日銀によるマイナス金利の導入以降、銀行株が低迷を続けています。バリュー投資家的にはこういう時がチャンスです。銀行株が今買い時かどうか考えてみます。
国債利回りの低下が大きく影響
日銀がマイナス金利の導入を発表したのが1月29日でした。それ以降、銀行株は大幅に下落しています。
【株価変動】(1月29日終値→2月24日終値)
三菱UFJFG 609.4→478.6(▲21.5%)
三井住友FG 3980→3096(▲22.2%)
みずほFG 205.8→166.1(▲19.3%)
ゆうちょ銀 1472→1192(▲19.0%)
銀行はマイナス金利の影響をもろに受けるので、当然といえば当然かもしれません。しかし、いくら何でも下がりすぎな気もします。ここは改めてマイナス金利の銀行への影響を整理してみたいと思います。
日銀が導入したマイナス金利は、一義的には銀行が日銀に預ける当座預金の一部に適用されるものです。ただし、これは日銀当座預金の1割程度に過ぎないと言われ、直接的な影響は大きくありません。
しかし、マイナス金利の導入後、その他の金利への影響が大きくなっています。長期金利の代表的な指標である10年国債利回りも遂にマイナス圏に落ち込みました。国債利回りは様々な金利の基準になっているので、他の金利も釣られて低下します。
銀行のビジネスモデルは、単純に言うと貸出(運用)金利-預金金利の利ざやを稼ぐものです。預金金利は既に限りなくゼロに近い状態ですから、金利低下により貸出金利が低下し、利ざやが小さくなってしまうのです。そういう意味では低金利下ではやはり銀行経営は厳しいと言わざるを得ません。
配当利回りは大きく上昇
一方で、株価下落に伴い、配当利回りは大幅に上昇しています。銀行株はもともと配当利回り水準が高かったこともあり、他の業種も含めてここ数年ではあまり見なかった高い数字が並んでいます。
【配当利回り】(2015年度会社予想値、2月24日終値)
三菱UFJ 3.8%
三井住友F 4.8%
みずほFG 4.5%
ゆうちょ銀 4.2%
※ゆうちょ銀行は下期のみのため通年換算
配当は企業の成長に期待するよりもリターンの確度が高いため、裏付けの確かな配当利回りは一見の価値があります。これだけ高い配当利回りを見ると、バリュー投資家としては放ってはおけません。
銀行は、少なくとも現金はたくさん持っているので、配当の支払いに困るということはないでしょう。そういう意味で裏付けはしっかりしています。バブル後の不良債権処理も終わっているので、経営が大きく悪化する懸念もあまりありません。
配当のうまみの大きくなった銀行株の中から、優良銘柄を厳選して投資する戦略は大いに期待できます。
優良銀行株選定のポイント
マイナス金利下における優良銀行株は、国内金利に左右されないビジネスモデルを築いていることが重要です。そこで、私が考える重要ポイントを3つ挙げてみました。
- 役務取引収益の比率が高い
- 海外比率が高い
- その銀行がないと困る
1. 役務取引収益の比率が高い
上記で言及した通り、銀行のビジネスは貸出(運用)金利によって収益を上げます。しかし、それ以外にも、「役務取引収益」というものがあります。要は、様々な手数料をひっくるめたものです。手数料なので、金利に関係なく得ることができます。
役務取引収益の流行りは投資信託や生命保険の販売です。銀行の店舗に行くと、パンフレットが所狭しと並べられてるのを見ると思います。メガバンクであれば、証券会社をグループ内に持っていて、その手数料も役務取引収益となります。以下は連結の経常収益に占める役務取引等収益の比率です。
【役務取引等収益比率】(2014年度)
三菱UFJ 26.8%
三井住友F 23.2%
みずほFG 22.9%
ゆうちょ銀 5.7%
三菱UFJが最も高くなっていますが、メガバンク3行で大きな違いはありません。一方、ゆうちょ銀行はダントツで低く、収益のほとんどを資金運用に頼っていることが分かります。
2. 海外比率が高い
マイナス金利は日本国内の話です。米国などではむしろ金利は上昇の方向にあります。海外での収益比率が高ければ、日本のマイナス金利の影響を緩和できると考えられます。以下は、資金運用収益に占める海外の割合です。
【資金運用収益海外比率】(2014年度)
三菱UFJ 57.4%
三井住友F 37.4%
みずほFG 40.5%
ゆうちょ銀 (海外支店なし)
三菱UFJが圧倒的に高いことが分かります。三菱UFJは米国や東南アジアなど海外銀行の買収を積極的に行っており、これからも海外でのビジネスを伸ばしていくでしょう。他方、ゆうちょ銀行は海外支店がなく、民間企業としてはまだまだこれからという感じです。
3. その銀行がないと困る
銀行が低金利に苦しむと、やがて再編や淘汰が進むと考えられます。しかし、その中でも利用者にとってないと困るというところであれば、困難な状況を生き延びることができると考えられます。言い方を換えると差別化です。バフェットの言う「経済の堀」にも通じるものがあります。
これはに定量的に示すことは難しいです。しかし、上記の4行で最も特色があるのがゆうちょ銀行でしょう。ゆうちょ銀行は国内の全市区町村に存在し、地方に住んでいる人にとってはなくてはならない金融機関です。ここがなくなると困る人は大勢いるでしょう。
また、上記には挙がっていませんが、静岡を本店とするスルガ銀行も独特のビジネスモデルを築いています。興味がある方は一度IRページを見てみるといいと思います。
最後は指標とのにらめっこ
ここに挙げた4行のうちでは、三菱UFJが最も優秀な数字を出しています。さすが業界最大手です。一方で、配当利回りは最も低くなっており、他の銀行よりも割高です。それだけ投資家からの評価が高いとも言えます。
このように、割安株を探そうとしたら、最後は指標とのにらめっことなります。なかなか完璧な株は見つかるものではありません。いろいろ調べてみて、最終的に自分が納得できる説明ができれば、その時は買い時だと言うことができるでしょう。
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