【GENDA】高値から40%下落!今は買い時?

今回は、ゲームセンター運営で知られるGENDA(ジェンダ)について、その株価下落と業績悪化の背景、そして今後の未来について深掘りしていきたいと思います。上場後、順調に株価を伸ばしてきたGENDAですが、直近の決算発表以降、株価が軟調に推移しています。その要因を分かりやすく解説し、会社の未来を考察していきます。

GENDAの株価と業績の現状

まず、足元の状況を確認しましょう。

出典:Google

GENDAの株価は、今年の初めには1,500円を超える水準でしたが、現在は859円まで下落しています。上昇と下落を繰り返しながらも、全体としては大きく下落しているのが現状です。

6月11日に発表された第1四半期決算では、売上高は前年比+38.8%と大きく増加したものの、営業利益は-32.4%、最終利益に至っては-81.7%と大幅な減益となりました。純利益はほとんど残っていない状況です。売上が伸びているにも関わらず利益が大幅に減少している点が注目されます。

業績悪化の主要因:M&A関連費用とのれん償却

この大幅な減益の主な要因は、M&Aにかかる一時費用と、今期から本格化したのれん償却にあります。GENDAはM&Aを積極的に行う会社であり、特に前期に買収したカラオケBanBanの「のれん」償却が大きく響いています。

「のれん」とは?
企業を買収する際、買収金額がその企業の純資産を上回る場合に生じる差額を「のれん」と呼びます。これは、ブランド力や技術力、顧客基盤といった目に見えない無形資産の価値とされています。日本ではこの「のれん」を、通常20年で費用として計上(償却)していく会計基準が一般的です。
例えば、100億円で会社を買収し、その会社の純資産が30億円だった場合、差額の70億円が「のれん」となります。これを20年で償却すると、毎年3.5億円が費用として計上され、利益を圧迫することになります。つまり、純資産以上の金額で買収し、のれんが大きくなればなるほど、毎年の費用負担も大きくなるのです。

カラオケBanBanの買収では、のれんの額がおそらく200億から300億円程度と推測されており、これにより毎年10億から20億円程度の償却費用が発生している計算になります。
これは、前年の通期営業利益が約80億円弱だったことを考えると、営業利益の約1/4程度がのれん償却コストとして計上されていることになります。

今回の第1四半期の決算には、のれん償却に加え、M&Aに伴う証券会社への手数料なども大きく反映されています。

株価下落のその他の要因

決算発表前から株価が下落傾向にあったことには、他にも複数のネガティブな要因が影響しています。

・公募増資(PO)の連続実施
GENDAは昨年と今年、立て続けに公募増資を行っています。公募増資とは、新たに株式を発行して資金を調達する方法ですが、これにより発行済み株式数が増え、1株あたりの価値が希薄化するため、投資家からは通常ネガティブに捉えられます。

昨年は1株あたりの価値が約7%希薄化し、今年は11%弱の希薄化となっています。
M&Aのための資金調達が目的とされていますが、短期間での連続実施は、手元資金の不足を示唆しているとも考えられます。

・申前社長の株式売却と退任
もう一つの大きな要因は、前社長の申さんが保有株式の割合を大幅に減らしたことと、社長を退任したことです。申さんは、元ゴールドマン・サックス出身で、メディアにも頻繁に登場する華やかな女性社長として知られていました。彼女自身がGENDAの「広告塔」のような役割を担い、特に個人投資家の注目を集めていました。
申さんの社長退任は今年の4月18日で、その後、共同創業者の片岡さんが現社長に就任しています。彼女が社長を退任した理由としては、今後の大規模M&Aに向けた体制強化が挙げられていますが、広告塔としての役割が大きかった彼女の退任は、個人投資家にとってはネガティブなインパクトを与えた可能性があります。
GENDAは個人投資家の保有比率が約65%と非常に高く、このようなニュースが株価に与える影響は大きいと考えられます。

GENDAの事業内容と成長戦略

GENDAのメイン事業は、ゲームセンターの運営(GiGO)です。GiGOは元々セガが運営していたゲームセンター事業をGENDAが買収し、ブランド名を変更したものです。

ゲームセンター事業の復活

かつては衰退産業と見なされていたゲームセンターですが、日本のIP(アニメや漫画などのコンテンツ)が世界中でヒットし、訪日外国人観光客が増えたことで、UFOキャッチャーが人気を博し、復活を遂げています。UFOキャッチャーは、商品の選定やゲーム性の工夫によって収益化が可能です。

M&Aを軸とした成長戦略

GENDAは、2018年に現在の社長である片岡さんと前社長の申さんによって立ち上げられました。片岡さんは、元々イオンファンタジー(大手ゲームセンター運営会社)の社長を務めており、ゲームセンター運営のノウハウを豊富に持っていました。プライベートエクイティファンドからの出資を受け、最初はアミューズメントマシンのレンタル事業からスタート。その後、2020年にはセガエンタテインメント(旧セガエンタープライズ)のゲームセンター事業を買収し、GiGOとして運営を開始しました。この買収はコロナ禍での実施であり、比較的安価で買収できたのではないかと思われます。

GENDAは、GiGO事業以外にも、地方の小規模なゲームセンターや、景品を企画・製造する会社などを買収し、垂直統合を進めています。これにより、店舗数が増えるほど収益性が向上する体制を築いています。

カラオケBanBan買収の狙い

カラオケBanBanの買収は、カラオケ事業とゲームセンター事業を隣接させることで、集客力を高め、相乗効果を生み出すことを狙ったものです。
カラオケボックスは稼働率が高まるほど利益が上がるビジネスモデルであり、ゲームセンターとの連携で回転率を上げることを目指しています。

M&A戦略に潜むリスク

GENDAのM&Aを軸とした成長戦略には、いくつかの懸念点があります。

・プライベートエクイティの影響
GENDAの設立にはプライベートエクイティファンドが関わっており、現在もその持ち分は約30%強と高い比率を占めています。プライベートエクイティは、企業の買収と売却を通じて利益を得ることを目的としており、M&Aによって短期間で業績(特にPL上の利益)を伸ばすことを重視する傾向があります。これは、多額の借入れ(レバレッジドバイアウト)を伴うことが多く、キャッシュフローは悪化し、企業のリスクを高める側面があります。

・M&A案件の高騰と「のれん」のリスク
コロナ禍では安く優良なゲームセンターを買収できましたが、現在はゲームセンター事業が好調であるため、今後も「美味しい」買収案件が残っているかは不透明です。高値での買収は、結果的にのれんが大きくなり、毎年の償却費が利益を圧迫することにつながります。

・事業統合(PMI)の難しさ
M&Aで企業を買収した後、システムや文化、人材を統合していくことは非常に難しい作業です。買収した企業のシステムを導入することはできても、そこにいる人々をうまくまとめ上げるには、時間と労力、そして確固たるノウハウが必要です。過去にはM&Aで大きく成長したものの、その後統制が難しくなった企業(エムスリーなど)の事例も存在します。M&Aを成功させるためには、安く買収することや、買収後の事業統合(PMI)に徹底的に力を入れることが重要とされています。

・カラオケ事業でのシナジーの不透明性
片岡社長はゲームセンター運営の豊富なノウハウを持っていますが、カラオケ事業でのノウハウやシナジー創出については、まだ未知数な部分があります。カラオケ業界は過去20年間、客数や客単価を伸ばすのが難しい業界でした。
一方で、米国におけるゲームセンター事業の買収は、日本のIPと運営ノウハウの導入により、買収後に売上が200%(3倍)に増加するなど、成功事例も出ています。これは、日本のゲームセンター運営ノウハウやIPが海外で通用する可能性を示唆しています。

結論と今後の展望

GENDAは、積極的なM&A戦略によって成長を遂げてきましたが、直近の決算ではその代償ともいえるコストが表面化しました。特に、のれん償却費の増加や、公募増資、前社長の退任といったネガティブ要因が重なり、株価は大きく下落しています。

今後も、プライベートエクイティの圧力もあり、M&Aを続けると考えられますが、それによってリスクがさらに高まるかもしれません。M&Aに依存した成長には限界があるという見方も存在します。

GENDAが、これまで培ってきたゲームセンター運営のノウハウを活かし、どのようにしてM&A後の企業を統合し、持続的な利益成長を実現していくのかが、今後の大きな焦点となるでしょう。
特に、カラオケ事業を含め、新たな買収事業でのシナジー創出と、それに伴うコストに見合う成果を出せるかどうかに注目が集まります。

執筆者

執筆者:元村 浩之

元村 浩之(もとむら ひろゆき)

つばめ投資顧問 アナリスト
県立宗像高校、長崎大学工学部卒業。 大手スポーツ小売企業入社後、店舗運営業務に従事する傍ら、ビジネスブレークスルー(BBT)大学・大学院にて企業分析スキルを習得。
2022年につばめ投資顧問に入社。 長期投資を通じて顧客の幸せに資するべく、経済動向、個別銘柄分析、運営サポート業務を行っている。

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