持ち続けたい半導体株、売るべき半導体株

今回は半導体株についてです。

ここ数ヶ月、半導体株が非常に盛り上がってきました。
初心者の方でも半導体株を買ったという方も多いかと思います。

しかし、1~2か月前くらいから半導体株の動きが怪しくなり始め、8月5日に日経平均が大暴落した時にはさらに大きく下げるという状況でした。
その後全体的には株価は戻ってきているのですが、半導体株に関しては戻りが弱いようです。

この状況で、半導体株はどう扱うべきでしょうか。

半導体株、軒並み下落

日経に掲載されている、直近1ヶ月の値下がり率ランキング(8/14時点)では、1位が東京精密でまさに半導体関連で、3位がSUMCO、4位日本マイクロ、5位TOWA、9位ローツェ、10位SCREENと、半導体関連の銘柄が上位を占めている状況です。

足元の株価下落も、おそらくこれまで半導体銘柄が大きく上がってきた反動で株価全体を引き下げていることが要因としてあると思います。

 

元々半導体というと、生成AIの需要を受けて、今後必要になってくるということで盛り上がってきて、しかもその半導体を作るために日本の製造業が実は活躍しているということでした。
NISAも始まったことで国内の投資家が投資し、円安を受けて海外の投資家も多く参入しました。

 

しかし、株価が大きく変動してしまうと、心配になる方も多いかと思います。
ここで大事なことは、その企業の何に期待して投資したのかということです。

半導体株が下がったワケ

そもそも半導体銘柄にはどのような特徴があるのでしょうか。
ここからは当社アナリストで半導体に詳しい元村さんに説明していただきます。

 

元村:よろしくお願いします。

栫井:半導体は将来的な成長性が期待されていますが、その点については間違いないと考えてよいでしょうか?

元村:そうですね。一説では半導体市場は2030年には今の2倍の規模になると言われています。私の肌感覚でもそうなっていかざるを得ないだろうと感じています。

栫井:生成AIは半導体無しでは動きませんし、最新のスマホなんかでも”AI搭載”と謳われていたりしますよね。

元村:私の身の回りにも通信端末が増えていますし、”自動運転”というトピックもあるので、半導体市場はどんどん大きくなると思います。

栫井:調子が良いのなら株価はずっと上がっていきそうなものですが、なぜこんなに上がったり下がったりするのでしょうか。

元村:直近の業績の良し悪しに関わらず軒並み株価は下がってますよね。やはり市場が先々の期待を盛り込みすぎていたところに調整が入ったと見るのが自然だと思います。

栫井:要するに割高すぎたということですかね。

元村:そうですね。確かに最近出てきた生成AIなどの特需によって、業績が伸びてくるという期待はありました。一方で、新NISAや円安の波に乗っかってきたという投資家も多かったんだと思います。

栫井:半導体が長期的に良いからというわけではなく、株価が良いから投資しないわけにはいかないという感じですかね。

元村:そうですね、盛り上がってるから自分もやってみようという状態が、今是正されてきているという印象ですね。

栫井:足の短い投資家は入ったらすぐに出ていくということですね。これは投資一般に言えることですが、”山高ければ谷深し”、短期間で大きく上がった銘柄はある時に急に下がりやすいのは、こういった短期的な投資家の動きが影響しているということですね。

元村:同じ「投資」といっても短期の投資家もいれば、1~2年というスパンの投資家、もっと長期の投資家と様々なプレイヤーがいる中で、今調整が起きているのかなという気がしています。

 

栫井:投資家の動きとは別のものとして、「シリコンサイクル」がありますよね。これは業績のサイクルということになりますが、調子が良い時にはたくさん作って業績も伸びるけど、在庫が溜まってもう作る必要が無いとなった時に市場も萎んでいくということがあると思います。その点で、半導体業界の景気は今良いのでしょか、悪いのでしょうか。

出典:日経クロステック

元村:これは足元の半導体市場の規模感と対前年比を表しているものです(青線が売上高、赤線が対前年比)。青のグラフを見ると、コロナ禍で一度需要が盛り上がったものが2023年に大きく萎んで、2024年にまた上がってきています。直近では少し下がっていますが、基本的には今回復局面にあると思われます。

栫井:2023年の下落はかなり大きかったんですね。

元村:そうですね。

栫井:決算が発表されたところですが、足元の業績やこれから半年くらいの業績は良くなっているのでしょうか。

元村:半導体関連企業といってもいろんな種類があるわけですが、それぞれで濃淡が分かれているという印象です。最先端の技術を持っていたり、最先端の半導体に必要な技術を持っている企業は好調で、一方で汎用品を作っているところはうだつが上がらないという感じです。

栫井:最先端というと具体的にはどのような企業がありますか。

元村:例えばディスコなどですね。生成AI関連の半導体をカットしたり削ったりする点では唯一無二の製造装置を持っています。

栫井:ディスコは実は先述の下落率ランキングで17位に入っていて、30%くらい下がっているのですが、PERは約40倍となお高いです。業績を見ると前年比で大きくプラスになっていて、調子が良いように見えます。株価は元々70,000円くらいあったものが43,000円くらいになって、大きく下がったのですがPERはまだ40倍あるので、元が高すぎたということでしょうか。

元村:そうだと思います。ディスコはまだまだ伸びていく会社だと思うのですが、いかんせんそのポテンシャルを分からないまま入ってきた短期筋の投資家などが多かったみたいで、膨れ上がりすぎていたのだろうと思います。

出典:マネックス証券

栫井:2年のチャートで見ると、10,000円くらいのところから70,000円と7倍までなっていたところに、さすがに上がりすぎということで調整が入ったというところですね。

元村:そういうことですね。

栫井:最先端品でこれからもどんどん業績を伸ばすということを考えたらPER40倍でもそこまで割高感は無いかなというところですね。

元村:私もそう思います。

 

栫井:逆にローテク系のところで言うとどこが挙げられるでしょうか。

元村:値下がり率ランキングに入っているところだと、ロームなどですかね。

出典:マネックス証券

栫井:確かに業績が悪化していますね。

元村:売上規模が下がったこともありますが、先々に生産キャパシティを上げるために設備投資などを好況期に行っていて、その分の減価償却がコストとして乗っかってきているというダブルパンチを受けている状況かなと思います。

栫井:営業利益率で見ると、2024年3月期はおよそ10%くらいですね。それに対して先ほどのディスコは40%くらいありますね。これはとんでもない数字ですね。

元村:やはり唯一無二の装置があったりして、それだけ付加価値が大きいということだと思います。

栫井:付加価値の高い企業はPERも高くなりますが、もっと先のことを考えたらどうなるでしょうか。

元村:ディスコに関しては、利益率も高く、各国で工場を建設したりもしていて、競合が現れない限り順当に成長していくだろうと思います。

良い企業は売る必要なし

栫井:企業によって濃淡はあるとしても、今回のテーマである「売るべきかどうか」というということを考えると、特に長期的な観点では売る必要はないんだろうなというところですね。

元村:そうですね。

栫井:片や、半導体だからといってそんなに良くないものも含まれている可能性があるということもありそうですね。

元村:そこが無ければ半導体は製造できないような技術や装置を持っている会社は強いですが、替えが効く会社だとやはり脆いですね。汎用品なんかは景況感に左右されますし、時にはもっと大きい海外企業がコストの優位性を発揮してそのあおりを受ける場面も出てくるでしょう。

栫井:最先端をやっているのか汎用品をやっているのかというのはどこを見て判断すれば良いのでしょうか。

元村:もちろん有価証券報告書を読み込むということもありますが、ここ最近で生成AIの特需を受けている会社は、急に業績が跳ねたのはなぜか?と調べていくと実は生成AI関連でここが作っている材料の使用量が爆増する、他に替えが効く会社はない、ということが見えてきたら面白いです。

出典:日経新聞

元村:例えばこの「生成AI向けデータセンター」にはGAFAMを筆頭にものすごく投資しているところですが、データセンターに搭載するためにはAI半導体が必要であったり、そのAI半導体の中にまた特殊なメモリーであったりGPUであったりが組み込まれているわけです。こういう画像処理を得意とするような先端半導体を手掛けられる会社は実はそれほど多くないです。このあたりの恩恵を受けている会社は、おそらく生成AIのトレンドが急に萎んだりするようなことはそう考えられないので、今後も恩恵を受け続けるのではないかと思います。

栫井:逆に上の図の種類別で言うところの「パワー」「アナログ」、用途別で言うところの「自動車」みたいなところは、生成AIの恩恵を受けた業績の強さをそれほど見込めるわけではないということですね。

元村:そうですね、なのでそういったところは日本企業の場合は私は避けるかなというところです。

 

栫井:半導体って、どんなに良い企業でもシリコンサイクルや株価の変動から逃れられないわけですよね。だとしたら、わざわざ半導体に投資するなら、将来伸びるかどうかいまいち分からない汎用品のところに投資するのではなくて、PER的には高くてもピカピカのところに投資していた方がおそらく精神的にも良いですよね。伸びた時にはすごいことになると。

元村:やはりそういう芽のある会社を探すことが一番だと思います。

栫井:これは投資家にとってトラップだと思うんですけど、PERの低さで選ぶと逆になってしまう可能性がありますね。

元村:そうですね。

栫井:良い企業はPERが高くなってしまうわけですが、それでもこの波を乗り越えてやがて大きくなっていくことができれば良いわけですから、まさに生成AIについていけているかどうかが大きな肝になりそうですね。

元村:高値掴みさえしなければそういう会社は安心して持っていられますね。

栫井:もっと言うなら、こういう会社は本当に業績が伸びるので、高値掴みしても何年後かにはそれを超えていたりしますよね。

元村:そうですね、複利的に伸びていくような要素は満載なのでその可能性もあります。

栫井:高値掴みしてしまって、安くなったらそこで諦めるのではなくてそこでまた買えば単価は下げられるので、そこから伸びた時の資産増加額は増やせますね。逆にあんまり伸びない企業を高値掴みすると戻ってこないですよね。

元村:手の施しようがなくなりますね。

栫井:そこが長期投資といわゆる株価を見て投資するのとの違いですね。

元村:私としては、数字的なところと、やはりその会社を信じて持ち続けられるかを判断するためにも会社を良く見てほしいと思います。じゃないと落ちた時に買い増すということもできませんし、ネットの情報なんかで気持ちが揺らいで逆に手放してしまうということにもなりかねないので、やはり自分なりの見解を持ったうえで投資してほしいと思います。

自信を持てないなら買わない

栫井:今回のテーマは「売るべきか」ということでしたが、結局長期投資の原則になりますが、良いと思っている企業は全く売る必要はなく、むしろ積極的に買うべきということですが、一方でそういう自信が持てないのであればそもそも買うべきじゃないということになりますね。

元村:特に半導体は業績に関係ないところでも値動きが激しいのでメンタル的にぐらつく場面は多いと思うので、その覚悟は持っておいた方が良いですね。

栫井:初心者の方は、ここで改めて企業がどんな企業だったのか、生成AIの恩恵を受けそうなのか、最先端の物を作っているのか、といったことを考えてみると良いと思います。バフェットの、『10年持てないと思う株は10分たりとも持ってはいけない』という言葉に集約されますね。

 

自分が何に投資しているのかということを改めて認識していただければ良いかと思います。

半導体関連株だけ持っているという方は、やはり価格の変動が大きくなってしまうので、それで安心できないというのであれば、業種の分散などを考えるべきかと思います。
いろいろな企業を持っていた方が投資も楽しめますし、それでリスクも分散されるのであればメリットにもなります。


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執筆者

執筆者:栫井 駿介

栫井 駿介(かこい しゅんすけ)

つばめ投資顧問 代表
株式投資アドバイザー、証券アナリスト
ビジネス・ブレークスルー(株)「株式・資産形成実践講座」講師

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