アメリカはリセッション入り?リセッションに強い株も紹介

アメリカはリセッション(景気後退局面)入り?リセッションに強い株も紹介


2025年3月現在、アメリカの株式市場は弱い動きを見せていて、現在景気が大きく悪化しています。
また、アトランタ連銀の予測によると、2025年の第1四半期(1月〜3月)のGDPがマイナス成長になるとの予想も発表されました。
このことから、アメリカはリセッション(景気後退局面)入りの可能性が考えられています。
そこで今回はつばめ投資顧問が、アメリカの景気について解説します。
また、このような景気が悪いときの投資戦略として投資すべき企業と避けるべき企業についても紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。

アメリカの株式市場が下げている理由


この1年間のダウ平均株価を見ると、トランプ政権誕生への期待から上昇傾向にありましたが3月に入って急に下落しています。

この下落の主な原因は、トランプ大統領の政策が経済にとって厳しいものだと明らかになってきたことです。
第1次トランプ政権時代は、株価の成長を重視し連邦準備制度理事会(FRB)に金利引き下げを求めるなど多くの政策を実施しました。
実際に、2016年にはじまった第1次トランプ政権で株価は上がり続けました。
それを踏まえて株式市場は、今回もトランプ大統領に期待して上昇していた背景があります。
ですが、今回のトランプ大統領の政策姿勢は前回とは若干異なっています。
また、もう1つの株価下落の原因として考えられるのがイーロン・マスク氏の動向です。
それぞれみていきましょう。

トランプ政権の政策と影響

トランプ大統領は前回と同様に「アメリカ第一」を掲げていますが、特に関税を大幅に引き上げ雇用をアメリカに取り戻すという方針を強調しています。
しかし、前回の政権時とは経済状況が大きく異なっています。
最も重要な違いは、インフレ(物価上昇)です。
コロナ後の大規模な金融緩和の影響で、物価が急激に上昇しています。
コロナ後は景気が回復し雇用状況も良好だったため、物価が上がっても経済は回っていました。
しかし、いまでは景気が悪化しているため物価上昇の負担が大きくなりすぎています。
このような状況で、関税政策が進められるとさらに問題が深刻化します。
なぜなら、アメリカの多くの商品が海外からの輸入に頼っているからです。
たとえば農産物はメキシコやカナダから、スマートフォンやPCは中国や台湾で組み立てられたものを輸入しています。
物価上昇に悩まされている中で、関税による価格上昇は消費者の負担になるでしょう。
このように、関税政策は米国企業だけを有利にするものではありません。
最終的に、コスト上昇分がアメリカの消費者に転嫁されることになり、これが経済に悪影響を与えることは明らかです。
前回のトランプ大統領なら、経済や株価への影響を考慮し影響が少なくなるような妥協点を見出したと思われます。
ですが、今回は関税政策を最優先し一時的な経済悪化もやむを得ないという姿勢です。
このため、株式市場は動揺し「今回のトランプ大統領は株価維持に熱心ではない」という認識から期待感が急速に薄れています。

消費者行動の変化

トランプ大統領の関税政策による影響で、人々が消費を抑えはじめています
これまでは、物価が上昇しても賃金が上がっていたため「物価は高くなっているが、給料も増えているから問題ない」という消費者心理がありました。
しかし、1〜2年前と比べて一部の商品価格が倍近くになっているケースもあります。
ウォールストリートジャーナルの記事では、「アメリカの消費者がタバコやスナックさえも買い控えている」と報じられています。

出典:The Wall Street Journal「
米消費者、たばこやスナックも買い控え メーカー悲鳴
結果として、コンビニエンスストアの販売数量が1年間で4.3%減少したとのことです。
これは、インフレによる消費者の買い控えの証拠ともいえるでしょう。

イーロン・マスク氏の影響

アメリカ経済が悪化している原因は、関税政策に関連するものだけではありません。
トランプ政権のもう一つの重要な要素として、イーロン・マスク氏の存在があります。
現在イーロン・マスク氏は、アメリカに政府効率化のための組織を設立し、政府支出削減を進めています。
Twitter(現X)買収時の対応からも分かるように、イーロン・マスク氏は「働かない人」を好んでいません。
トランプ大統領を支持したことで政府内に影響力を持ち、非効率と判断した政府職員を大量に解雇しはじめています。
一般企業のリストラであれば経済全体への影響は小さいですが、政府機関による大規模な人員削減は多くの失業者を生み出します
ロイターの報道によると、「2月の米国人員削減は245%増加し、連邦政府の職員雇用が影響している」とのことで、公務員の大量解雇が進行中です。

出典:ロイター「米人員削減、2月は245%増 連邦政府職員の解雇が影響
クレジットカード支出のデータでも、政府機関が集中するワシントンDCだけは2月も引き続きマイナスでした。

やはり、政府関係者が多く働くワシントンでは失業者が増えていてお金を使うことに消極的になっていることがこのグラフからも見て取れます。
ちなみに、日本では失業率が低いためあまり注目されませんがアメリカ経済にとって雇用問題は重要です。
なぜなら、失業者の急増による消費減少が原因で景気悪化に陥りやすいからです。
トランプの経済政策をわかりやすく解説!長期投資家はどう動くべき?

アメリカはスタグフレーションが懸念されている

現在、アメリカではスタグフレーションが心配されています
スタグフレーションとは、物価上昇と景気悪化が同時に起こる状態のことを指します。
本来景気が悪化しているなら、金融政策が効果を発揮する局面です。
コロナ時のように金利を引き下げれば、景気が回復すると期待されていました。
しかし、現在の状況で関税政策が導入されるとインフレ収束が遠のきます。
さらに、消費者はすでにインフレによる物価上昇を実感し支出を抑えています。
このことから、現在の米国経済ではスタグフレーションの問題が懸念されている状況です。
ウォールストリートジャーナルの記事によると、消費者信頼感指数(消費者の景気に対する見方を示す指標)が2022年以来の低水準に落ち込んでいるようです。
出典:The Wall Street Journal「リセッションの予兆、見るべき指標は
結果として、1月のクレジットカード・デビットカード支出が前月比で大幅に減少したと報じられています。
また、クレジットカードの支払い延滞率も上昇しており、経済的困難から支払いが遅れる人が増えています。
アメリカの商業用不動産への懸念。景気後退か?

アトランタ連銀の予測と景気見通し

こうした状況を受けて、アトランタ連銀が発表している、GDP予測「GDPNow」では2025年第1四半期の予想値が下方修正されました。
緑の線が予想値です。

出典:Federal Reserve Bank of Atlanta「GDPNow
これは、消費者の購買意欲低下が主な原因です。
アメリカのGDPの約7割は個人消費によって支えられているため、この個人消費の弱まりがマイナス成長予想につながっていると考えられます。
「GDPNow」は短期的に大きく変動する指標なので、過度に心配する必要はありません。
ですが、経済が弱くなっていることは確かだといえます。

アメリカはリセッション入りの可能性

現在アメリカ経済は、コロナ後の反動減がはじまっておりリセッション入りの可能性が高まっています
主な要因としては、以下のとおりです。

  • コロナ後の好景気による人手不足から人材充足へ変化
  • イーロン・マスク氏主導の政府職員解雇による失業率上昇
  • 住宅ローン金利の高騰による住宅や家電類などの購入減少

これらの要因から、景気後退入りが現実味を帯びてきているといえそうです。
トランプ政権下で期待された「軽微な景気減速」は実現しない可能性が高くなりつつあり、今年の株式市場は厳しい展開が予想されます。

トランプ政策は株価にプラス?マイナス?

リセッションに強い株は?

今回のリセッション時に、強さを見せる可能性がある株を紹介します。

AI関連銘柄

今回のリセッション時では、AI関連企業がさらに成長する可能性がありそうです。
なぜなら、経営判断としては雇用を削減し、AIに置き換えるということが合理的と考えられるからです。
また、AIが制御するロボットが人間の仕事を代替する流れからロボット関連分野も成長が期待できる産業です。
企業や管理職層は、AI活用によってコスト削減ができます。
人員削減分をAIに代替することで、人件費よりも低いコストで業務を遂行できます。
したがって、AI関連企業、特に人間の業務を代替するAIサービスを提供する企業は好調になるでしょう。
投資先としては、「マグニフィセント・セブン」と呼ばれるMicrosoft、Google、Amazonや半導体メーカーのNVIDIAなどが有望です。
これらの株価が相場全体につられて下がった場合は、積極的に買い増していくことも投資戦略としていいかもしれません。

ディフェンシブ銘柄

変化する分野に注目しつつ、変わらないものにも目を向けることが大切です。
投資家ウォーレン・バフェットは「変わらないものにこそ本当の価値がある」とも言っています。
たとえば、物を「作る」という基本的な工程は今後も重要です。
日用品の製造過程はAIに代替される部分があるとしても、食品、化粧品、紙おむつなどの生活必需品は常に需要があります。
特に日用品を製造している製造業は安定した需要が見込めます
また高齢化社会においては、医療や介護分野も安定した投資先であり長期投資に適した分野といえるでしょう。

リセッションに弱い株は?

今回のリセッション時は、中流層向けの商品やサービスを提供している業種は厳しくなると予想されます。
なぜならアッパーマス層(上位中流層)の解雇により消費が控えられると考えられるからです。
たとえば、自動車、外食、住宅、アパレルなどが影響を受けそうです。
このような業種は、避けるのが無難だといえます。
景気後退がやってくる!その理由と投資家の心構えを解説(2022年4月9日発行 会員向けレポート)

今後の日本市場の見通し

ここまでアメリカ市場について説明してきましたが、日本市場についてもみていきます。
先ほどAI関連は今後も好調であると紹介しましたが、AI業界の発展に必要な日本の半導体業界は今後も需要が増えそうです
また、日本の消費行動も現時点ではアメリカほど厳しい状況ではないといえます。
ニュースでは野菜価格の上昇などが報じられますが、アメリカほどの深刻さには至っていません。
アメリカの景気が悪化すれば、為替にも影響が出るでしょう。
現在の日本のインフレは円安が大きな要因となっていますが、アメリカ景気の後退により円高になる可能性もあります。
これは一時的に輸出企業の業績に影響するかもしれませんが、アメリカからの投資資金の逃避先として日本株が選ばれる可能性もあります。

まとめ

今回紹介したようにアメリカ経済は、今後大きく変化すると考えられます。
市場が不安な状況のなか時代の流れを読み、どこに投資するかを考えることが非常に重要です。
これこそが、投資の醍醐味だといえます。
今回解説した視点を参考に投資について考えることで、良い結果を生み出せるでしょう。
つばめ投資顧問では、投資に関する価値ある情報を定期的に配信しております。
無料メールマガジンでも様々な情報を提供しておりますので、ご興味をお持ちの方はぜひ登録してみてはいかがでしょうか。


執筆者

執筆者:栫井 駿介

栫井 駿介(かこい しゅんすけ)

つばめ投資顧問 代表
株式投資アドバイザー、証券アナリスト
ビジネス・ブレークスルー(株)「株式・資産形成実践講座」講師

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