているのかというと必ずしもそうとは言い切れないところがあります。
例えばこれが今期の業績予想です。
コンセンサス(アナリストが発表しているものの平均)に対するPERに関しては、そもそもメルカリとラクスは赤字になっています。
さらにfreeeも予想利益に対してPERは140倍もありますし、弁護士ドットコムに至っては1100倍ととんでもなく高い数字になっています。
つまり、いずれもまだそこまで利益がついていないのにそれを大きく上回る、何百倍にもなるような株価がついているということになるわけです。
成熟企業だったらこんなに高いPERというのは到底容認されない水準なのですが、一方で今は先行投資の段階だからコストがかかっていてあまり利益が出ていないのではないかという見方もできるので、ここでは売り上げを対比で見るという見方があります。
株価を売上高対比で見るものをPSR(株価売上高倍率)と言います。
これが新興企業だと10倍以下だったら比較的に伸びている企業だったら割安というふうにも見られることがあります。
そのPSRを見てみると、メルカリで8.9倍、ラクスで25.7倍、freeeで39.4倍、弁護士ドットコムで66.2倍、BASEが36.2倍とメルカリ以外は10倍を大きく超える水準となっています。
これだけPSRが高いと、いくら今後利益を出すようになっても、企業規模自体が何十倍にもならないことにはPERで見たときにまっとうな水準になるのは到底難しいというような状況にも陥るわけです。
したがってこれを見る限り私たちのような腰を据えた長期投資家から見ると到底手が出せない水準ということになります。
以前の高騰はその後どうなった?
ではなぜ上がっているのかというと、投資家の期待が上昇しているからです。
いずれも政策だとかDXの波に乗る銘柄だと見られていますから、まず買いがどっと入ります。
そこで株価が上がっているのを見ると短期的な投資家が今のうちに儲けてやろうと思って買いが買いを呼んで株価がどんどん押し上げられているという状況なのです。
このような現象はマザーズのような新興市場ではよく起こります。
かつて高値を記録した2018年の1月頃の状況を見てみましょう。
当時の時価総額上位の銘柄がこのような銘柄群です。
そーせい、ミクシィ、CYBERDYNE、ジーエヌアイ、サンバイオと、皆さんも耳にしたことがある銘柄群なのではないかと思います。
特に特徴的なのがそーせい、それからジーエヌアイ、サンバイオといずれも医療関係バイオ関係ということになり、薬というとどうしても一つの薬がうまくいけばとんでもない利益を上げる事がありますのでそこで夢を買う投資家が一気に殺到して株価が上昇するということもあります。
またこのサイバーダインは介護用ロボットで、体につけて楽に人を持ち上げられるというようなものです。
当時はテレビでも盛んにに取り上げられていました。
ただこれらの企業の業績はPERを見たときにmixiを除けばいずれも赤字という状況でした。
ではここから株価がどう推移してきたのか、一つ一つ見てみましょう。
そーせいに関してはこれもバイオベンチャーですけれども、3000円だったところがズルズルと下がって今は1300円というところです。
mixiは2018年頃はすでにモンストがヒットした後の下り坂に入りつつあったというところがあって、利益は出ているのですが、モンストが徐々に衰退していくに従って株価も下がってきてしまったというところになります。
サイバーダインも2018年頃が投資家の期待のピークで、実際はその後も利益がついてこなかったのでやはり株価が下落してきてしまいました。
一方で唯一好調だったのはジーエヌアイグループで、ここは業績の方を見れば分かるのですが業績自体も大きく伸ばして今や黒字化しています。
ちゃんと黒字化したことによって株価としてはプラスになったということです。
一方で一番ひどいのがサンバイオです。
この2019年1月のように、時々バイオ分野でこういうタワーができるのですが、薬がうまく承認されるのではないかということで期待が期待を呼んで一時的に株価が上昇することがあります。
しかしその後はその薬がやはりうまくいかなかったというようなことになると、株価が一気に滝のように下落するというような現象が起きます。
これがいわゆるイナゴタワーと呼ばれるものです。
まとめてみますと株価についてはそーせい-55%、ミクシィは-40%、サイバーダイン-68%、ジーエヌアイは+56%ですけれどもサンバイオは-83%と、当時高値を記録した銘柄が今は株価に関しては惨憺たる状況ということになっています。
夢は儚い
もっとも当時はバイオ系中心の上昇だったということから今のデジタルトランスフォーメーションと必ずしも比べられるものでもないかと思われますが、マザーズの特徴としては個人投資家が中心の市場であるということ、それからその個人投資家というのが非常に夢見がちな存在であるということが挙げられます。
先ほど挙げたように、例えばバイオで世界を救うんじゃないか、あるいはこれから介護が必要になるにあたってサイバーダインが大活躍するんじゃないかというような派手な企業というのが人気になりがちですが、一方でそこが利益を出ていなかったらやはり期待がやがて剥げてきて株価が下落するということになるわけです。
また変動が大きいというところもあります。
このように夢見がちなのですが夢だけで株価は持ちませんからやがて夢から醒めて株価が下がるということも必然のものとしてあります。
その結果変動が非常に大きくなるわけです。
それはこのチャートを見れば一目瞭然かと思います。
1200から255というとんでもない下落を演じてその流れが未だに続いています。
今がこのコロナ後で世界で最も上昇した指数だと言われていますが、コロナの下落が大きかった、変動幅が大きいが故にこのような状況に陥ったという風にも見えるわけです。
私も個人投資家の皆さんを相手に会員サービスをやっていますが、よくここで挙げるような調子が良くて将来の夢がありそうな銘柄どうですかというような質問をかなり受けます。
それが例えばこの株価自体が夢で形成されているからいつかその夢から覚めるとわかっていてそれでも投資すると言うなら構わないですが、確実性を重視しようと思ったらこの砂上の楼閣だったりとか蜃気楼のようなものに投資しているというのは決して安心できる投資とは言えません。
このサンバイオにあるように、この後ストップ安で売ろうにも売れないというような状況になりましたが、このようなことは極端かもしれませんけれども、今の株価の上昇ぶり、マザーズ指数の上がりっぷりを見るとまた下落局面ではこのようなことが起きてもおかしくないということを常に念頭においていかなければなりません。
私たちのような長期投資家は今から買うというのは到底難しいです。
もし持っている人がいたら売り時を探す局面だと思います。
これからまだ夢が続いて上昇するということももちろんあるんでしょうけれども、それに賭ける投資というのはこれはもうギャンブルになってきます。
確実な投資をしようと思ったら下手に今のマザーズのような銘柄を見るのではなくてもう少しタイミングを待ってみるとかあるいはもっと株価が抑えられているような企業を探す方が長期投資としては賢明だと考えます。
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