「トランプ大統領の政策が気になって投資ができない」という声をよく耳にします。
また「長期投資家としてトランプ大統領の政策はどこまで意識すべきなの?」と疑問に思っている方が多いようです。
結論からいうと、経済政策のことは気にせずに普段通り投資を行っていくべきだと考えています。
なぜなら、トランプ大統領の経済政策は経済というよりもどちらかというとトランプ大統領の支持層に対して訴えかけるものであるからです。
そこで今回は、つばめ投資顧問がトランプ大統領の経済政策の本質について深掘りしていきたいと思います。
また、トランプ大統領の経済政策を受けて長期投資家はどうすればいいのかを解説します。
目次
トランプ大統領の経済政策の本質
トランプ大統領の経済政策で目立つものとして、関税政策とエネルギー政策が挙げられます。
特に関税政策に関しては、経済全体というよりも支持層に向けたアピールが強く意識されたものとなっています。
なぜなら、トランプ大統領がいま重要視していることは、とにかく支持層の期待に寄り添うことだからです。
トランプ大統領の支持層は主に、アメリカで置き去りにされたと思っている白人労働者や地方の個人事業主です。
アメリカでは、長らくエリート層が政治を主導してきました。
エリート層は環境問題やLGBTの権利、グローバリゼーションを推進していて、実際にアメリカには移民が増えてきています。
また人種差別問題の対策として、大学の定員に有色人種枠があるなど白人の方にとって恩恵が受けられないような政策が行われてきました。
そうした中で、白人労働者層や地方の個人事業主は「自分たちの利益が無視されている」と感じてきました。
この状況下で、トランプ大統領が登場します。
トランプ大統領の「Make America Great Again(アメリカを再び偉大に)」というスローガンは、白人労働者層や地方の個人事業主の不満を代弁するものとなり、支持を集めました。
トランプ大統領は、報道やニュースでは否定的に描かれることも多いです。
しかしながら、時間が経つほどインターネットの情報などもあり白人労働者はトランプ大統領が味方だという思いを強くしているようです。
これが2期目に繋がっていると考えられることからも、トランプ大統領は経済政策を通じて支持層に向けたアピールを積極的に行っています。
関税政策
ここでは、トランプ大統領の支持者にとって関税政策が何を意味するのかを解説します。
また、関税政策を行うことで起こる影響についても見ていきましょう。
関税政策がなにを意味するのか
関税政策は、支持者たちにとって失われた雇用機会が再び米国に戻ってくるという希望の象徴です。
アメリカの白人労働者の仕事がなくなったり、経済的に豊かではなくなったりしている原因の1つとして、グローバリゼーションによる工場の海外移転が挙げられます。
そのためトランプ大統領の関税政策では、「海外の輸入や移民を抑制し、国内産業を復活させる」というストーリーを掲げています。
高い関税をかけることで工場が国内に戻り、白人労働者の雇用が増え豊かになるという構想です。
この政策が実現して、豊かだったころのアメリカに戻ることを支持者は期待していてトランプ大統領もそれに応えようとアピールしています。
他にも、トランプ大統領は関税を交渉材料として使っている面もありそうです。
たとえば、実際に関税をかけなかったとしても相手国から譲歩を引き出そうとしていることが挙げられます。
それでもし米国内への工場誘致などが達成されれば、白人労働者の支持を再び獲得することにつながり、強い大統領だという姿を見せられます。
このことから、本当に輸入を止めたいというよりも一種のパフォーマンスである面が強いといえるでしょう。
そのため、投資家としては関税政策を気にしすぎなくてもいいというのが1つの見方です。
このパフォーマンスでアメリカの製造業が回帰するのか
この関税政策で実際に製造業が回帰するのかというところですが、つばめ投資顧問としては恐らく帰ってくることはないと考えています。
アメリカに製造業が帰ってこない理由として、以下のことが挙げられます。
- アメリカは賃金が高い
- 産業集積がない
- 労働者の質の問題
それぞれみていきましょう。
アメリカは賃金が高い
グローバリゼーションが進んで工場が海外に進出したのは、アメリカは賃金が高いからです。
中国はアメリカの3分の1程度、東南アジアでは約10分の1となります。
このような状況では、太刀打ちできません。
たとえば、iPhoneは現在でも高価な商品ですが、すべてをアメリカで製造した場合人件費を合わせると場合によっては50万円以上になる可能性があります。
消費者が安く製品を手に入れられているのは、海外に工場があるからです。
このことから、民間企業の行動としてはアメリカに工場を戻すのは経済的に見ると合理的とはいえません。
産業集積がない
アメリカには産業集積がないため、製造業が回帰するのは難しそうです。
中国が「世界の工場」と呼ばれる理由は、賃金の安さだけでなく深圳などの地域に様々な製造業の工場が集積しているからです。
工場が集まっていると、部品の取引が行いやすくなります。
特にハイテク分野では、この傾向が顕著です。
自動車についても同様で、日本の愛知県に自動車工場が集積しているように地域を集中させることは非常に重要です。
アメリカには現在、そのような産業基盤があまりありません。
そのため、すぐに製造業を戻すといっても簡単には実現しないでしょう。
労働者の質の問題
労働者の質の問題も重要です。
白人労働者が再び工場で働いて豊かになることを期待しているかもしれませんが、実際にはハードルがあります。
バイデン政権下で「CHIPS法」により、アメリカに半導体工場を誘致するために何兆円もの補助金が出されました。
サムスン、TSMC、インテルなどが工場を建設しましたが、実際にはあまりうまくいっていないようです。
なぜなら、半導体工場を効率的に運営するには優秀な労働者が必要だからです。
半導体工場では、クリーンルームという塵ひとつない環境で緻密な作業を行っています。
また、トラブルにも迅速に対応できる勤勉な人材がいなければ成り立ちません。
台湾や日本ではそのような人材が揃っていますが、アメリカで今からそうした人材を育てるのは容易ではありません。
このことからも、アメリカに製造業を戻してうまく稼働させることは難しい面があります。
関税政策のデメリット
関税をかけると、輸入品に上乗せされた費用は最終的に消費者に転嫁されます。
消費者が購入する際の価格が上昇するため、生活が苦しくなる可能性が大きいです。
また現在のアメリカではインフレが進行していますが、関税によってさらに拍車をかける恐れがあります。
生活が苦しくなれば、人々の不満も高まるでしょう。
その上インフレは、政党の支持率を大きく下げる要因となります。
このように関税政策を進めると、インフレをさらに加速させ消費者の負担が大きくなるほか、支持率も下げてしまうデメリットがあります。
エネルギー政策
社会が大きく動き出すきっかけとなりえるのが、エネルギー政策です。
アメリカでは2010年代にシェールガス革命があり、固い岩盤層にある天然ガスや石油を新技術で掘削できるようになりました。
その結果アメリカは世界一の産油国となりましたが、これまで積極的に活用されてきませんでした。
ここでは石油や天然ガスなどの枯渇性エネルギーを十分に活用できなかった原因を2つ解説します。
1.グリーン政策
枯渇性エネルギーを十分活用できなかった理由の1つとして、グリーン政策が挙げられます。
グリーン政策とは、太陽光発電など再生可能エネルギーを利用して環境保全を行うバイデン政権が推進してきた政策です。
しかしながら、トランプ大統領は反対の立場を取っています。
トランプ大統領は「石油を積極的に掘削して豊かになる」という、ある意味で「古き良きアメリカ」のイメージを体現するような政策を推し進めています。
環境問題を一旦脇に置けば、この石油掘削推進はアメリカにとってメリットになる可能性が高いです。
石油を大量に掘れば、海外に輸出できるため収益を得られます。
また国内石油価格が下がれば、インフレ抑制にも繋がるでしょう。
バイデン政権下でも石油掘削は行われていましたが、環境規制によってコストがかかっていました。
トランプ政権がこれらの規制を緩和すれば、より安く掘削できるようになりアメリカのエネルギー関連企業にとって追い風となります。
経済活性化とインフレ抑制の可能性を考えると、環境への懸念はあるものの経済面ではプラスに働く政策でしょう。
2.枯渇性エネルギーの需要がいまほどなかった
石油や天然ガスなどの枯渇性エネルギーがそこまで活用されていなかった理由として、以前はいまほど需要がなかったことが挙げられます。
なぜなら、先ほども解説しましたがグリーン政策の影響で、枯渇性エネルギー需要が少なくなっていたからです。
ですが、現在はAI市場拡大の影響で電力不足が問題となっています。
AIを稼働させるためにはデータセンターが必要で、それには大量の電力が不可欠です。
グリーンエネルギーで稼働させることが理想的ですが、供給が安定しないことから再び火力発電が注目されています。
特に、比較的安いコストで掘削でき二酸化炭素の排出量も少ない天然ガスの需要が高まっています。
枯渇性エネルギーの需要が高まると、関連企業の活性化や雇用を生み出すなど短期的には経済にとってプラスになることが考えられるでしょう。
トランプ政権が株式投資に与えるリスク要因
リスクとは将来の不確実性だといえますが、トランプ政権下でリスクとなるのはイーロン・マスク氏の存在です。
トランプ政権内で、イーロン・マスク氏が何をするのか不透明な部分があります。
現在、イーロンマスク氏は政府機関のコスト削減に取り組んでおり、これ自体は好感されるでしょう。
アメリカの政府債務は膨れ上がっており、これを抑制できれば金利低下につながり株式市場にとってプラスになります。
ただ、それがわかっているだけでイーロン・マスク氏の胸の内が見えていません。
また、EVビジネスと石油掘削の推進は必ずしも一致せず、この点も不透明です。
イーロン・マスク氏の動向は個別企業に影響を与える可能性があるため、今後も注意深く見守る必要があります。
トランプ政権下で長期投資家はどう動くべき?
トランプ政権は4年間で、この期間に経済が大きく変わるとは考えにくいため企業も4年間は様子見の姿勢をとると考えます。
このことを踏まえて長期投資の観点から考えると、これまでどおり目先の動きを観察しながらも良い企業を見極め株価が下がるなら買うという基本戦略を続けるのが賢明でしょう。
もし一時的なリスクで株価が下がるなら、長期投資家にとっては絶好の買い時だといえそうです。
経済は基本的に最適化に向かう傾向があり、最終的には競争力の高い企業が勝ち残るという原則は変わりません。
短期的な影響はあるかもしれませんが、単に関税政策などによる下落であればあまり気にする必要はなさそうです。
長期投資の王道!銘柄の選び方・買い方
まとめ
トランプ氏の支持層は、白人労働者や地方の個人事業主の人々です。
彼らは外国や移民に仕事を奪われたと考えており、トランプ大統領はその味方として立ち上がっています。
関税政策は、支持層に寄り添っているというアピール的な側面が強く実際にアメリカに製造業が戻る可能性は低いでしょう。
一方で、エネルギー政策は理にかなっている部分もあります。
関税政策のマイナスの面とエネルギー政策のプラス面が拮抗して今後株式市場はどうなるのかが注目ポイントだといえます。
またトランプ政権の不確定要素として、イーロン・マスク氏の動向には注目しておく必要がありそうです。
トランプ政権を長期投資の目線で見たとしても、最終的には良い企業が強さを維持するという原則は変わりません。
長期投資家としては、目先の変動に惑わされず優良企業に投資することを続けるのがいいでしょう。
長期投資の基本原則に勝るものはなく、良い企業を探して買い下落時に問題がなければさらに買い増すというアプローチが、明るい未来への道筋になると考えています。
このようにつばめ投資顧問では、経済や長期投資について解説しています。
また個別企業の分析なども行っていますので、さらに詳しく知りたい方は無料メルマガに登録してみてください。
メルマガに登録すると現在、私が書いた電子書籍である『株式市場の敗者になる前に読む本』を無料でダウンロードできます。
ぜひこの機会に読んでみてください。
プレゼント①『株式市場の敗者になる前に読む本』
プレゼント②『企業分析による長期投資マスター講座』第一章
プレゼント③『YouTubeプレゼン資料』
メールアドレスを送信して、特典をお受取りください。
※個人情報の取り扱いは本>プライバシーポリシー(個人情報保護方針)に基づいて行われます。
※送信したメールアドレスに当社からのお知らせやお得な情報をお送りする場合があります。
※上記は企業業績等一般的な情報提供を目的とするものであり、金融商品への投資や金融サービスの購入を勧誘するものではありません。上記に基づく行動により発生したいかなる損失についても、当社は一切の責任を負いかねます。内容には正確性を期しておりますが、それを保証するものではありませんので、取扱いには十分留意してください。
コメントを残す