上昇相場でバリュー株投資家はいかに振る舞うべきか?

日本市場も米国市場も、下落するのを忘れたかのように上昇を続けています。10月いっぱい続いた上昇相場を振り返り、どのような銘柄が上がっているのか、上昇相場を前にバリュー株投資家はどうすべきだったか、そしてこれからどうすべきかを改めて考えたいと思います。

どのような銘柄が上がっているのか?

この1ヶ月で、日経平均株価は約10%上昇しました。相場を牽引しているのは大型株であり、機械・電気機器などの製造業及び素材系の会社の上昇が目立ちます。特に、直近の好業績とも相まって、半導体や液晶に関わる設備投資関連の銘柄が買われました。

大きく買い越しているのが外国人投資家です。5週連続の買い越しで、買い越し額は2.4兆円にのぼります。この間、国内投資家は一貫して売り越しています。

外国人投資家は、基本的に順張りの傾向があります。上昇相場になったと見れば、乗り遅れまいと一気に買いにやってきます。外国人が買う銘柄は、日本を代表する大型株がほとんどです。好調な景気を意識して、「景気敏感株」でより大きな利益をあげようと考えているのです。

その投資行動は、素早いように見えて実はかなり保守的です。新たな銘柄を発掘する訳ではなく、これまでも優良とされた「低リスク」の銘柄にあたりをつけて買っています。優良銘柄なら、万が一のことがあっても大きくは下がらないだろうという算段です。

私がかつて有料会員向けのレポートで優良銘柄として取り上げた銘柄もこの相場で大きく上昇しています。例えば、今年の1月21日に取り上げたコマツ(6301)はこの1ヶ月で16%上昇し、取り上げてからの上昇率は37%に達しています。

それではなぜ1月に推奨銘柄にしなかったかというと、その時点でも決して割安ではないと考えたからです。コマツは申し分ない優良銘柄ですが、景気の影響は大きく受けます。景気の波を考えると、大きく下落する可能性も十分にありました。

実際には逆のシナリオとなり、株価は大きく上昇しました。だからと言って後悔しているわけではありません。景気を左右する要因は際限がなく、その先行きは決して正確に予想できるものではありません。景気の先行きが正確に分かるのなら、今頃インデックス投資だけでも億万長者になっているでしょう。

景気敏感株を避けたのは正しかったか?

景気が加熱を続ける中で、私は景気敏感株を徹底して避けてきました。しかし、結果的にはこの上昇相場で大きく株価を伸ばしています。

景気の波を読みきれなかったのは、純粋に実力不足もあるかもしれません。まだ観察すべきことはいくらでもあったと反省する点はあります。しかし、いくら多くの指標を分析しても、景気を完全に読むのはやはり難しいと考えます。

株価の動きばかりを読んで売り買いをする「タイミング投資」あるいは「投機」は、バリュー株投資家にとってはご法度です。少しの間はうまくいくかもしれませんが、株価が実力以上に上昇すれば、いつ下落するかはチキンレースの様相を呈します。

今買いを入れている外国人投資家も、悪い兆候があれば我先にと逃げ出すでしょう。外国人投資家とはそういうものです。専業投資家でもない個人投資家にとって、そのようなチキンレースに参加することは非常に危険な行為と言えます。

「いい銘柄を安く買う」を徹底する

もちろん、投資家として上昇相場は歓迎すべきことであり、バリュー株投資家にとっても、もちろん味方です。しかし、その流れに乗るには時間をかけて準備する必要があります。

コマツを例に取ると、1月の段階ではすでに株価は高い水準にあったため、買うことはできませんでした。しかし、当時が景気の底にあり、株価が大幅に下がっていたとしたら買っていたでしょう。コマツのような優良銘柄であれば、一時的に業績が悪化したとしても自律反発により業績の回復が見込めるからです。

買うべきタイミングは、今のような上昇局面ではなく、リーマン・ショックのように株価が一斉に下落した場面です。もし今後そのようなチャンスが訪れれば、景気敏感銘柄こそ積極的に買うでしょう。今はただ、そのようなタイミングを待つしかありません

バフェットが優良銘柄を買うタイミングも、いつでもいい訳ではなく安くなった時に買っています。お気に入りの銘柄の一つであるアメリカン・エキスプレスを買ったのも、1960年代に不祥事で大きく値下がりした時です。その後も現在まで持ち続けています。

バフェットの投資から学べる教訓は、「優良銘柄であってもなるべく安く買わなければならない」ということです。これは、バリュー株投資の基礎である「安全域」(価値と価格の差)に基づきます。安全域は大きければ大きいほどいいのです。

「いい銘柄を安く買う」のが投資の基本中の基本ですが、それを守れる投資家が少ないのも事実です。多くの人が間違うのは、目の前の利益に負けてしまう人間心理が深く影響しているからでしょう。だからこそ、この単純な命題を頑なに守るだけでも、最終的に大きな成果をあげることができるのです。

安く買った優良銘柄を持ち続ける

バフェットのすごいところは、半世紀にもわたって同じ銘柄を持ち続けられる点です。普通の投資家なら、ある程度上がった時点で売ってしまうでしょう。

しかし、本当の優良銘柄なら、景気が良くなれば業績はさらに上向来ます。そのような銘柄を売らずに持ち続ければ、今回のような上昇相場でしっかりと恩恵を受けることができるのです。

もちろん、それだけ長く持ち続けられる優良銘柄は、そう簡単に見つけられるものではありません。長期投資は、そのような銘柄を見つけるための旅であるとも言えるでしょう。

そのバフェットが経営するバークシャー・ハサウェイも、目下過去最高の現金を保有しています。それだけ、安く買える優良銘柄が少ないことの現れでしょう。持ち続けるのも忍耐ですが、買わずに安くなるまでひたすら待つのも、長期投資家に必要な忍耐と言えそうです。

※本記事は会員向けレポートの一部を抜粋したものです。

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執筆者

執筆者:栫井 駿介

栫井 駿介(かこい しゅんすけ)

つばめ投資顧問 代表
株式投資アドバイザー、証券アナリスト
ビジネス・ブレークスルー(株)「株式・資産形成実践講座」講師

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2 件のコメント

  • こにちわ。
    自分は現在69歳80歳を余命とするとあと10年ぐらいです
    バリュー投資は10年以上の期間を必要ですですが人気の投稿を読んできて自分には
    もう時間がありません。
    入会してもアドバイスを生かせることをできるのでしょうか、利益を出すことを難しいと考えます、どうなんでしょうか。

    • バリュー株投資は長期投資を前提としていますが、さほど時間がかからずに上昇するケースも少なくありません。推奨から半年で50%近く上昇したケースもあります。
      また、現代では80歳と言わず、100歳を超えて長生きされる方も少なくありません。そこまで考慮して資産を守り・増やすことは意義のあることだと考えます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

  • 伊藤敏夫 へ返信するコメントをキャンセル

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