2月8日に衆議院議員の解散総選挙が行われますが、そこで多くの個人投資家が気にかけているのが、高市政権が掲げる政権公約がどのように株式市場に跳ね返ってくるのかという点でしょう。
今回は、高市政権の政策を多角的に振り返り、どのような影響が出るのかを私の視点で詳しく解説していきます。
政治の動向は、時として特定の業界に強烈な追い風を吹かせますが、一方で「期待先行」で終わるものも少なくありません。その選別眼を養うためのヒントをお示ししたいと思います。
目次
生活者最大の関心事「消費税減税」の真相:なぜ市場は冷ややかなのか
まず、生活者の一人として最も気になるのは消費税の減税ではないでしょうか。
高市政権の公約では、飲食料品を2年間に限り消費税の対象としないことについて、国民会議において実現に向けた検討を加速するとしています。
しかし、厳しい見方をするならば、この「国民会議において検討を加速」という言い回しは、政治の世界では事実上「やらない」と言っているに等しい側面があります。
実際に株式市場の反応を見てみましょう。
このニュースが出た際、関連が深いとされるイオンの株価は一瞬ピクッと反応して上がりましたが、その後はズルズルと下がってしまいました。
セブン&アイ・ホールディングスや、ドン・キホーテを運営するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングスも、似たような「上がって下がる」という曲線を描いています。
これは市場が「実現性は低い」と見透かしている証拠です。
仮に食料品の消費税が減税されたとしても、企業の業績が劇的に上がるという話にはなりにくいと考えられます。
なぜなら、食料品は胃袋の大きさが決まっており、備蓄も難しいため、安くなったからといって消費量が倍増するわけではないからです。
あくまで景気の悪化を食い止める程度の効果に留まるというのが現実的な見方です。
「責任ある積極財政」の光と影:経済成長とインフレのジレンマ
高市政権の目玉政策として掲げられているのが「責任ある積極財政」です。
大胆な投資によって力強い経済成長を実現し、税収の増加を通じてさらなる投資を可能にするという好循環を目指しています。
ここで注目すべきは、近年のインフレによって名目GDPが向上し、それに伴って法人税、所得税、そして物価上昇が計算の元となる消費税の税収が増えているという事実です。
経済成長によって財政を立て直すという論理の中で、消費税を減税するという公約は、実は自らの税収基盤を壊すという矛盾を孕んでいます。
そのため、本気で減税を断行する意欲は低いのではないかという疑念が拭えません。
「責任ある」という言葉の裏には、無責任に財政を拡大させれば国家が破綻し、国債が買われなくなって金利が暴騰するというリスクへの警戒が滲んでいます。
現在の日本の予算の大部分が国債の利息や元本の返済に充てられているため、金利上昇は財政にとって致命的な圧迫要因となり得ます。
投資家が最も注視すべき「金利上昇」という爆弾
高市政権の発足後、如実に現れているのが10年国債利回りの上昇です。
1.6%程度だった利回りは一時期2.4%まで跳ね上がり、足元でも2.2%付近で推移しています。これは国債が買われにくくなっていることを示しており、財政を圧迫するという矛盾に直面しています。
株式投資家の目線で見れば、金利上昇で最も困るのは借金の多い業界、例えば不動産業界などです。
一方で、現在のインフレ率が3%程度ある状況では、経済学の常識として金利はインフレ率より高くあるべきだとされています。
そうでなければ、現金を貸して金利を受け取るよりも物を持っていた方が価値が増えるため、誰もお金を貸さなくなってしまうからです。
つまり、高市政権の意向とは関わらず、経済実態として金利は上がるべくして上がっているという側面があるのです。
政策テーマの精査:AI・バイオ・宇宙・コンテンツ産業の「期待値」
公約には、経済安全保障、エネルギー、サイバーセキュリティに加え、AI、半導体、量子、バイオ、航空宇宙、さらには漫画やアニメといったコンテンツ産業の支援まで幅広く盛り込まれています。
ここで注意したいのは、コンテンツ産業への支援です。
例えば任天堂のような企業への期待が高まるかもしれませんが、実のところ、国がどのように支援するのかは非常に不透明です。
国ができる支援として最も効果的なのは「設備投資減税」です。
工場や機械への投資に対して税金面で優遇すれば、企業は投資をしやすくなります。
しかし、コンテンツ産業は工場を持つわけではなく、基本的には人間がアイデアを形にするビジネスです。
国がコンテンツファンドを作ったとしても、エンターテインメントは当たり外れが激しく、官主導でうまくいくのかという謎が残ります。
実際に任天堂の株価を見ても、政権公約が出た後に反応している様子は見られず、市場の期待は薄いと言わざるを得ません。
本命テーマ「国土強靭化」と公共事業の売り手市場化
私が現実問題として最も可能性を感じ、かつ「ど真ん中」のテーマだと考えているのは「国土強靭化」です。
これは要するに公共事業を積極的に行うということであり、国が予算をつければそれがそのまま事業になります。
国が自ら発注者となるため、企業の自主性に任せる他の支援策よりも手っ取り早く、かつ確実性が高いのです。
現在、建設業界では深刻な人手不足が起きています。
その結果、入札をしても応じる業者がいなかったり、不調に終わったりするケースが増えており、国は入札価格を引き上げざるを得ない状況にあります。これは業者側からすれば、同じ作業をしても得られるお金が増える、すなわち利益率が向上することを意味します。
今や公共事業の現場は完全な「売り手市場」となっており、ゼネコンや工事関係の会社にとっては極めて強い追い風が吹いているのです。
注目銘柄の徹底分析:インフラ・エネルギー・防衛の最前線
具体的な銘柄を見ていきましょう。
まずはスーパーゼネコンの一角である大林組です。
今期の業績予想では営業利益が約16%増と好調ですが、興味深いのは売上高が過去最高ではないのに利益が伸びている点です。
これは一件あたりの採算が確実に上がっていることを示しています。株価チャートも非常に綺麗に上がっており、PERも16.7倍とまだ検討の余地があります。
次に注目したいのが、ライト工業という会社です。
聞き馴染みがないかもしれませんが、高速道路の斜面などをコンクリートで固める「法面(のりめん)工事」の専門業者です。
この特殊技術はインフラ維持に欠かせないものであり、安定して成長し続けています。
株価はこの1年で2倍近くに上昇していますが、それでもPERは16倍程度に留まっており、国土強靭化というテーマがそのまま数字に現れている代表格です。
橋の補修を専門とするショーボンドホールディングスも、コンクリート補修というダイレクトな恩恵を受ける立場にあります。
以前は公共事業が増えても「採算トントンで実績作り」という時代がありましたが、今は売り手市場の中で予算が増えるという、非常に経済的意味のある変化が起きています。
エネルギー政策の行方:電力不足と原子力の再評価
エネルギー政策についても触れておかねばなりません。
柏崎刈羽原発の再稼働が話題となりましたが、世界的な電力不足を背景に、原子力の推進はもはや必須の条件となりつつあります。
この分野で注目されるのは、やはり日立製作所や三菱重工業です。
三菱重工業は、高市政権の政策である防衛、エネルギー(ガスタービン発電)、宇宙、さらには巨大な構造物を作るという意味での国土強靭化まで、あらゆるテーマの「ど真ん中」に位置しています。
ただし、三菱重工業の株価には注意が必要です。
PERはついに67倍まで登り詰めており、足元で素晴らしい業績を叩き出してはいるものの、既に将来の好材料を相当程度織り込んでいる可能性があります。
実際に昨年来の高値を更新してはいますが、政権公約が出たからといってここからさらに急騰するような反応は見せていません。
まとめ:テーマ株投資で失敗しないための「ポリシー」
最後に、投資家として私が大切にしているポリシーをお話しします。
単に「テーマ」として話題になっただけで買ったものは、一瞬の流行りで終わってしまいます。重要なのは、そのテーマが企業の業績に反映される「火がつくきっかけ」になるかどうかです。
例えば防衛セクターは、GDP比1%から2%へと予算が倍増し、さらに業者の利益率がこれまでの5%から15%まで引き上げられるという、極めてリアリティのある、意味のあるテーマでした。
今回の国土強靭化も、人手不足による利益率の向上という、業界の中で予算が増えるという点で、経済的に大きな意味を持っています。
突発的なテーマに惑わされず、その裏側にある業績への実効性を見極めることが、投資家としての成功への道です。
そして何より、各政党や候補者の政策をしっかりと見極め、より良い国を目指して選挙に行くことが、長期的な投資環境を守ることにも繋がります。
共に学び、賢い投資を続けていきましょう。
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