「第2波が生じなければ」という前提の無意味さ
7月16日(木)に、日銀が「経済・物価情勢の展望」を示しています。概要には、以下のようなことが書かれています。
日本経済の先行きを展望すると、経済活動が再開していくもとで、本年後半から徐々に改善していくとみられるが、世界的に新型コロナウイルス感染症の影響が残るなかで、そのペースは緩やかなものにとどまると考えられる。その後、世界的に感染症の影響が収束すれば、海外経済が着実な成長経路に復していくもとで、わが国経済はさらに改善を続けると予想される。
これを読む限り、日本経済は新型コロナウイルスによる混乱を受けたものの、その後はペントアップ需要(抑制されていた需要)の顕在化に加え、緩和的な金融環境や政府の経済対策によって持ち直すという明るい展望が書かれています。
しかし、その後を読み進めると気になる記述が見つかります。
上記の見通しは、大規模な感染症の第2波が生じないことに加えて、感染症の影響が収束するまでの間、企業や家計の中長期的な成長期待が大きく低下しないことや、金融システムの安定性が維持されるもとで金融仲介機能が円滑に発揮されることなどを前提としているが、そうした前提には大きな不確実性がある。
楽観的な見通しは「大規模な感染症の第2波が生じないこと」が前提となっているとのことです。
それでは国内の感染者数の状況はどうなっているでしょう。改めて触れるまでもないかもしれませんが、7月に入り急速に感染者数は増加しています。昨日の新規感染者数は全国で600人にのぼりました。
特に感染者数の増加が顕著な東京都が政府の「GoToキャンペーン」から除外されるなど、まさに経済の活性化と感染防止の攻防が土壇場で繰り広げられている状況です。
このような状況下で「第2波が発生しないこと」という悠長なことが言っていられるでしょうか。私たち投資家としてのメインシナリオは、第2波を前提としたものに据えておく必要がありそうです。
あふれるお金は堤防を超え金融市場に流れ込む
株式市場はどちらかと言えば「楽観シナリオ」の方を見ているようです。さすがに上昇の勢いはなくなりつつありますが、株価水準は新型コロナウイルス以前の水準にとどまります。
ただし、これは経済に対する楽観論だけではありません。財政・金融政策が深くかかわっています。
各国政府は、給付金をはじめとする「バラマキ」により、国民の懐を温めました。それで急場をしのいだ人もいるでしょう。しかし、大半の人は使う先がなく、貯蓄に回っているようです。米国の貯蓄率は過去最高を記録しました。
政府のバラマキに加えて、中央銀行も輪転機を回してお金を刷り続けています。よほどヤバい企業でない限り銀行に融資を行わせ、さらには金融市場で社債を買い取ってパニックを防止しているのです。実体経済にお金が回らない中、金融市場へは堤防が壊れたようにお金が流れています。
利にさとい投資家がここに目をつけないわけがありません。今低利で金を借り、それを金融市場に投じれば一夜にして大金持ちになれる可能性があるのです。投資対象は実態がどうということよりも「夢」を売る会社であるほどよく、電気自動車のテスラやワクチン開発のモデルナなどの局所的なバブルを生んでいます。
現在の金融政策が続く限り、投資環境は「良好」と言える状況になっているのです。
この先数ヶ月で正念場が訪れる
しかし、果たして今の状況が続くことがあり得るのでしょうか。
東京商工リサーチによると、2020年6月の全国倒産件数は780件でした。昨年が695件ですから、決して多いということにはなりません。グラフで見ても、倒産は決して増えていないことがわかります。5月に至っては過去に例を見ない少なさです。
これは政府・中央銀行が「絶対に倒産させない」と決めて銀行に融資を出させ続けているためと考えられますが、「7割経済」とも言われる中で、企業が収益面で苦しくないはずがありません。
今は綱渡りをしている状況と言っても良いでしょう。融資が続く限り企業は当面倒産しなくて済みますが、時間が経つほど借金は膨れ上がります。やがて耐えきれなくなり倒産を選択する企業も現れるでしょう。
倒産が増えると、銀行の融資が焦げ付きます。融資が焦げ付けば、銀行は融資姿勢を硬化させ、新たな融資に慎重になるでしょう。すると、融資を頼みの綱に生き残っていた企業は、今度ははしごを外されて倒産せざるを得なくなってしまうのです。
これがループすることで、「緩和的な金融環境」という前提が崩れることになり、やがては株式市場にも波及するでしょう。日銀もレポートの中で「金融仲介機能が円滑に発揮されることなどを前提としているが、そうした前提には大きな不確実性がある」と言及しています。
JPモルガンのジェイミー・ダイモンCEOは決算発表で「これは普通の景気後退ではない。景気後退局面を目にするのはまだ先」と言い、同社のCFOは「この先数ヶ月で正念場が訪れる」と発言しました。
米銀行は、過去最大級の貸倒引当金を積んでいます。これが意味するところを私たちは考えるべきです。
プレゼント①『株式市場の敗者になる前に読む本』
プレゼント②『企業分析による長期投資マスター講座』第一章
プレゼント③『YouTubeプレゼン資料』
メールアドレスを送信して、特典をお受取りください。
※個人情報の取り扱いは本>プライバシーポリシー(個人情報保護方針)に基づいて行われます。
※送信したメールアドレスに当社からのお知らせやお得な情報をお送りする場合があります。
※上記は企業業績等一般的な情報提供を目的とするものであり、金融商品への投資や金融サービスの購入を勧誘するものではありません。上記に基づく行動により発生したいかなる損失についても、当社は一切の責任を負いかねます。内容には正確性を期しておりますが、それを保証するものではありませんので、取扱いには十分留意してください。
アドレスを登録したのですが、何も返信もなく、サイトでもダウンロード先がなかったのでメールしました。
どのようにすれば良いでしょうか?
申し訳ございません。
こちらよりダウンロードいただけます。
https://bit.ly/2F6ivxU