【投資のポイント】
- ソディック(6143)は「放電加工機」などの工作機械メーカー。直近は「中国特需」で業績伸張。
- 工作機械メーカーは好況時と不況時の落差が大きい。過去10年平均EPSに対するPERは約15倍と必ずしも割安ではなく、成長事業が育っているわけでもない。
- 不況時には株価が下がってチャンスとなる可能性があるが、いずれにしても競合に負けない製品力と将来への投資は不可欠。長期的な展望のある会社に投資したい。
好調の要因は「中国特需」
ソディック(6143)は「放電加工機」などの工作機械メーカーで、同製品では世界トップシェアを誇るということです。
業績は、ここ最近確かに調子がいいようです。予想値ではありますが、今期の業績は売上高・営業利益ともに過去最高水準となる見通しです。それに対し、PERは5倍を切り、かなり割安な水準に見えます。
しかし、業績の中身を見ると、手放しで割安と判断して良いとは限らないことが分かります。
好調の要因は、中国での需要が急増したことです。この会社に限らず、工作機械メーカーは中国の旺盛な需要に支えられて、ここ数年大きく業績を伸ばしています。ソディックもその波に乗っていることが分かります。
ソディックが扱う放電加工機は、機械製品などを作る前の「金型」を成形する時に活躍します。金型は通常の金属よりも硬い素材でできているため、それを加工するには特殊な技術が必要なのです。その分野において、世界初となる「NC彫り放電加工機用電源」を開発し、その強みが今でも活かされているようです。
かつて開発した技術を大事に育て、製造業では不可欠な存在になっているのは、典型的な日本製造業の特徴です。作る物がテレビからスマートフォンに変わっても、技術は変わらず活かされ、好況時には業績が大きく伸びる力を持っていることが分かります。
しかし、過去の業績を見ると、不況時には売上高が大きく減り、たびたび赤字を計上していることが分かります。設備投資は好況時には大きく盛り上がりますが、不況時には先送りにされてしまうため、需要が急激に減少するのです。これは、工作機械メーカーの宿命とも言えます。
そう考えると「中国特需」で盛り上がる現在の業績は必ずしもあてにならないことが分かるでしょう。過去10年平均EPSで見たPERは約15倍と計算されます。
成長事業が育っているとも言えない
ただし、企業はいつまでも同じことばかりしているわけではありません。新しい事業が育ってきているなら、その分野が大きく伸びることで、景気の波を超えた成長を遂げる可能性もあります。
ソディックは、放電加工機以外にも、金属3Dプリンタや景気に左右されにくい食品機械を強化しているようです。
しかし、これらも必ずしも順調とは言い切れません。金属3Dプリンタの売上は現時点でわずか8億円ということであり、成長の起爆剤とするにはあまりに遠すぎます。食品機械も、特別な技術が必要ということでなければ成長ドライバーとなることは難しいでしょう。
目の前の数字を追うのではなく、長期的な展望を持つこと
今回は数値によるスクリーニングをかけましたが、目の前の数字だけ見ていたのでは危険です。事業の特性を認識し、本当の意味で「あるべき価値」を見出すことが本来アナリストのするべき仕事だと確信しています。
ソディックに関しては、昔取った杵柄で現在も生き残っていますが、それがいつまで続くかわかりません。いまや世界の製造業の中心は中国に移っているため、地場の企業が追いついてくる可能性も否定出来ないでしょう。
足元は景気が盛り上がり、実力以上の業績が出てしまっているため、容易に手を出せる状況ではありません。一方で景気が悪くなった時は逆に「実力以下」の業績となってしまうことから、本質的な価値よりも大幅に割安な状況になる可能性もあります。
そのときには、まず業績の悪化で経営が立ち行かなくなる可能性がないかチェックし、さらに需要が盛り上がってきた時に他社に負けない製品を作る力を持っていることを確信できれば、絶好のチャンスとなるでしょう。
多くの会社では、調子がいい時に将来への投資を怠り、その後の景気の悪化でジリ貧になってしまいます。逆に調子の悪い時に地力を蓄え、調子がいい時も将来への投資を怠らない会社こそが本当にいい会社と言えます。そんな企業をこれからも探し続けたいと思います。
※本記事は2018年4月7日付のレポートを抜粋・編集したものです。
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