6月25日新規上場!北里コーポレーションは買い?

今回は、2025年6月25日に東証プライム市場へ新規上場する「北里コーポレーション」について、詳しく解説していきます。最近では珍しい、東証プライムへの直接上場案件であり、その注目度は非常に高い銘柄です。

北里コーポレーション IPO概要:初値に注目!

まず、北里コーポレーションのIPO詳細から見ていきましょう。

  • 上場日:2025年6月25日
  • 最大売り出し株数:約1600万株
  • 1株あたりの想定売り出し価格:1340円(すでに決定済み)
  • 想定時価総額:約536億円

公開価格から500億円を超える時価総額がつくのは、新規上場としてはかなり大きい規模と言えるでしょう。プライム市場への直接上場は条件が厳しいため、それだけ良い会社であることがうかがえます。

北里コーポレーションの歴史と事業のルーツ

北里コーポレーションは、創業当初から一貫して不妊治療に特化している企業です。 「北里」という社名を聞くと、北里柴三郎や北里病院を連想するかもしれませんが、実はそちらとは関係がないようです。

社名の由来は、会社が北側に富士山を望み、「私たちは里である」という、自然への敬意とスタート地点を意味する言葉から来ているとされています。

同社の始まりは、井上樹社長が2005年に不妊の研究開発を行う目的で「北里バイオファルマ」を創業したことにあります。その後、持ち株会社の設立や他の研究開発会社を立ち上げ、現在主力製品の一つである卵巣組織の凍結保存キットなどを手掛けてきました。

井上社長のキャリアは、もともと実の父親が経営していた「北里サプライ」に入社したことから始まっており、その当時から医療分野に関わっていました。実質的にはその流れを受け継いでおり、形を変えながらも創業当初から医療機器やキット製品を提供してきた会社と言えるでしょう。

高難易度不妊治療に特化!主力製品とその強み

北里コーポレーションは、一般的な不妊治療の中でも特に難易度が高いとされる体外受精や胚移植などの領域に焦点を当てています。

これらの治療で使われる製品が、同社の主要な売上を構成しています。

主な製品としては、以下の3つが挙げられます。

  • 試薬:凍結保存時などに用いる。
  • 凍結保存製品:卵子や精子、精巣組織の凍結保存時に用いる容器。
  • 医療器具:卵子・精子などの採取、受精、移植に用いる器具。

これらの製品は、売上構成においてもバランスが良く、特定の製品に依存しているわけではありません。高度な不妊治療において、こうした精子や卵子の採取・移植には特殊な技術力が必要とされます。

驚異的な利益率の秘密:なぜ北里コーポレーションは稼げるのか?

同社の業績推移を見ると、2010年から2025年にかけて売上高は順調に伸びています。

特に2022年から2023年にかけては、不妊治療が保険適用になったという大きなトピックがあり、その影響を受けて売上が大きく伸びました。利益も順調に伸ばしており、2024年から2025年にかけては若干の減益が見られますが、長期的には成長しています。

そして、特筆すべきはその利益率です。売上高に占める経常利益の割合は、おおむね50%から60%で推移しており、これは一般的な企業では考えられないほどの高水準です。

この高い利益率の背景には、不妊治療における高度な技術力と、高い参入障壁があると考えられます

有価証券報告書によると、北里コーポレーションの製品は各国の論文や学会発表、技術資料で多く引用されており、その技術的な信頼性が確立されていることが伺えます。

市場の特性:ニッチトップ企業としての強み

日本の不妊治療市場規模推移を見ると、市場全体としては不妊治療剤(医薬品)が大きなシェアを占めています。

しかし、北里コーポレーションは不妊治療剤ではなく、検査薬や試薬類、カテーテルなどの医療器具を製造しています。これらの製品が占める市場は、全体のグラフで見ると小さい部分であることがわかります。

つまり、北里コーポレーションは、市場全体としては小さいものの、その特定のニッチな市場において、技術力を武器に高いシェアを持っている、いわゆる「ニッチトップ」の企業であると考えられます。
市場が小さいため爆発的な成長は期待できないかもしれませんが、その分、競合が参入しにくく、安定的に高い利益を生み出せる立場にあるのです。

グローバル展開と今後の成長戦略

北里コーポレーションの売上高を見ると、海外売上比率は65%を超えており、日本だけでなくグローバルに事業を展開していることが分かります。

特に欧州での売上が高く、これはスペインの会社が最大の取引先となっていることからも裏付けられます。海外でも受け入れられているということは、やはり高い技術力がある証拠と言えるでしょう。

同社は80社の代理店を通じて世界各地で製品を販売しており、近年は特に中国とアメリカ市場の拡大を目指しています。しかし、現在の地域別売上高を見ると、アジア(日本を除く)や北米の割合は比較的小さいです。これは、これらの市場では大手ライフサイエンス企業や製薬会社との競争に直面している可能性が考えられます。

今後の焦点は、代理店の力も借りながら、同社の高い技術力を生かして中国やアメリカ市場をいかに開拓できるか、という点にあります。

IPOの目的:資金調達よりも「現金化」と「信頼性向上」

今回のIPOは、一般的な資金調達を目的としたものではなく、既存株主による保有資産の現金化という側面が強いのが特徴です。新規の公募(新株発行)がない点も非常に特徴的です。

有価証券報告書には、上場目的として以下の点が挙げられています。

  • 知名度・信用力の向上
  • 海外における信頼性強化
  • 人材確保

井上社長が実質的に90%以上の株式を保有している状況であるため、相続対策や、事業を組織としてより発展させるための人材獲得といった目的も考えられます。

同社の高い利益率を考えると、運転資金などに困ることは少ないでしょう。また、IPOにあたって「お化粧」をするような様子が見られない点も、非常にクリーンな印象を与えます。利益率が高いからこそ、会計を無理に綺麗に見せる必要もないのかもしれません。

今後の成長性と株価水準

不妊治療市場は、日本だけでなく世界的にも拡大傾向にあるため、北里コーポレーションは市場の成長に乗って伸びていく可能性があります。特に、現在比較的弱いと見られる中国や北米市場の開拓に成功すれば、さらなる成長も期待できます。現状のニッチトップとしての地位を維持するだけでも、安定した高い利益を出し続けることは可能でしょう。

注目の株価水準ですが、想定売り出し価格1340円に対するPERは、おおよそ15倍程度と見られています。これは、非常に高い利益率を誇る安定企業であることを考慮すると、決して高い水準ではなく、むしろ割安に感じられるかもしれません。

初値がどのように形成され、その後株価がどう推移するかはまだ分かりませんが、もしあまり人気化しないのであれば、長期的に追ってみる価値がある企業だと言えるでしょう。同社はガツガツした成長戦略を追求するタイプではないかもしれませんが、企業としての「筋」は非常に良いと感じられます。

まとめ

北里コーポレーションは、不妊治療という専門性の高いニッチ市場で、驚異的な利益率と高い技術力を持つ非常に魅力的な企業です。東証プライムへの直接上場も、その実力を物語っています。
今回のIPOは資金調達よりも既存株主の現金化や、企業としての信頼性・知名度向上、人材確保が主な目的とされており、安定した経営基盤が伺えます。
今後、中国や北米市場での展開が成功すればさらなる成長も期待できますが、現状のビジネスモデルでも安定的に高収益を上げていけるでしょう。IPO後の株価の動向に注目し、長期的な視点で検討する価値のある一社と言えそうです。

執筆者

執筆者:佐々木 悠

佐々木 悠(ささき はるか)

つばめ投資顧問 アナリスト 1級ファイナンシャル・プランニング技能士
東北学院高校、東京理科大学経営学部卒業。
協同組織金融機関へ入社後、1級ファイナンシャル・プランニング技能士を取得。
銀行勤務時は投資信託を用いた資産形成提案や多重債務者への債務整理業務に従事。
2022年につばめ投資顧問へ入社。

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