ダウ平均が史上最高値となる2万ドルを突破しました。初めて1万ドルを突破した1999年から約18年で2倍になった計算です。一方で、同期間の日経平均株価の上昇率はダウ平均を大きく下回ります。しかし、それだけで米国株の方が日本株よりも優位性があると考えるのは早計です。
インフレ調整後では日本株は米国株を上回る
ダウ平均とは、米国の主要企業から選び抜かれた30銘柄からなる単純平均株価です。単純平均株価は構成銘柄1つ1つの影響が大きく、必ずしも市場全体の優位性を表すものではありません。純粋な市場の実力を見るのであれば、時価総額加重型平均であるS&P500やTOPIXを見るのが適当と言えるでしょう。
1998年末から2016年末までのS&P500(米国株)とTOPIX(日本株)を比較すると、S&P500は82%上昇しているのに対し、TOPIXは40%の上昇にとどまります。単純にこの数字だけ見れば、米国株に優位性があるように見えます。
しかし、ここで考えなければならないのは両国のインフレ率の違いです。インフレが大きい国では、株式の価値が上がらなくても株価は上昇します。通貨が違えば、インフレ率を調整する必要があります。
1998年からの18年間におけるアメリカのインフレ率は年平均2.2%です。一方、日本は−0.02%と、インフレどころかデフレになっています。1年だけ見れば大した違いではないように思われますが、18年経つと50%近く差が出ます。
例えば、1999年に米国で1ドルだったものは、インフレ率に従うと1.47ドルになっていますが、日本で100円ものはほぼ100円のままです。つまり、インフレ率の高い国では、インフレ率以上に株価が上昇しなければ、実質的に損が出てしまうのです。
指標 | S&P500 | TOPIX | ダウ平均 | 日経平均 |
1998年12月 | 1,229.23 | 1,086.99 | 9,181.43 | 13,842.17 |
2016年12月 | 2,238.83 | 1,518.61 | 19,762.60 | 19,114.37 |
上昇率 | 82.1% | 39.7% | 115.2% | 38.1% |
インフレ調整後 | 23.8% | 40.1% | 46.3% | 38.5% |
上の表にあるように、インフレ率調整後のS&P500は24%の上昇に止まる一方、TOPIXは40%の上昇です。インフレ調整後の日本株のパフォーマンスは米国株を上回っているのです。
ダウ平均が強いのは「厳選」かつ「入れ替え」
表を見る限り、ダウ平均はインフレ調整後でもS&P500、TOPIX、日経平均の全てを上回っています。それぞれを株のポートフォリオとして見れば、やはりダウ平均はこの中で最も優秀なポートフォリオと言えます。
ダウ平均はわずか30銘柄で構成され、日経平均の225銘柄、S&P500の500銘柄、TOPIXの約2000銘柄に対して圧倒的に少なくなっています。
30銘柄は米国の超一流企業であり、その構成は数年に一度見直しが行われます。1999年以降で見ても、30銘柄のうち13銘柄が入れ替わっています。
例えば、1999年にインテルやマイクロソフト、2013年にゴールドマン・サックス、2015年にアップルが組み入れ銘柄に採用されています。現在の構成銘柄で当初から採用されているのはGEのみで、そのGEですら出入りを繰り返しています。
つまり、ダウ平均の30銘柄は厳しいふるいにかけられた超優良銘柄ばかりなのです。そこから入れ替えが行われることにより、昔ながらの銘柄だけではなく、ITなどの最近勃興してきた企業も含んでいます。
計算する期間等により一概には言えない部分もありますが、ダウ平均が大きく株価を伸ばしたのは、多くの銘柄を機械的に組み入れるからではなく、銘柄を絞ることで「勝ち組企業」の成長を反映してきたことが理由の一つと言って差し支えないでしょう。
厳選・割安投資で最高のポートフォリオを目指す
この考え方は、個人投資家のポートフォリオにも応用できます。S&P500のようなに玉石混交の銘柄を購入していては大きなリターンを上げることは難しく、厳選銘柄を組み入れていれば、長期的にみて力強い成長力を有する可能性があります。
重要なのは、厳選銘柄のメンテナンスです。落ち目にある企業はポートフォリオから外し、将来に期待が持てる銘柄を購入することをいつも意識しなければなりません。そのために、投資家は社会の動きをチェックしなければならないのです。
ダウ平均の惜しい点は、割安銘柄をポートフォリオに組み入れにくいということです。時価総額などがある程度大きくならなければ採用されないため、安い時に買うのが難しいのです。それでも優良銘柄を組み入れるだけで高いリターンを出せるという事実には目を向けるべきでしょう。
個人投資家のポートフォリオでは、時価総額の制限はありません。そのため、理想のポートフォリオは厳選された優良銘柄を、価格が安い時に購入することです。この2つを遵守することで、より高いパフォーマンスをあげることができるでしょう。
まとめ
- インフレ調整後では、日本株のリターンは米国株を上回る。
- ダウ平均が強いのは、厳選銘柄で構成され、常に入れ替えが行われているから。
- 優良銘柄を割安な時に購入すれば、長期的に高いパフォーマンスが得られる。
※本記事は会員向けレポートの一部を抜粋したものです。
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