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危機は姿を変えて現れる。リーマン・ショックとの違いは「実需の蒸発」
市場関係者の声や株価の動きを見ると、多くの人が現在の状況をリーマン・ショック(2008年)になぞらえているように感じます。もしそうだとしたら、金融緩和が奏功し、再び長期にわたる上昇を描くことになるでしょう。
しかし、私はそうは考えていません。「危機はいつも姿を変えて現れる」と言われるように、コロナ危機がリーマン・ショックと同じような経過をたどるとは思えないからです。
リーマン・ショックは「金融危機」でした。信用力の低い人への住宅ローン「サブプライム・ローン」が焦げ付いたことによる金融機関の破綻と、それに伴う信用収縮がお金の流れを停滞させました。
すなわち、「実需」がなくなったわけではないのです。実需があるからこそ、金融緩和という「カンフル剤」を投入することで危機から回復することができました。
今回はこれとは反対です。新型コロナウイルスによる外出制限や自粛で、「実需」が蒸発しているのです。日本の緊急事態宣言は一旦終了しましたが、これからも行動を制限される日々が続くでしょう。これが日本だけでなく、世界中で起きているのだから深刻です。
直接的な影響を受ける旅行や飲食業界だけの話だけではありません。すでに国境を越えた人の往来が9割以上なくなり、グローバルな経済活動へも影響が出ています。世界経済はいまや国境を越えなくては成り立ちません。
グローバル経済の流れが止まると、物が生産できなくなります。生産が止まれば、そこで働く人たちは解雇されるでしょう。当然彼らの消費には期待できなくなります。
経営者の財布の紐も急に締まります。これまで好調な経済が富裕層の財布の紐を緩めていましたが、これからその逆回転が起きるのです。もっとも、贅沢しようにも外出制限で行くところがないことも今回の特色として挙げられます。
GDPのマイナスはリーマン・ショックの3倍!2021年のプラス成長は本当か?
実需がなくなったケースとして参照するなら、1929年にはじまる世界恐慌でしょう。街に多くの失業者が溢れ、世界のGDPは1929~1932年の間に約15%減少しました。リーマン・ショックの起きた2008~2009年が約1%の減少にすぎませんから、規模がいかに大きかったかがわかります。
IMFは2020年の世界GDPが3%減少するとの見通しを発表しています。この時点でリーマン・ショックの3倍です。アメリカが-5.9%、日本が-5.2%、ユーロ圏が-7.5%と、先進国ほど深刻です。中国がプラスになっているのは懐疑的な部分もあり、実際はさらに悪いことが想定されます。
一方で、2021年の世界経済は5.8%のプラスになるとも発表しています。現在の株価上昇はこのような数値に支えられているのではなでしょうか。株価は常に未来を先取りするからです。
しかし、本当にここに書かれているようなV字回復になるかどうかは疑問です。組織の性質を考えると、IMFが「2021年もGDPマイナス」などという絶望的な数値を出せるはずがありません。まして、各国の政府はなおさらです。
現実問題として、ワクチンや効果的な治療薬が開発されない限り経済活動はままならないでしょう。先進国で落ち着いたとしても、その頃には新興国で流行しています。新興国の医療インフラは脆弱ですから、薬がすぐに行き渡るとは思えません。
新興国に行けないということになると、低コストでの物の生産は難しくなります。これまでの経済の常識が通用しなくなり、スマートフォン1台作るのも難しくなるでしょう。iPhoneの新製品は先送りになり、それに伴う様々な動きが停止します。もちろん、製造設備への投資は行われなくなります。
一度生産拠点を新興国に移してしまったからには、もう一度国内に回帰させようと思っても10年単位の年月がかかります。政治家が言うほど簡単ではないのです。経営者も「国内か、海外か」と迷い、なかなか進まないでしょう。その間も経済は停滞を続けます。
酷似する世界恐慌と現在の株価チャート
足元の相場は上記のような経済情勢を反映しているとは思えません。米モデルナや日本のアンジェスなどに代表されるワクチン開発会社の株価が急騰するなど、市場は希望に満ちているようです。
相場の性質として、絶望の後にはどんな状況でも希望がやってきます。以下のチャートは世界恐慌時のダウ平均と現在のダウ平均の推移です。
世界恐慌は1929年10月29日の「ブラックチューズデー」を機に暴落がはじまり、11月中旬に一旦の底を打ちました。その後、5ヶ月にわたって上昇を続けているのです。4月には1年前の水準を回復しています。
そして、現在の株価です。ダウ平均は3万ドル寸前から2万ドルを割り込むところまで下がりましたが、その後上昇を続け、1年前の2万5,000ドルを回復しました。
ものすごく似ているように見えませんか?偶然の一致か、株価も200~300ドル/2万~3万ドルと似通っています。
ダウ平均は1年前の水準を回復したところで反落に転じ、その後もズルズルと下げ続けました。大底を打ったのが約3年後の1932年です。今回も似たような推移をたどっておかしくないと考えるのは、私だけではないはずです。
2~3年の低迷期を持ちこたえれば、やがてバブルがやって来る
世界恐慌と現在で異なるのは、政府による金融緩和や経済支援が迅速に行われていることです。これは、各国が歴史から学んで改善を続けてきた成果と言えます。現時点で世界恐慌のような絶望的な状況ではなく、支援によって何とか持ちこたえられている企業も少なくないでしょう。
ただし、金融政策ができることには限界があります。いくらお金があっても、「儲かるネタ」がなければお金は動かないのです。経済が回っていない状況では、そのようなネタはなかなか転がっていないように思えます。
もちろん、例えば医療機器などに対する局地的なバブル(現在のワクチン開発会社の急騰もその範囲なのかも知れませんが)が発生することはあるでしょうが、バブルはあくまでバブル、やがて弾けるものです。市場が理性的であるほど、すぐに現実に引き戻されます。
経済情勢が悪化すると、これまで好調な業績を続けてきたGAFAM(Google、Amazon、Facebook、Apple、Microsoft)もただでは済みません。iPhoneは新機種を出せず、GoogleやFacebookへの広告出稿は減り、Amazonも成長が鈍化するでしょう。
ここ数年の相場は、「米国株を持っておけば大丈夫」「S&P500や米IT企業ETFで勝ち組」という風潮がありました。しかし、ここの成長が鈍化することになれば、市場も急に夢から醒めるのではないでしょうか。栄枯盛衰という言葉があるように、同じところが勝ち続ける相場はありません。
以上を踏まえて、私が持っているこれからの相場見通しです。
現在市場は持ち直していますが、感染拡大の第2波・第3波、あるいは企業倒産や業績悪化など、悪いニュースが出る度に現実に引き戻されるでしょう。やがて、株式は見向きもされなくなります。ここで多くの個人投資家が離脱するでしょう。
その後、ワクチンの開発や企業努力により、本格的に明るい兆しが見え始めます。2022年頃には経済もようやく回復してくると見通します。
経済が回復してくると、最初はおっかなびっくりな株価ですが、やがて確信を強めると、金融緩和で溜まりに溜まったお金が一気に噴出する可能性があります。そのときには株価の急騰が起きるのではないかと考えるのです。
もっとも、予想は予想ですから、これが絶対というわけではありません。大きく外す可能性も十分にあります。それでも間違いなく言えることは、現在の経済状況は決して楽観できる状況ではないこと、その後しばらく低迷する可能性があること、一方で長期的に経済は回復する力を持っていることです。
私たちにできることは、結局は企業の長期的な成長を信じて、株価が安くなったときにせっせと買い付けることしかありません。その意味ではこれから低迷が訪れるとしたら絶好の買い場ですし、やがてはそれが報われることになるでしょう。
一番大切なのは「続けること」です。相場はわからないことだらけですが、続けさえすれば必ず報われるということは、歴史が教えてくれる数少ない真実です。これを胸に、焦らず着実に歩を進めていきたいものです。
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[…] 2020年3月の下落が,1929年10月のブラックサーズデーと同じであり,今は小休止期間と考える人(例えば,コチラの外部記事)もありますが,私はそのような考えではありません。 […]
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