事故で下落のボーイングは「買い」か?その強みを分析

エチオピア航空機の墜落事故で、機体を製造したボーイング(BA)の株価が直近のピークから約15%下落しています。相場格言に「事故は買い、事件は売り」とありますが、ボーイングは今「買い」なのでしょうか?

拡大する市場で2社寡占の恩恵は大きい

ボーイングと言えば、飛行機に少しでも興味があれば知らない人はいないでしょう。世界最大の航空機メーカーであり、仏エアバスとシェアを二分します。

民間旅客機はボーイングとエアバスの2社で寡占状態です。世界中の航空会社は、2社のいずれかから航空機を購入します。三菱重工がMRJでの参入を目指していますが、苦戦していることからも新規参入が容易でないことがわかります。

ボーイングの経営状況は極めて良好です。一時的な落ち込みを除けば業績は伸び続けていますし、利益率の水準も高まっています。直近の営業利益率は10%を超える高水準です。

株価も順調で、特に最近の伸びは目覚ましいものがあります。

これだけ業績が良好なのは、航空機市場が世界的に拡大を続けているからです。9.11や新型インフルエンザなどによる一時的な落ち込みはありますが、それでもグローバル化や国土の広い新興国(中国やインド)の発展により、航空機の需要は伸び続けます。

【出典】成田国際空港

拡大を続ける市場において、2社寡占という状況はかなり美味しいと言えます。黙っていても需要は増え続けますから、適切な商品を適切な価格で売り続ければ、市場の拡大とともに利益=会社の価値も増大するわけです。

巨額の開発・製造費用がかかり、納期が長いことがリスクではありますが、それらもこれまでの経営の蓄積で軽減される方向でしょう。

したがって、長期的に持っていれば利益の出る確率が高い銘柄だと言えます。私としても、ぜひポートフォリオに加えたい銘柄です。

いつ買えば良いか?リーマン後に買っていれば10倍に

それでは、「今」が買うべきタイミングなのでしょうか?

事故は悲惨なものであり、同型機の運行停止もネガティブへはありますが、ボーイングへの受注に影響が出る可能性は低いでしょう。

ここで寡占のメリットが働きます。ボーイングでなければエアバスを選択するしかありませんが、エアバスでも同様の問題が起こらないとも限りません。

この2社ほどの実績を積んだ会社はありませんから、新規の会社に移るとしたら、その方が心配です。

株価も下げ止まり、暴落とはいきませんでした。市場は冷静に判断しているようです。

そもそも、直近の株価は少し高すぎた感があります。業績は好調ですが、これには少なからず好景気の影響があると思います。

安定した業績を出すとは言え、やはり景気の影響は免れません。現在の業績を基準にすると痛い目を見るでしょう。

直近の業績に基づくPERが21倍です。保守的に見積もって利益を7掛けにして考えると、PERは30倍となります。需要予測どおりだとすれば、売上高成長率は年間5%程度ですから、割高感があることは否めません。

買うとしたら、以下のようなタイミングでしょう。

  • 相場全体の下落時
  • 景気悪化に伴う業績悪化時
  • 9.11のように航空セクターに対して悲観的な雰囲気が流れている時

上記のようなタイミングでは、これだけいい会社でも株価は半値にまで下がります。しかし、その後は順調に株価を伸ばしてきました。リーマン・ショック後に買っていれば10倍になったのです。

下がったときは買いにくいものですが、長期的な視野を持ち、保有し続ける覚悟があれば自信を持って買うことができるでしょう

普段からいい株に目をつけておき、しかしすぐに動くわけではなく、虎視眈々とチャンスをうかがうことが、リスクを抑え着実なリターンをあげる行動と言えるでしょう。

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執筆者

執筆者:栫井 駿介

栫井 駿介(かこい しゅんすけ)

つばめ投資顧問 代表
株式投資アドバイザー、証券アナリスト
ビジネス・ブレークスルー(株)「株式・資産形成実践講座」講師

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