経済が最悪でも、株価は踊る。「死んだ猫」は更なる下落の前触れか?
一部の国ではロックダウンが解除されるなど、明るい兆しも見えつつあります。しかし、世界中で猛威を振るう新型コロナウイルスの経済への影響が本格化するのはこれからです。IMFは今年の経済成長率をマイナス3%と予測し、米国の失業率は14.7%と過去最高水準です。
それにもかかわらず、相場は平穏を保っています。すでに「コロナ後」が目の前にあるかのような動きです。
この上昇には2つの要因があると考えます。
1つは3月の底からの自律反発的な動きです。「デッド・キャット・バウンス(死んだ猫でも落とせば弾む)」という言葉もあるくらい、大きな下落の後には必ず反発があります。
1929年の世界恐慌や1987年のブラックマンデー、2008年のリーマン・ショックでも、チャートを確認すると大きな「下ヒゲ」をつけています。「下ヒゲ」は、底から反発したことを意味します。
「下ヒゲ」は反発の兆しとも言われますが、ショックが大きければそう簡単には戻りません。世界恐慌後の大底は3年後、リーマン・ショック後は半年後にやってきました。
実体経済への影響はリーマン・ショックとは比べ物にならないほど大きくなりそうですから、「世界恐慌型」の長期戦を覚悟する必要もあるのではないでしょうか。本格的な影響が判明してくるのはまだまだこれからです。
業績予想非開示で株価上昇。箱の中身は夢か悪夢か?
もう1つの要因は、金融緩和です。リーマン・ショック後から続く金融緩和により、コロナ以前からマネーは飽和状態でした。そこへさらに、中央銀行から無尽蔵とも言える資金が供給されてくるわけですから、「金融相場」は踊り続けます。
「金融相場」と対をなすのが「業績相場」です。業績が良ければ株価が上がりますし、悪ければ下がるというものです。もちろん、当面の業績が良いはずはありません。今後1年以上、発表される業績は悲惨なものになるでしょう。
しかし、ここで特殊な状況が発生しています。通常、3月期の決算発表で業績予想を発表するのですが、新型コロナウイルスの影響を受けて上場企業の6割が非開示という状況です。こうなると、予想PERは全く意味をなしません。
業績が「わからない」ということになれば、上にも下にも動く可能性があります。売買の表面的な基準がなくなるからです。短期筋はこれを良いことに、儲かるチャンスがあるなら溢れる資金を投じておこうと、株価変動を楽しんでいます。蓋が開けられない限り、箱の中には夢が詰まっているのです。
もちろん、実態が明らかになるとやがて夢から現実に引き戻されます。これから先は、金融緩和によるジャブジャブな資金と、決して明るくない経済実体との狭間で株価は揺すられ続けることになるでしょう。
「靴磨きの少年」の正体。それでもあなたは今買いますか?
そんな中で私たちが心がけるべきなのは、上がっている時に無理に買わないことです。
株価は上がるか下がるかわかりません。まして、現在のような業績と金融緩和の板挟み状態ではなおさらです。
もしかしたら、金融緩和のほうが勝り、このまま当面上がり続けるかもしれません。しかし私は、それはそれで構わないと考えます。
私たちが取り組んでいるのは「長期投資」です。長い相場の中で考えると、今の機会を逃したとしてもまたいずれ必ずチャンスがやってきます。もしかしたら、そう遠くないうちに来るかもしれません。
一番やってはいけないことは、上がっている相場を見て「早く買わなきゃ」と焦ることです。これこそが最大の失敗の原因となります。
株価というのは「買い手」と「売り手」の両方がいて初めて成立します。出遅れていた人が買いに回ったところで、もう新規の買い手がいなくなり、それまでの買い手が売り手に回ることで株価が下落に転じるのです。
これが「靴磨きの少年」のアノマリーの正体です。すなわち、靴磨きの少年までもが買いに回るようになったら、もう新たな買い手がいないので、やがて相場は天井を迎えることになります。
天井が来ると、最初に仕込んでいた人たちは我先に逃げることを考えます。そして売りが売りを呼び、株価が一気に下がるのです。これが、株価が急落するメカニズムです。
逆に言えば、私たちが買うべきタイミングはまさにこういう時です。急落は必要以上の売りを呼ぶので、売られる必要のないものまでが投げ売りされます。バフェットもこのように言っています。
私たちが買いを入れるのは他の投資家がレミングのごとく一斉に売りに傾くときです。
ウォーレン・バフェット
チャンスが来るまでに焦って買ってしまうと、含み損が増えるばかりか、資金が底をついているという残念な状況になってしまいます。そうならないようにするのが、「資金管理」という名の投資技術です。
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