NTTの株価はなぜ下がる?NTTは長期保有にふさわしい株なのかを解説

2025年2月7日に、NTTの決算が発表されました。

NTTは株式分割により単価が引き下げられたこともあり、多くの投資家から人気を集めていました。

ところが2024年に入り下落していて、今回決算が発表されてからも下落を続けています。

このことから「今後のNTTは大丈夫なの?」と気になっている方が多いようです。

そこで今回はつばめ投資顧問が、なぜ株価が下がっているのかについて解説します。

また、NTTは長期保有にふさわしい株なのかについてもみていきたいと思います。

ぜひ、最後までご覧ください。

【NTT】決算発表で大幅下落!買い時か?

NTTの2025年3月期第3四半期決算概要

今回の決算で、NTTは増収減益となりました。

ここでは、決算の内訳と決算発表を受けて株価はどうなったのかについてみていきます。

増収減益の決算を発表

売上に該当する営業収益が3.4%の増収でしたが、営業利益が5.9%のマイナス

当期純利益は、15.9%の大きなマイナスです。

当期純利益は昨年に株式を売却していて利益が多くなったので、今回決算では大きくマイナスとなりました。

一番見るべきは、NTTの実情となる営業利益です。

通期の予想も5.9%減と元々掲げられていましたが、今回の第3四半期までの決算でも覆すことはできませんでした。

NTTの株価はなぜ下がる?

NTTは2021年から2023年にかけて大きく上がっていましたが、2024年から株価下落が続いています

2025年2月7日に決算が発表されてから、さらに株価は下がっています。

理由としては直近2四半期で利益の伸びが鈍化していたところ、今回の決算でも増収減益となってしまったからです。

前四半期に続き利益が減ってしまったので、投資家が失望する流れとなりさらに株価は下落しました。

今後増益になる見込みがたつと、株価は下げ止まると考えられます。

NISAランキング1位!NTTを買うメリットとリスクを解説!

NTTの事業構造

NTTは元々電話会社で、1985年に民営化したときの売上高5.1兆円の大部分は電話事業によるものでした。

時間が経つにつれ、電話の売上は少なくなってきて総合ICT事業の売上が増えてきました。総合ICT事業とはモバイル・インターネットとあるとおり、ドコモの携帯電話事業とフレッツのインターネット通信事業です。

さらに、グローバルソリューション事業も時間とともに売上を伸ばしています。

グローバルソリューション事業は、社会インフラのデジタル化などを海外で手掛ける事業です。

NTTは電話の会社というイメージが強いですが、携帯やインターネットも取り扱っている会社だということですね。

これから時代に合わせて、さらに変わっていこうとしているのが現在の状況です。

NTTの成長分野

ここでは、NTTの事業のなかでも成長分野としてどんな事業があるのかをみていきます。

NTTで成長している分野は、以下のとおりです。

  • スマートライフ事業
  • データセンター事業
  • 法人向けDX・AIソリューション
  • 5G(第五世代通信)
  • IOWN構想

それぞれ詳しくみていきましょう。

スマートライフ事業

スマートライフ事業は、NTTにとってかなり重要な事業です。

ここでは、スマートライフ事業について詳しくみていきます。

スマートライフ事業とは

スマートライフ事業とは、「金融・決済」「映像・エンタメ」「ヘルスケア・メディカル」などの複数のサービスを、一体化させて手軽に利用できるように推し進めた事業です。

スマートライフ事業の決算資料を見ると、売上が13.6%増えています。

額にして、前年比で1,085億円です。

NTTグループ全体で売上高が約10兆円なのに対して、第3四半期スマートライフ事業の売上高が9,000億円なので約10%スマートライフ事業で稼いでいます。

売上に大きく貢献した金融・決済

今回売上に大きく貢献したのが「金融・決済」事業です。

内容としては、d払い利用の拡大やクレジットカード会員の増加です。

d払いはQRコードを読み取って手軽に決済できるシステムで、あらかじめチャージしたお金で支払ったり携帯料金と一緒に決済したりする形で利用します。

店舗がd払いを導入すると売上金の一部をドコモに支払う流れになっているので、導入する店舗が増えるほどドコモにお金が入ってくるシステムとなっています。

またクレジットカード会員も増加していますが、ゴールドカードの年会費は11,000円です。

このように、カードの年会費でも売上を立てています。

他にも、ドコモはマネックス証券も傘下に納めていて今後さらに金融分野では期待できるでしょう。

データセンター事業

NTTは、世界第3位のデータセンターの保有企業です。

データセンターとは、IT機器を動かすために必要なサーバーなどを設置している場所でイメージは以下の画像のようなところです。

出典:ソフトバンク株式会社「国内最大級の生成AI開発向け計算基盤の稼働および国産大規模言語モデル(LLM)の開発を本格開始

NTTは元々国営事業で規模が大きいことからも、世界中にデータセンターを持っています。

いま世界では、データセンターの需要が急増しています。

なぜなら、AIを動かすためにはデータセンターが必要となるからです。

そこでさらにNTTは、データセンターの建設を加速させています。

普通はデータセンターが完成してから契約者を募る流れですが、完成前から契約が決まっているような状況です。

このことから、データセンター事業も安定した収入源になることが期待できるでしょう。

法人向けDX・AIソリューション

いまAI市場が拡大していて、AIを導入したいと考える企業が増えています

またDX化の流れも続いていて、導入を考えるとシステム会社が必要です。

大きな会社ほど新しいものを導入する際に、セキュリティ面での不安があるので安心感のある大企業に導入してもらいたいと考えます。

そこで、NTTデータが大活躍します。

安心感がある大きな会社にDX化を担ってもらえるとしたら、助かる会社が多いです。

そのため、法人向けDX・AIソリューションは今後もさらに伸びていくでしょう。

5G(第五世代通信)

5Gとは高速通信システムのことで、代表的なものとして自動運転などの開発が期待されています。

今後は車に限らずモノ同士が通信するようになるといわれていて、外出先でもスマホでカギの施錠ができたり家電を遠隔で動かしたりできるようになります。

そうなると、1個1個の通信に契約がついてきてそこでも売上を立てられるようになるでしょう。

現在個人向けの通信は厳しくなっていますが、今後法人向けで再び盛り返すかもしれません。

いまは5Gですが今後6Gになると、さらに高速かつ大容量となり活躍の幅も広がっていくと予想できるため中長期として見ると期待できるでしょう。

IOWN構想

IOWN構想について聞きなれないと思いますが、ここで詳しく解説していきます。

また、IOWN構想についてつばめ投資顧問の見解も紹介します。

IOWN構想とは

いま投資家が注目しているものとして、IOWN構想というものがあります。

IOWN構想とは、NTTが次世代通信技術として光技術により社会課題の解決などを行う構想です。

その1つに、ネットワーク負荷の激増に伴うデータセンターの消費電力量増加が社会問題としてあります。

消費電力量が増加すると、エネルギー需要に起因する環境悪化が起こる可能性が高いです。

たとえば、電力を安定供給させるために二酸化炭素を排出する火力発電に頼る必要がでてくることが挙げられます。

そこでIOWN構想では、光半導体というものを作ろうとしています。

現状の半導体では多くの電力が必要となりますが、光で情報を伝えていく光半導体を使うと電力を抑えることが可能です。

いまNTTはデータセンターも作っているので、光半導体を使ったデータセンターを作っていくことになるとさらに売上が増加するでしょう。

世間では、ここが成長分野として注目度が高いです。

つばめ投資顧問のIOWN構想に対する見解

ただつばめ投資顧問の見解として、現段階では懐疑的なところがあります。

技術開発においては問題ないと考えていますが、NTTが儲かるのかは別の話のように思えます。

理由としては、商業化の予定が2030年以降となっている点です。

長期投資の中では、5年という年数は短いといえば短いのかもしれません。

ですが2030年に商業化となっていて、5年後にはじめてお金が取れるようなサービスが生まれてくる計画です。

今も日進月歩でAIは進化しています。

たとえば、ディープシークのように安価な半導体で高性能なAIが開発されるなど進化の速度が速く、5年後の話とはいえ不確実性が高いと感じています。

また実現までに時間や研究開発費が必要ですが、これが後になって重荷になってくることもありそうです。

将来性のある分野ですが、いま判断して投資するにはあまりにも早計であると思っています。

NTTの衰退分野

先ほどは、成長している分野についてみていきました。

ここでは、逆に足を引っ張っている衰退分野について解説します。

固定電話

減益の要因としては、固定電話が挙げられます。

いまの時代、個人で固定電話を使う人がほとんどいなくなっています。

ですが、固定電話はインフラとして維持していかなければなりません。

このように、売上は減っているにもかかわらず維持コストがかかってしまうことが衰退の要因としてあります。

携帯電話

固定電話だけではなくて、携帯電話の方も様子が変わってきています。

携帯電話は、ここ20年ぐらい大きく成長してきました。

いまでは、1人1台持つようになり新規顧客が増える状況ではないといえます。

そこで登場したのが、格安プランです。

auでいうならpovo、ソフトバンクだとLINEMOなどがでてきて低価格競争が進むようになりました。

基本的に、市場が伸びているうちは商品やサービスを供給することに集中するので売上の上昇が続きます。

しかしながら、商品が行きわたってくると今度は残った企業たちで価格競争が起きるためARPU(契約者1人当たり収益)が低下しています。

この画像がドコモの直近の決算ですが、ARPU(契約者1人当たり収益)が縮小していることがわかりますね。

1人当たりの収益が減ってなおかつ契約数も伸びないとなると、売上は少なくなります

その結果、携帯通信の売上は減少してしまっています。

それでも顧客獲得競争は続きますので、販売促進費用は増えてしまい携帯通信事業は減益となり苦しい状況です。

NTTをPPMで分析してみる

ここまで紹介した成長分野と衰退分野を、PPMでまとめてみます。

PPMとは、プロダクト・ポートフォリオ・マネジメントの略で「スター」「金のなる木」「問題児」「負け犬」の4象限に振り分けて企業を分析するものです。

NTTをPPMでまとめる

成長率やシェアが高い成長企業が「スター」と呼ばれています。

  • スマートライフ事業
  • データセンター事業
  • 法人向けDX・クラウドソリューション

これらの事業は成長エンジンとして、これから先に期待できる分野です。

「金のなる木」は市場自体の成長性は低いが、シェアが高く利益をまだ生み出せるものです。

  • 個人向け携帯事業
  • 固定通信事業
  • B2B向け通信サービス

個人向け携帯事業や固定通信インターネットは成長しなくなったとはいえ、安定した契約があるのでコストを抑えて利益を出し続けられることが期待できます。

「問題児」はシェアが低いけれど、将来的に成長する可能性があるものです。

  • IOWN構想
  • 法人向けAI・データ解析ソリューション

IOWN構想は現状では、今後上手くいくのかまだわかりません。

「負け犬」はシェアが低く、市場も伸びないので撤退すべき事業です。

  • 地域通信事業
  • レガシーITシステム

地域通信事業は固定電話を使う人は減る一方ですが、維持コストがかかるため衰退事業だといえます。

PPMで見えてくるNTTの成長が難しい理由

PPMは、負け犬となっている事業を明確にして撤退する目的で作られたものです。

本来なら、負け犬である地域通信事業などからは撤退すべきです。

ですが、NTTは元々国の事業としてはじまったことからNTT法に縛られていて簡単に事業撤退ができません

NTT法とは、ユニバーサルサービスとして固定電話サービスを提供し続けなければならない

決まりがあります。

そのため、負け犬であるとわかっていながらも地域通信事業を続けなければなりません。

NTTに投資する人は、このように成長を引き下げてしまう状況があることについて頭に入れておくとよさそうです。

実際は、インターネット回線を利用するIP電話のシステムでも電話はできます。

ですが、NTT法があるため従来の固定電話も残さなければなりません。

そこでNTTはNTT法の廃止を2025年国会で通したかったようですが、うまくいっていないようです。

その点でも、期待感を下げている部分があるかもしれません。

株式投資初心者向け銘柄『NTT』

NTTを長期保有としてはどう?

NTTは投資初心者の方が経験を積むにはいい商品ですので、長期保有するのもありだと考えます。

つばめ投資顧問では、以前NTTを初心者向けの銘柄ということで紹介しました。

その気持ちはいまも変わっておらず、複数の事業を上手くまとめてくるというのがNTTだという風に思っています。

業績推移の面からみると成長率も基本的には1桁で、たまに大きく伸びる時があったとしても急成長するような会社ではありません。

ですが、これまでも紹介したとおり成長領域と衰退領域が混在するなかで着実に成長していきたいというような思いが見て取れる会社だと思っています。

配当利回りは3.58%で、初心者の方が配当を受けつつじっくり観察しながら経験を積むに相応しい会社だといえます。

(2023年6月)NTT株はなぜ下落?初心者へ本音のアドバイス

まとめ

NTTは、成長分野と衰退分野があり事業ごとに状況が異なっています。

それをPPMで整理して、成長余地がまだあるのかというのをしっかりと見極めることが重要です。

これまで紹介したことを参考に、いいところも悪い所も自分なりに深掘りして投資することがおすすめです。

またPPMは他の企業にも応用できるので、ぜひ気になる企業を分析してみてください。

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メルマガに登録して、ぜひこの機会に読んでみてください。

執筆者

執筆者:栫井 駿介

栫井 駿介(かこい しゅんすけ)

つばめ投資顧問 代表
株式投資アドバイザー、証券アナリスト
ビジネス・ブレークスルー(株)「株式・資産形成実践講座」講師

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