いい株を安く買うタイミング

株式投資をしていると、アベノミクスのように市場全体が盛り上がった時に儲ける経験をしたことがある人も多いでしょう。アベノミクスであれ何であれ、投資で儲けるのは素晴らしいことです。しかし、それで投資の才能があると考えるのは早計です。

何を買っても儲かるタイミングはある

2008年のリーマンショック以降、東日本大震災などもあり、日本の株式市場は長らく低迷を続けていました。しかし、2012年末に安倍政権が発足すると、金融緩和をはじめとするアベノミクスが実行され、株価は急激に上昇しました。安倍政権発足前から比較すると、日経平均・TOPIXともに最大で2倍以上にまで上昇しました。

この間の個別銘柄の動きを見ても、ほとんど例外なく大きく上昇していることが分かります。特に、値動きの軽い中小型株ほど大きく上昇しているケースが目立ちます。

市場では、このように何を買っても儲かるタイミングが存在します。それもそのはずで、株価の動きというのは、市場全体に合わせた「ベータ(β)」と呼ばれる要因と、個別銘柄の成長性に左右される「アルファ(α)」と呼ばれる要因があります。アベノミクスのような市場全体が上昇しているケースでは、前者のベータが作用し、銘柄を選ばず株価が上昇したのです。

市場全体が下がる時こそ本当の選球眼が必要

それでは今はどうでしょうか。アベノミクス後の最高値からは値を下げていますが、それでも市場全体に割安な指標は見られません。一方で、アメリカの金融緩和政策終了によるマネーの停滞や、中国の経済成長減速のリスクにさらされています。何かのきっかけに、市場全体が大きく下がる可能性は否定できません

市場全体が大きく下がると、アベノミクスで起きたこと逆のことが起こります。大半の銘柄の株価は下がり、特に動きの軽い中小型株は大きく下がることになります。もちろん全ての中小型株がそうだというわけではありませんが、大型優良株と比較してその可能性は高くなります。

このような場合にこそ、銘柄の選球眼が求められるのです。ダメな株を高い価格で買っていたらもちろん大損してしまいますし、いい株であっても高い価格で買っていては、やはり損をしてしまう可能性は高くなります。

投資の原則は「いい株を安く買う」ことです。大型の優良株に目をつけていれば、いい株というのはある程度見つかります。しかし、それが本質的な価値を大きく下回る場合はそう多くありません。何らかの要因により、いい株が大きく値を下げた時こそが、バリュー投資家が勝負に出るときなのです。

虎視眈々とチャンスを伺う

そこで、つばめ投資顧問では、ある程度割安で優良と見られる株に目をつけておき、時間をかけて分析します。最終的にいい株だと判断できれば、適正株価を見積もり、価格が下がるタイミングを待ちます。ただし、現時点で適正価格を大きく上回る銘柄にチャンスが回ってくることは稀なので、そのような銘柄は注目対象から一旦外します。

株価が下がる要因は、事前に予測できません。その銘柄個別事情で下がることもあるでしょうし、市場全体が下げて適正価格を下回ることもあるでしょう。その時に、下がった要因を分析し、企業の本質的な価値に大きな影響を与えないのであれば、その時が絶好の買い時です。

この方法で私が見ていたのが三菱UFJ(8306)ソフトバンク(9984)です。三菱UFJは、もともとマイナス金利の影響で割安な水準になっていましたが、ブレグジットの混乱によりさらに値を下げました。ブレグジット直後の株価が470円で、現在は575.5円です(+22.4%)。また、ソフトバンクはARMの買収が懸念され、直後に一時5,387円まで株価を下げましたが、現在は6,869円で推移しています(+27.5%)。※株価は2016年9月2日時点

【参考記事】

ブレグジットで銀行株はなぜ下がる

ソフトバンクの3.3兆円買収は「賭け」ではない

つばめ投資顧問では上記のようなチャンスを逃さないために、会員の皆様に推奨銘柄をお届けしたいと考えています。

※本記事は会員向けレポートの一部を抜粋したものです。

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執筆者

執筆者:栫井 駿介

栫井 駿介(かこい しゅんすけ)

つばめ投資顧問 代表
株式投資アドバイザー、証券アナリスト
ビジネス・ブレークスルー(株)「株式・資産形成実践講座」講師

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2 件のコメント

  • バフェットさんの思考を伺っていた中で彼が、業務内容の充実さが大切であることは1つのカギになると言えますがどのような根拠があればバフェットさんが興味を持っていただけるでしょうか。

    • 水澤様、コメントありがとうございます。
      私が観察する限り、バフェットは企業の持つ「経済の堀」を重視しています。この堀を越えるには橋を渡らなければならないため、企業は通行料を取ることができ、それが競争力の源泉となります。具体的には、世の中でメジャーになっている製品の特許やブランドが「経済の堀」に該当します。

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