大成功したことで有名な個人投資家に、片山晃氏がいます。彼は65万円から株式投資を始め、ピークでは25億円にまで増やしました。Kindle Unlimitedに著作『勝つ投資 負けない投資』がラインナップされていたので読んでみました。彼の投資戦略はバリュー株投資とは異なるものですが、その根底となる原則は同じです。
片山氏の投資手法とバリュー株投資
成功した個人投資家というと、多くの人はデイトレーダーを思い浮かべますが、片山氏は長期(あるいは中期)投資家です。長期投資家である以上、企業の業績など「ファンダメンタルズ」を重視することが必須となり、彼も例外ではありません。その点は、私が提唱するバリュー株投資と同様です。
しかし、バリュー株投資と大きく異なるのは、対象としているのが中小型株であることです。以前のレポートで、私は中小型株の情報が限られることから「価値」を見極めにくく、長期投資には向いていないことを指摘しました。値動きもとても大きく、大事な資産を託すには頼りないからです。
一方、片山氏はそれを逆手に取りました。情報が限られ値動きが大きいということは、成功した時に儲ける幅がより大きくなるということです。その戦略を実行するために彼が用いたのが「適時開示情報」です。
業績の上方修正があった場合、その理由を調べて、将来何が起こるか想像するのです。会社が小さいほど一つの商品がヒットした時の振れ幅は大きくなりますから、想像がうまく当たれば業績が伸び、あとから気づいた投資家が株を買って株価が上昇するというわけです。
この戦略は誰でもできるわけではありません。片山氏はすべての適時開示情報をチェックしていると言い、それは相当な時間と労力を必要とします。また、単に業績の上方修正を行った銘柄がいいというわけではなく、そこから想像力を働かせるのはやはり才能が必要だと思います。
中小型株は情報が限られるので、最後は自分の直感を信じてリスクを取らないといけないのです。「調べれば論理的に納得のいく答えが得られるかどうか」がバリュー株投資との大きな違いです。
バリュー株投資と共通しているのは「人の裏を行く」ことです。バリュー株投資では、多数派が悲観に陥っている時に、企業の実態と株価の乖離に儲けのチャンスを見出します。一方、片山氏は、誰も見ていない銘柄の、誰も気づかないような変化に着目することで儲けました。注目ポイントは違いますが、どちらも多数派とは違う行動をとっていることがわかるでしょう。
株式の4つのパターン
片山氏は著書の中で、株式のパターンを4種類に分類しています。
- 優等生が100点満点を取り続けるパターン
- 優等生が期待はずれの点数を取ってしまうパターン
- 落第生が期待以上の点数を取るパターン
- 落第生が赤点を取り続けるパターン
1のパターンの特徴は、誰が見てもいい銘柄です。そのため、PERは常に高い水準になっています。それでも期待に応えていい業績を出し続ければ、ほぼ一直線に上がり続ける特性があります。このパターンは調子がいいうちはいいですが、ひとたび成長性が鈍化したりすると、高いPERを支えきれなくなり、一気に暴落してしまうことがあります。
2のパターンは1がこけて株価が下落した後の銘柄です。多くの投資家からは手のひらを返されたように悪口を叩きます。しかし、それでも「元」優等生ですから、実力は確かにあるはずで、悪い点を取ってしまった要因が一時的なものであればまた1の軌道に戻ることができるのです。当社が狙うのはまさにこのパターンです。
3のパターンは片山氏が狙うパターンです。これまで見向きもされなかった劣等生が突然良い点を出しても、投資家は最初半信半疑です。しかし、その後もいい点を取り続けるようなら多くの投資家が群がってきます。そうなると、中小型株なので値動きも大きく、買いが買いを呼ぶ形で、ある時急騰するのです。(なお、4は儲ける可能性がないのでそもそも投資するべきではありません。)
バリュー株投資と片山氏の方法でどちらが正しいということはありません。片山氏の方法は大きなリターンも狙えますが、才能と労力が必要で、失敗した時のリスクも大きくなります。バリュー株投資は、爆発的な利益を狙うことは難しいですが、知識に基づいた論理的プロセスにより、より確実なリターンを求めるものです。
投資手法の正解は一つではありませんし、1番を目指すものでもありません。リターンの裏には相応のリスクがあります。重要なのは投資の目的に合った方法を取ることです。当社はあなたの大事な資産を守りながら、より確実なチャンスをうかがうことを目的としています。それをご理解いただければ、バリュー株投資をより有効に活用できるでしょう。
※本記事は会員向けレポートの一部を抜粋したものです。
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