バフェットがアップルへの投資を決めた理由

バフェットがCEOを務めるバークシャー・ハサウェイが、アップル株を約1,000億円購入したことが明らかになりました。バフェットはこれまでIBM以外のハイテク銘柄を避けてきましたが、なぜここへ来てアップルへの投資を決意したのでしょうか。

成長性は鈍化

アップルは現在世界最大の時価総額を持つ会社です。その金額は約50兆円。日本最大の時価総額を誇るトヨタ自動車が約20兆円ですから、その倍以上の大きさです。

事業内容はご存知のとおりiPhoneやiPadを製造・販売するビジネスです。その内訳はiPhone6割、iPad・Mac・サービスが約1割ずつを占めます。これまでの成長はiPhoneの発売をきっかけとする世界的なスマートフォンの普及がけん引してきました。

【出典】Apple Inc. Annual Report

【出典】Annual Report, Apple Inc.

そんなアップルの株価ですが、この1年で約3割下落しています。その理由としては、iPhone販売の成長が鈍化していることが挙げられます。2015年のスマートフォン出荷台数は13億台ともいわれていますから、市場全体を見渡しても成長余地は限られてきています。世界の人口は約70億人なので、そう遠くないうちに普及率は限りなく100%に近づくでしょう。

革命的なイノベーションが起きない限り、これまでのようにiPhoneで急成長を遂げることは難しくなっています。バークシャーはなぜこのようなタイミングでアップルへの投資に踏み切ったのでしょうか。

アップルの本当の価値

スマートフォンのOSは、事実上iOSとAndroidの一騎打ち状態です。Androidは様々なメーカーによって作られていますが、iOSはiPhone・iPadのみとなるため、自社で構築した ”iOS市場” を独占しているということになります。この独占力こそが、アップルの本当の力を表しています。

iPhoneを使ったことがある人ならわかると思いますが、一度iPhoneを使ってしまうと、簡単にはAndroidに移れません。データやアプリをすべて再構築しなければならないからです。つまり、新しいスマートフォンを買おうと思ったら、またiPhoneを買わざるを得ないのです。スマートフォンが隆盛を続ける限り、iPhoneは利益を生み出し続けるでしょう。

さらに、アップルは約20兆円の現預金・市場性有価証券(国債・社債など)を保有していますから、これが株主還元の原資となります。有利子負債が約5兆円あるため、差し引き15兆円です。アップルの時価総額は約50兆円ですから、それ以外の部分の価値が35兆円以上あれば割安と言えるのです。

仮に世界のスマートフォン台数が50億台に到達し、アップルがシェア3割を握っていたとすると、iPhoneの台数は15億台です。人々が5年に1回買い替えるとしても、年間3億台を安定して販売できます。純利益率は約20%ですから、iPhone1台6万円で3.6兆円の純利益を生み出すことができるのです。PER10倍とすると価値は36兆円です。さきほどの15兆円を足すと、現在の時価総額50兆円を上回ります。

ざっくりした机上の計算にすぎませんが、私だったらアップルの価値をこのように考えます。

バフェットの投資方針は変わらない

冒頭でバフェットはハイテク銘柄への投資を避けてきたと言いましたが、これは発言が切り取られただけの曲解だと思います。

バフェットは「理解できないもの」への投資は行いません。「理解できないもの」とは「それだけの価値を認めることができないもの」と私はとらえています。つまり、バフェットはハイテク音痴なのではなく、多くのハイテク銘柄に価値を認めていないということです。

実際、ITバブルではそのような「価値のないもの」の株価が一時急騰し、そして急落しました。そんな中でもバフェットは上記のポリシーを守り、資産を失うことはありませんでした。

アップルというハイテク銘柄へ投資したからと言って、バフェットの投資方針が変わったわけではありません。変わったものは、スマートフォンが人々の生活に欠かせないものとなった社会のほうでしょう。

Print Friendly, PDF & Email

執筆者

執筆者:栫井 駿介

栫井 駿介(かこい しゅんすけ)

つばめ投資顧問 代表
株式投資アドバイザー、証券アナリスト
ビジネス・ブレークスルー(株)「株式・資産形成実践講座」講師

詳細はこちら
サイト訪問者限定プレゼント
あなたの資産形成を加速させる3種の神器を無料プレゼント

プレゼント①『株式市場の敗者になる前に読む本』
プレゼント②『企業分析による長期投資マスター講座』第一章
プレゼント③『YouTubeプレゼン資料』

メールアドレスを送信して、特典をお受取りください。
メールアドレス *
※送信したメールアドレスに当社からのお知らせやお得な情報をお送りする場合があります。

※個人情報の取り扱いは本>プライバシーポリシー(個人情報保護方針)に基づいて行われます。
※送信したメールアドレスに当社からのお知らせやお得な情報をお送りする場合があります。
※上記は企業業績等一般的な情報提供を目的とするものであり、金融商品への投資や金融サービスの購入を勧誘するものではありません。上記に基づく行動により発生したいかなる損失についても、当社は一切の責任を負いかねます。内容には正確性を期しておりますが、それを保証するものではありませんので、取扱いには十分留意してください。

気に入ったらシェアしてもらえると嬉しいです!

コメントを残す

Popular Article - よく読まれている記事Popular Article

  • 40%下落のサイバーエージェントは買いか? 〜ABEMA黒字化の可能性を徹底分析〜
    サイバーエージェントの株価下落が止まりません。 この1年間、日経平均は15%近く上昇しましたが、サイバーエージェントは40%近く株価が下落し...
  • バフェットに学ぶ暴落への備え~5つのポイントと1つの禁止事項~
    このところ、株式市場は好調です。 しかし、ウォーレン・バフェットは実現金残高を過去最高水準に積み上げ、最近では様々な株を売却しています。 こ...
  • 日本製鉄、今は買い?売り? シクリカル銘柄の取扱い
    日本製鉄はここのところ非常に調子が良く、配当利回りも6%超ということで人気がありました。 しかし、直近の決算で、47%の減益...
  • 株式投資初心者に伝えたい30のこと
    今回は、「投資1年目に知っておきたかったこと30選」をご紹介しようと思います。 私も投資を始めてからけっこう年が経過しましたが、最初からこれ...
  • 投資で成功した人に共通していた33のこと
    今回は成功する長期投資家の共通点についてです。 私の周りには、つばめ投資顧問に関わっていただいているろくすけさんや森さんのような、多くの財産...

Article List - 記事一覧Article List

カテゴリから記事を探す