ソシオネクストの株価は、現在暴落しています。
2024年4月の高値から見ると、2025年2月現在では60%以上の下落です。
そのため「ソシオネクストの株価が大きく下落しているけどなぜなんだろう」と不安に思っている方が多いようです。
そこで今回はつばめ投資顧問が、ソシオネクストの株価が暴落している理由について解説します。
また、ソシオネクストの将来性など今後の見通しについても紹介します。
目次
ソシオネクストはどんな会社?
ソシオネクストは、特定の製品を動かすために必要なSoC(システム・オン・チップ)というオーダーメイドの半導体チップを作っている会社です。
半導体チップとは、以下のようなものです。

出典元:京セラ「半導体(IC)パッケージとは」
ソシオネクストの特徴として挙げられるのは、設計に特化しているので工場を持っていないことです。
そのためオーダーメイドのチップを設計し、生産を委託してSoC(システム・オン・チップ)を製造しています。
ここでは、ソシオネクストが作っているSoC(システム・オン・チップ)についても解説します。
SoC(システム・オン・チップ)とは

SoC(システム・オン・チップ)とは、画像の右側のように1つの基盤に必要に応じたチップを組み合わせて、左側のように1つのチップにまとめて様々な機能をもつ高性能なチップを作ることです。
たとえば、インテルのCPUやエヌビディアのGPUなどを組み合わせて、用途に合わせてカスタマイズするイメージです。
近年では技術が進歩して、半導体の微細化に限界が見えてきています。
そのため、いまは様々なチップを組み合わせて高性能なチップを作る潮流があります。
ソシオネクストは、その技術を持っている会社です。
SoC(システム・オン・チップ)はどんな場面で活躍するのか
SoC(システム・オン・チップ)が活躍する、具体的な場面を見ていきましょう。
特定の製品を製造するとき、半導体に求められる性能はそれぞれ違います。
たとえば、8Kテレビを製造するならどんな環境でも美しく見せられる機能として自動で明るさを調整させるための半導体が必要です。
このように、製品それぞれの機能に合ったチップが必要になるときSoC(システム・オン・チップ)が活躍します。
他にも、自動運転技術やデータセンターなどでSoC(システム・オン・チップ)が必要とされています。
お客様の要望に対して、適切なチップを設計しているのがソシオネクストです。
SoC(システム・オン・チップ)のメリット
SoC(システム・オン・チップ)のメリットは、コストを下げられることにあります。
たとえば、最適な設計ができるのでオーバースペックな半導体を載せることが減ります。
また、部品数を少なくしたり消費電力を抑えたりすることも可能です。
このように、ソシオネクストはチップを設計することで様々なニーズに応えています。
ソシオネクストの強み
ソシオネクストは、自動車向けのSoC(システム・オン・チップ)を作ることに強みがあります。
なぜなら、ソシオネクストは画像認識と通信技術を得意分野としているからです。
たとえば前の車との車間距離を画像で認識し、通信技術を合わせた事故防止システムを自動運転に実装させていく技術を持っています。
ソシオネクストは元々、パナソニックと富士通の半導体設計部門が統合してできた会社です。
パナソニックは通信技術やチップの設計、富士通は画像認識が得意です。
現在、社会では自動運転が期待されていますが、ソシオネクストはそれを実現するために適切な強みを持ち寄ってできた会社だといえるでしょう。
他にも、自動車向けSoC(システム・オン・チップ)は量産された車にも搭載されています。
たとえば制限速度を標識から認識し、カーナビが表示してくれるなど様々なところで実装されています。
ちなみに、ソシオネクストの顧客は大手自動車メーカーが多いです。
ソシオネクストの株価はなぜ下落している?業績推移を確認
現在ソシオネクストの株価を見ると、2024年4月から大きく下落しています。

ソシオネクストの株価下落の原因は、業績悪化です。
ここでは、ソシオネクストの業績推移についてみていきましょう。
ソシオネクストの業績推移

右側の営業利益を見ると、2024年1Qからみて直近では半減しています。
このように利益が半減したことから、株価も50%以上の下落となりました。
直近の売上高推移を見ると、2023年1Qのピークから落ち込んで来ています。
直近の売上が下がってしまった理由は2022年、2023年の半導体の特需が足元では剥落したためです。
2022年ごろは、コロナウイルスの影響によるパソコンやスマホなど通信事業の特需に対応するためデータセンターや通信設備の建設が盛んでした。
また自動車向けの半導体が、コロナ禍におけるサプライチェーンの混乱影響で供給が滞っていたため、先に部品を押さえておこうという買い占め的な需要もありました。
売上高が下がっているのは、それらの需要も落ち着いてしまい業績を維持できなかったことが原因です。
ソシオネクストの売上比率

ソシオネクストの売上比率は現時点で特に自動車向けが多いわけではなく、程よく分散されています。
右側のNRE売上高とは、受注した時点の初期開発費用のようなものです。
このNRE売上高に加算されたということは、今後量産される分が左側の売上高に増えていきます。
現在のNRE売上高をみると、自動車向けが特に多いです。
このことから、今後は自動車向けの売上が徐々に増加してくることがわかります。
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ソシオネクストの将来性
ソシオネクストの将来性を考えると、今後SoC(システム・オン・チップ)の需要が増えていくことが期待されているため大きく業績を伸ばす時期がくると思われます。
現在は、複数のチップを組み合わせて高性能な一つのチップを作るのが半導体業界のトレンドでもあります。
いまAIデータセンターの建設が増えていますが、特定のデータセンターに合った高度な通信技術や産業機器が増えるに従ってSoC(システム・オン・チップ)の需要は増えてくるでしょう。
またAIはいま言語が中心ですが、自動運転実現の過程でAIと自動車の運転といった2つを掛け合わせています。
このようにAIが様々な分野と掛け合わされていくなかで、SoC(システム・オン・チップ)のニーズが増えていくと考えられます。
そうなると、将来ソシオネクストが成長するタイミングがくることも期待できるでしょう。
ソシオネクストの競合
ソシオネクストは、正面からバッティングする競合があまりいません。
広義なライバルとしては、アップルや最終チップメーカーであるエヌビディアやクアルコムが挙げられます。
これらの会社は、自社で様々なチップを組み合わせられるからです。
アップルに関しましては、設計段階でその製品に合うチップを自社開発しています。
そのため、iPhoneなどには独自の半導体が使われています。
とはいえ、アップルのような自社で完結させるような企業ばかりではありません。
またエヌビディアやクアルコムもSoC(システム・オン・チップ)を作ってはいますが自社製品に合わせたものとなるので顧客にとっては選択肢が限られます。
ソシオネクストが提供する設計ノウハウから生み出される選択肢はユニークで、特定領域や自動車向けでは優位性があると見ています。
ソシオネクストのリスク
ソシオネクストのリスクとしては、エヌビディアなどSoC(システム・オン・チップ)を量産できる企業に顧客が直接設計依頼をすることがリスクです。
また、現在半導体を設計するツールがあります。
技術が進歩してそのツールが設計を安易なものにすると、ソシオネクストの存在意義が薄まってくる可能性があるかもしれません。
ですが、やはりこの会社が持つ設計能力や様々なチップを組み合わせる自由度の高さは唯一無二だといえます。
ソシオネクストの投資判断
ソシオネクストへ投資を考えるときは、自動運転が盛り上がったタイミングがいいでしょう。
自動運転の実験ははじまっていますが、法律が整備されて本当に実用化されるようになると量産が可能になるためソシオネクストは成長していくと考えます。
しかしながら、それがいつになるのかを見極めることがソシオネクストに投資をする上で肝心です。
最終需要が盛り上がらなければソシオネクストは恩恵を受けられないため、当面の予想をする際は商談状況に注目することが重要です。
この会社を常にウオッチしておけば、自動運転の恩恵を受けて業績が伸びる瞬間がわかるかもしれません。
開発しているチップがあとはたくさん使われるだけというタイミングもあると思います。
長期投資の観点から見ると、タイミングを計る取引は望ましくありません。
ですが、ソシオネクストの特性を理解して見えるところは見ながら投資していくのも1つの投資戦略としてはいいでしょう。
まとめ
今回は、ソシオネクストがなぜ株価を下げているのかについて解説しました。
ソシオネクストが株価を下げている原因は、ピーク時の利益に比べて直近の利益が半減したからです。
ソシオネクストは顧客動向に左右されやすい会社であることからも、現段階では伸びていくストーリーがなかなか描きづらいです。
ですがソシオネクストは、自動運転が実現するときには大きく成長すると考えます。
長期投資の対象にはならないかもしれませんが、そのタイミングで投資できればソシオネクストで利益を上げられる可能性もあるでしょう。
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