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以下、文章化したものです。
今回はキャノンについてお話しします。
キャノンといえば日本が誇るグローバル優良企業として多くの人に有名です。
しかもその会社が高配当を出しているという事で、個人投資家から非常に人気の高い銘柄です。
しかしながらこのキャノンが新型コロナショックを受けて、今第二四半期は赤字に転落してしまいました。
その上配当も大減配するという結果になってしまいました。
当然株価は大きく値下がりしてしまいました。
ここでは、キャノンの減配が果たして予想出来たのか、更には現状を踏まえたキャノンの妥当株価についても計算してみたいと思います。
減配は予想できた?
日経新聞の記事にキャノンが21年ぶりの安値を記録したとありました。
キャノンが28日に発表した決算で中間配当の減配を発表しました。
これが実に33年ぶりの減配になるという事で市場関係者へのショックは大きかったです。
中間配当は80円から40円になり、また12月の末の配当についても昨年度80円だったものが現在は未定となっている状況です。
これを受けて翌日29日の株価は大きく値下がりし、1日でマイナス14%というストップ安に近い水準の下落をを記録しました。
先程も説明した通り、キャノンといえば33年も減配をしていなかったという事から、個人投資家配当銘柄として、あるいはグローバル優良企業として人気の高い銘柄でした。
ついにそれが減配してしまうという事で、当然株を持っている人、あるいはそうでなくても市場関係者からの驚きは大きいです。
それがこのマイナス14%という数字に表れていたと思います。
しかしよく見ると、減配は事前にしっかり業績などを見ていれば、予期出来ていたのではないかと私は思います。
確かに直近の配当の水準だけ見ると右肩上がりです。
30年以上減配がなくて直近でもじわじわと伸ばしていて、これだけ見ると非常に安心出来る配当銘柄だと思うかもしれません。
しかしながらこれを業績と合わせてみましょう。
青がEPSつまり一株当たり利益、赤が配当という事になるのですが、青を見ると誰が見ても明らかに右肩下がりとなっています。
そして注目すべきがこの黄色の折れ線グラフです。
これは配当性向と言って配当を一株当り利益で割った金額、つまり利益の何パーセントを配当に出しているかという事です。
キャノンの場合この十数年間の間に、数回100%を超えているタイミングがあって、そうでなくても50%を超えるというのは一般的に見て高い水準にありました。
これがどういう事なのかというと、利益以上の配当は出せるには出せますが、ずっとそんな事をしていたら純資産が減ってしまいます。
それは会社の財務としては由々しき事態なのでこれをずっと続けるというのは難しい訳です。
けれどももはやキャノンはすでにそんな状態にあったと言う事が出来ます。
従ってその流れでいけばキヤノンは新型コロナショックが無かったとしても、利益が下降線を辿っている以上どこかで必ず減配をしなければならないような局面に陥ったのではないかと考えられます。
私も以前の動画でそれについて言及いたしました。
減益は「時代の流れ」か
ではこの減益の要因は何なのかという事を改めて考えてみたいと思います。
これがキャノンの事業構成です。
オフィスつまりオフィス用複合機など47%、それからイメージングシステムこれがデジタルカメラで23%。
メディカルシステムは東芝から買収したMRIなどのことで、これが全体の12%、それから産業機器、フラットパネルディスプレイと呼ばれる超精密機械が21%という事になっています。
今回の新型コロナショックで皆さんそもそもオフィスに行かなくなったので、オフィス事業がかなり厳しい状況になってしまったという事があります。
また、イメージングシステムについてもなかなか外出やお出かけしないと、カメラを使う機会がないのでカメラも厳しいという事になりました。
産業機器についても工場が動かないという事になると、こういった物が必要なくなってしまうのでこれもダメになり、軒並み厳しい状況に陥ってしまいました。
それがこの今期の業績発表になります。
このオフィス、イメージング、それから産業機器、いずれも大幅減益や赤字という結果になっています。
これは新型コロナの一時的な影響なのかなと思ってしまいがちですが、実はそうでもありません。
先程見ました通り、業績は見事に右肩下がりになっています。
改めて事業に戻りますとオフィスというのが、例えば皆さんも営業の現場などでは紙はあまり使わずにタブレットでやって、そのままサインをして取引をするなんて事も珍しくなくなってきたので、紙の需要というのも明らかに少なくなってきています。
またデジカメについてもみんなスマホで撮るようになったので、このイメージングシステム、デジカメの需要というのもやはり下がってきています。
キャノンは素晴らしい技術、素晴らしい商品を持ってはいますが、もはや持っている産業自体が衰退産業にあった、つまり新型コロナがなくとも厳しい状況にあった事はは間違いありません。
この事から減配は避けられなかったという事が考えられる訳です。
更にこの新型コロナショックを受けて在宅勤務が進むようになると、紙はもはや使い物にならなくなってしまいます。
そもそも紙などなくてもデジタルでやった方が、管理の都合や、地球環境に優しいという点でも良い訳です。
なのでもはやこれは時代の流れを加速させただけという形ではないかと思います。
もちろんキャノンもこれをぼーっと眺めていたのではありません。
これらが将来的にやばいという事は分かっていたので、各社それ以外のビジネスというのをM&Aなどを通じて育んできました。
先程ありました、東芝メディカルシステムズを買収したという事もその一つです。
医療は現時点においても増益を達成しているという事から、これが功を奏したという部分はありますが、全体の割合からすれば大したことありませんから、事業転換が間に合わなかったといえます。
妥当な株価は?数字で考える
多くの株式保有者にとって問題となるのが、これから株価が果たして戻るのかという事ではないかと思います。
一時的に下がったとしても良い企業だったらやがて戻ってくると考える人も少なくありません。
そこは数字に冷徹になって評価を下さなければならないと思います。
そこで想定株価、キャノンの今後の業績から見込まれる妥当な株価というものを計算し、それを元に売買の判断をしていきたいと考える訳です。
前提条件といたしましては成長はやはり今持っている事業からは当面厳しく、よほど事業転換をしていかない限り成長していくのは難しいです。
新型コロナは今が一番厳しい時だと思わるので、やがて人々がオフィスに戻るようになると一定の需要は戻る事にはなると思います。
しかし100%戻るかと言ういうと決してそんなことはないだろうと思われ、先ほど言った通り時代の流れが加速して、キャノンの衰退が一気に進んでしまったというのは否めないので、8割程度の業績になるのではないかと考えます。
また配当はこれまで高配当という事で株価を支えていた部分がありますが、すでに30年以上続いていた減配なしという記録が終わってしまったので、今後どうなるか分からない投資家もそれを支えにする事は出来ないので配当自体が株価の支えにはならないという事が考えられます。
その前提条件の下でPERを考えます。
PERというのは成長性に対する評価なので、どれぐらいのもので見られていたのかというところは、マネックス証券の銘柄スカウターから見る事出来ます。
幅でいうと13倍から24倍というような幅で動いています。
平均値としては17倍というところです。
ここでは恣意性を加えないために平均の17倍を取りたいと思います。
そして利益が直近150円から200円くらいのEPS(一株当たり利益)を出していたのでその8割程度という事で100円から150円ぐらいではないかという風に考えます。
そしてPERは先程使った17倍というのを引用しまして、単純に掛け合わせる事によって想定株価が簡単なものですが計算出来まする訳で、それが1700円から2250円という結果になります。
さて、現在の株価を見ますと、これは7月30日時点ですが、1,822円という事で先程お示しした1700から2250円の範囲内に収まっています。
つまりこれを見る限りキャノンはまだ妥当な株価の範囲内にあるという事が私としては考えられる訳です。
言い換えると、まだ割安とは言えないという事です。
急落こそしましたが、そもそも事業の衰退という事を考えると、もはやこれぐらいの価値が妥当だったと思われますし、むしろ3000円ぐらいあった株価というのは景気の流れだとか、あるいは配当に支えられていた部分が少なくないんではないかと思います。
逆にこの急落を受けて買うかというと、それに至るほど割安でもない訳です。
そもそも成長性に限界があるので持っていたところで、多少はもちろん回復するかもしれませんが、上限としてもせいぜい2500円から3000円程度という事で、必ずしも有利なものではない、むしろ新型コロナでこれ業績の劣化が加速してしまうとするならば、ますます厳しい状況になってもおかしくないというリスクをはらんでいます。
買うほど割安でもなく、持ち続ける旨みもない
結論としては、今はまだ割安な水準とは言えないので、今が買いのタイミングとは言えませんし、また持ち続けるにしてもあまり大きな利益は望めないものになるのではないかと思います。
配当が減ってしまったので更に持ち続ける理由というのもなくなってしまいました。
正直この銘柄を持っている事はあまり良い期待値を持つものではないと考えます。
決してそこまで悪い銘柄だとは言えませんが、少なくとも今が買いだというタイミングでもないと思います。
もっと成長性の期待出来る銘柄、あるいは割安さを求めるにしてももっと株価が下がった時に投資するという投資行動が有利なのではないかと私は考えます。
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