究極の厳選投資「1銘柄投資」はアリか?

世間では「分散投資」の重要性が語られますが、それは平均的な結果を生み出すだけです。株式投資や企業分析が好きな人なら、内容を熟知した少数の銘柄に投資したほうが、よほど効率よく資産を増やせます。

価値を熟知した銘柄に投資すること

分散投資のメカニズムは、1つの銘柄が下落しても、他の銘柄が上昇すればマイナス幅が縮小し、リスクが抑えられるということです。

投資する銘柄の数を増やせば増やすほど、リスクは小さくなるでしょう。株式市場はトータルでプラスになることが統計的に示されていますから、「最小限のリスクで平均的なリターンを得る」には優れていると言えます。

しかし、逆に言えば1つの銘柄が上昇しても、他の銘柄が下落してしまったら得られるリターンは減少してしまいます。銘柄を増やすほど、リスクは下がりますがリターンも平均的なものになってしまうのです。大きなリターンを上げるには、少数の銘柄に投資しなければなりません。

少数の銘柄に投資する場合、機械的にリスクを抑えることができない分、銘柄の選別には慎重を期さなければなりません。そのため、投資する会社について熟知し、その会社が持つ「本質的な価値」を知る必要があります。

本質的な価値は、企業の業績や過去のPER、将来の見通しなどからある程度導くことができます。ただし、単に数字を当てはめれば分かるというものでもなく、定性的な分析力や経験が非常に重要です。

こうして導かれた「本質的な価値」よりも割安な株式に投資を行い、株価が本質的な価値にまで上昇するのを待つのがバリュー株投資です。

ある銘柄が大幅に割安であることに自信を持てるなら、その1銘柄に集中して資金を投資すれば、闇雲に投資するよりも大きくリスクを抑えつつ、分散投資よりも大きなリターンを得られることができるでしょう。

また、株価は相場全体の状況や投資家の心理次第で本質的な価値とは関係なく、アップダウンを繰り返します。そのため、ある銘柄の本質的な価値に自信があるなら、価値より割安なときに買い、割高なときに売ることを繰り返すだけで、資産を大きく増やせるでしょう。

バフェットの言う「永久保有銘柄」にもこのような側面があります。「1銘柄投資」がアリかナシかと聞かれれば、私はアリと答えるでしょう

1銘柄ではなくとも、できる限り厳選投資を心がける

「究極的には1銘柄でも良い」と言いながら、私は複数の銘柄を推奨しています。それは、やはり1銘柄だけでは限界もあるからです。

その会社の経営者などのインサイダーであれば、会社の隅々まで把握しているため、会社の価値をより正確に見積もれるでしょう。しかし、残念ながら投資家はアウトサイダーであるため、入手できる情報は限られています。可能な限り調べた上で、最後は「エイヤ!」で決めるしかないのです。

インサイダーであっても予測できないリスクも存在します。すべての企業は何らかのコントロールできない外部要因に依存しているからです。例えば、昨今のニコンのように、一時期は隆盛を誇ったデジタルカメラが、一瞬でスマートフォンに取って代わられようとは、数年前は想像し得なかったでしょう。

さらに、株式市場は非常に気まぐれです。株価はいつ下がって、いつ上がるかわかりません。割安なのは間違いないのに、そのことに市場が気づくのに長い時間がかかることもあります。人生の時間は有限ですから、複数の銘柄に投資して可能性を増やすことも必要でしょう。

「すべてを知ることができないリスク」「知っていても予測できないリスク」「気まぐれな株式市場」を考えると、1銘柄だけに投資することは必ずしも万全な方法ではありません。カゴに入れた一つの卵を見守っても、その卵が孵らない可能性があるのです。

それでも、リターンを大きくするには、なるべく少数の銘柄に投資しなければならないという原則は変わりません。可能な限り少数の銘柄の中から、少しでも自信を持って推奨できる銘柄を、私はこれからも探し続けます。

※本記事は会員向けレポートの一部を抜粋したものです。

執筆者

執筆者:栫井 駿介

栫井 駿介(かこい しゅんすけ)

つばめ投資顧問 代表
株式投資アドバイザー、証券アナリスト
ビジネス・ブレークスルー(株)「株式・資産形成実践講座」講師

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