YouTubeに動画をアップロードしました!
以下、文章化したものです。
自動車企業の決算が発表されました。
トヨタは黒字を確保して今期通期での見通しも黒字予想を出していますが、一方で日産などは大赤字を出していて見事に明暗分かれる決算となっています。
もっと視野を広げて自動車業界というところを見てみますと、電気自動車、自動運転車のテスラがトヨタの時価総額を抜いたということでこれはもう時代の分かれ目なのではないかという見られ方もあります。
果たして今後自動車業界はどのようになってしまうのでしょうか。
そこにおいて私の観点で見た買える会社買えない会社と分けてみて、今後の自動車業界を占いたいと思います。
各社を分析
2021年3月期の予想純利益をグラフにしてみました。
トヨタは7300億円の黒字、ホンダは2650億円、スバルは600億円の黒字と、新型コロナ禍においても黒字を出している企業はあります。
一時的に営業ができなくて販売が落ちたということはありながらも自動車に対する需要はまだ全くゼロになってしまうというな性質のものではないので黒字を確保できているというところがあります。
一方で日産は6700億円の赤字というとんでもない数字を出しています。
同じく日産ルノーグループに所属する三菱自動車はマイナス3600億円、マツダはマイナス900億円という厳しい結果となっています。
スズキに関しては通期の見通しは非開示となっていますが、第1四半期は黒字を確保しています。
この新型コロナ禍における業績というのが実は各社それぞれの力を表していると言っても過言ではないです。
自動車というと、販売のタイミングによって利益を操作できる部分があるわけなんですけれども、この新型コロナ禍においてはごまかしが効かなくなっているという曲面があり、むしろ無理をしてきた会社ほどコロナのせいにして赤字を出してしまおうというような動きも目立っています。
そんな中で各社の特徴を見てみます。
【トヨタ】
トヨタ自動車といえば世界最大級の自動車会社で、1年間世界全体で1000万台を売り上げいるという超巨大な自動車会社となっています。
トヨタ生産方式というのはあまりにも有名で、「カイゼン」という現場におけるコスト削減努力や技術の改善といったことに取り組んで、日本を代表する製造業として名を馳せています。
またプリウスに代表されるような高いハイブリッド技術を持っていて、自動車業界を技術でリードする会社と言えます。
これは見事に日本の製造業、つまり安く良いものをたくさん作る技術、それから研究開発などの高い技術も持ち合わせた万能の会社だと言えます。
実際にトヨタの車に乗っている方も多いと思いますし、何よりトヨタの安心感というものは大きいです。
【ホンダ】
規模に関しては売上高でトヨタのおよそ半分という形になっています。
かつては独自技術を多く持っていました。
オートマチック技術が開発されたときに、特許を買うのにコストが高すぎるからといって、「ホンダマチック」と言われる独自の技術を開発して安く車を販売したということから、技術集団と見られていました。
しかし最近は特に目立った技術というのは普通の車ではあまり見かけなくなって、埋もれがちになっているというところがあります。
一方でホンダの強みがに二輪事業、バイクです。
主戦場は東南アジアですが、バイクに関して世界トップシェアを誇る会社です。
したがって、バイクは一番ですけれども車に関しては二番煎じというところがあります。
しかし、東南アジアで培ったバイクの開発力には絶対的な強みがあります。
【スバル】
スバルは走りにこだわる会社です。
とにかく車好きの為の会社と言ってもいいかもしれません。
車好きではない人にとってあまり馴染みがないかもしれませんが、スバルの車は人気で特に最近のSUVの人気というのが世界中で沸騰していまして、日本でもシェアが高まっていますし、アメリカや中国でもSUVが一番売れるという状況になっています。
もともとSUVをこだわって作っていたスバルに対して、人気が高まってアメリカでは「スバリスト」というスバルの車に熱狂する人達も生まれています。
このように独自路線を走っていながら今はブームで高い収益性、あるいは成長性誇っていました。
最近では自動車のリコールも発生したりしてちょっと冴えない所もありますが、このような独自路線というのは貫いていくんだろうなというところではあります。
【スズキ】
これはもう皆さんご存知の通り軽自動車や小型車に特化している会社です。
何より安いです。
最近、売上台数のトップに立つのはほとんど軽なので、軽自動車がどんどんシェアを高めるに従ってこのスズキの力というのも強くなっています。
またその小型車を安く作る技術というのを持って、インドに進出した結果今やインドのシェアは4割を誇るという結果になっています。
これはものすごい事です。
インドというと10億人以上の人口を抱えているので、そこで4割のシェアを持っているという事はとんでもない事で、更に言えばここから経済成長が続くに従って人々車を買うという事なると、成長性も期待出来るという事になります。
もちろんまだ経済力そんな豊かではないので安く車を作らなければなりません。
しかも頑丈というのがもちろん一番好まれるので、その力をスズキは持っているといえます。
だからこそトヨタが今、5%弱出資していますが、かつてから仲が良いという事もありまして常にラブコールを受けている段階という事です。
価格競争力なら負けない、小型車を作る技術ではどこにも負けない会社という事が出来ます。
さてここからは結構厳しい会社という事になります。
【日産】
リーフを作った電気自動車の先駆けでもあって、これまでの歴史を振り返ると一度は潰れかけましたが、カルロス・ゴーンの下で強烈なコストカットを行いました。
一方で最近の業績は販売台数を伸ばす事を最大限に重視したハリボテだったという事が出来ます。
フリート販売といってアメリカではタクシー会社、あるいはレンタカー会社に大量販売する事によって、販売台数を伸ばす事が出来ていたのですが、それらで大量に売った物というのはすぐに中古車市場に出回りやすいです。
そこで安い価格で大量に日産の中古車が出てくるという事になると、ブランド価値自体が毀損してしまう事になっている訳です。
今の日産はそうやってブランド価値を毀損して、見かけ上の売上だけを立てて業績を増やしているように見えました。
けれどもゴーンがいなくなってハリボテが意味もなくなってしまいましたし、その反動というのが今の巨大な赤字という形で出てきています。
またルノーとの関係も微妙でしてそもそもゴーンを派遣してきたのが、この3分の1以上の株式を持つ大株主のルノーです。
ルノーが日産系列の利益をグループとして、取り込んでいきたいという思いからルノーからの指示が資本関係上強くなってしまっていますし、そもそもこのルノーとフランス政府の力がものすごい強い会社になっていて、もはや国vs国との軋轢を生むような会社になって、とても難しい状況になっています。
このような状況から今どうしても出口が見えない状況になってしまっています。
【三菱】
三菱は日産が3分の1以上出資した事によってルノー・日産グループに入りました。
三菱というと悪路や急な坂に強い車を作る技術を持っていて、東南アジアや欧州といった道の険しい所に人気があります。
一方で業績を見ますと営業利益率が低かったり、技術を持っていながらそれを必ずしも安く作る事で今一つですし規模がかなり小さいというところもあります。
あの規模はコストの削減の一つの大きな要素になりますが、規模がないという事でコスト競争力もなく、利益率が低いとルノー・日産グループで他の部品の共通化などをするとコスト競争力ついてくるかなとも思いますが、そうなると今度は車自体の独自性が失われてしまうという事にもなり兼ねないので、結構難しいところです。
ルノー・日産グループの中で飲み込まれて埋もれてしまうという危険性は十分にあると思っています。
そもそも今の時点でも利益が出ている会社ではありませんから、厳しい状況にあると考えます。
【マツダ】
マツダは近年はSUVなどに傾注して人気でしたから、売り上げ伸ばしていた側面もあって、エンジンに強みがある車好きには好きな人も多いという会社です。
一方でこの会社それ以外の特徴というのがあまり見当たらなくて、一時はマツダ地獄といわれるような事がありました。
マツダが値引き販売をして車を売る結果、買取価格も安くなってしまいました。
買い取る価格があまり付かないという事になると、新車を買いたくても安い車しか買えなくて結局値引き販売をしてくれるマツダで買うしかない、つまりマツダから延々に逃れる事は出来ないといったような事が起きていた事がありました。
それはつまり何を意味しているのかと言うと、必ずしもブランド力が強くなかったという事を意味しています。
ブランド力確立していない今、車好き以外のニーズがあるのかというところには疑問を覚える会社です。
業績的にもあまり振るわない事になっています。
自動車がコモディティ化する!?
冒頭で申し上げました通りテスラがトヨタ自動車の時価総額を抜き、自動車メーカートップに立ちました。
トヨタがこのようにはずっと横ばいで株価推移する中、テスラがここ最近特に新型コロナショックの後、株価を上げて500円から1500円ぐらいに上がり3倍になりました。
時価総額に関してはトヨタが今22.5兆円ぐらいありますが、テスラが29兆円という事で逆転してしまったという事になります。
しかしながら売上に関してはテスラはトヨタの10分の1しかありません。
バリエーション的に考えたらやはりテスラどう考えてはも割高といったところではあります。
ただ一方で将来に対する期待というものが込められたものでもあります。
テスラというと電気自動車や自動運転車モデル3などの量産を目指していまして、実際に自動運転車を本格的に売っているのはテスラだけです。
しかもこれまで黒字にならなくて苦しんでいましたが、直近の四半期が黒字化するなど明るい兆しも見えつつあります。
これが今後大きく変革していくにあたって自動車業界のAppleになるのではないかと見られています。
電気自動車は部品を組み立てるだけなので、考えようによっては今後かつてのPCやスマートフォンのような製品になってしまうのではないかという事が考えられます。
これから自動車業界で起こる事としては電動化、自動運転化、つまりコモディティ化を意味します。
このコモディティ化というのは部品や設計図さえあれば誰でも作れてしまうというような状況です。
実際スマートフォンなども中国の会社でも簡単に真似をして、AppleのiPhoneのパクリのような商品を出してしまえたというような事があります。
蓄積した技術とブランド力が大事
つまり今後はPC、スマホのようになってしまうのではないかという事が懸念されています。
その中で生き残っていく為にはやはり競争力がないといけません。
日本の電機メーカーが富士通やNECなど色々作っていたんですけれども、多くは撤退してしまいました。
これはパソコンがコモディティ化してしまったからですし、かつてガラケーなどでも各社出せていたのですがもはや日本メーカーはほとんど残っていなくて、iPhoneと中国製のAndroidというような状況になっています。
自動車産業に関しても同じようになってしまうのではないかと考えられます。
一方では自動車というと人の命を預かるものですから、そう簡単に動かないというような考え方もあります。
そこで重要になってくるのはやはりこれまで培ってきた技術というのは間違いない訳です。
安全性に対してももちろんですし、途中で故障があると非常に困るものなのでそのノウハウを蓄積された自動車メーカーというのは大切な訳です。
一方で多少の技術は持っているかもしれませんが、中途半端な位置づけの車というのは自社の車はもなかなかこの自動化の波では付いていけず、成長もなければどんどんシェアを落として衰退してしまうというような危険性があります。
そんな中で私達が投資すべきなのはもちろん自らのブランド力をもって、自らの製品を販売し続けられる会社です。
あるいはiPhoneのカメラにはソニーのセンサーが採用されていますが、独自の技術を持った会社というのは部品の供給という形になるかもしれませんけれども、そこで生き残っていく可能性もある訳です。
そのような観点で買ってもいいかなと思えるメーカーを挙げるとするならば、やはり本命はトヨタという事になります。
トヨタのハイブリッド技術というのは当然電気自動車などにも応用できる話でしょうし、安全性や長く頑丈に使えるという技術はここに集約されている訳です。
ガソリン車にしても丈夫で長く使えれば当然コストパフォーマンスも良いという事になるので、新興国でも根強い人気があります。
トヨタがこのハイブリッド技術で人気を伸ばし続ける限り、電気自動車でそのコストパフォーマンスで追いつける日はまだ遠いのではないかと考えられます。
対抗となるのがスズキです。
コスト競争力を持っている会社ですが先ほど申し上げたように、インドで非常に高いシェアを誇っています。
この成長市場に4割というシェアに軸足を置いていれば、余程おかしな事にならない限りこの市場の成長に従って伸びていく事が考えられます。
そこで脅威となるのは中国の企業です。
より安い価格でインドに輸出、あるいは現地生産する事で伸ばしていくという事が考えられますが、インドと中国は少し政情不安なところもありますので、そこでやはり日本の企業というのは優位に働く可能性があるという事です。
因みに、海外という話に関してはトヨタも最近中国で正直上手くいってなかったのですが、徐々にシェアを伸ばしつつあるので、それも注目出来るところではあります。
大穴としては日産を挙げさせていただきたいと思います。
当然目先の動向は先ほど出口がないと申し上げましたけれども、当面厳しい状況にある事は間違いありません。
けれどもゴーン改革ではないですけれども、柵を断ち切っていく事が出来て、リーフという電気自動車持っているので、これをテスラレベルにしていく事が出来れば、今株価は下がっていますが、そこからを再び大きく上げていける可能性があるという事が出来る訳です。
ただし私としてはお勧めはしません。
というのも今の日産の決算説明資料が出ていて、ゴーンがいなくなって事業構造改革計画というのを立てているのですが、ここに出ているのは収益を確保した着実な成長だとか、日産らしさだとか書かれているんですけれども、正直のっぺりとした目標にしか見えません。
改革をやるからにはもっと思い切った政策が必要になってきます。
そう考えると今のままの日産にはまだ決して投資出来る段階ではないと考えます。
いかがだったでしょうか?
自動車業界は投資先としても人気のあるところなんですけれども、ここ数年ずっと難しい状況に置かれています。
景気が悪くなると自動車売れなくなるという事もありますので、今焦って投資するような先はなかなかないと考えます。
一方で伸びる企業が割安に放置され続けるという事もあり得ますので、これはという光る原石のような物を見つけたら、 その時は投資する時だと考えます。
そういった観点で今後の自動車業界の動きをよく眺めてみてください。
プレゼント①『株式市場の敗者になる前に読む本』
プレゼント②『企業分析による長期投資マスター講座』第一章
プレゼント③『YouTubeプレゼン資料』
メールアドレスを送信して、特典をお受取りください。
※個人情報の取り扱いは本>プライバシーポリシー(個人情報保護方針)に基づいて行われます。
※送信したメールアドレスに当社からのお知らせやお得な情報をお送りする場合があります。
※上記は企業業績等一般的な情報提供を目的とするものであり、金融商品への投資や金融サービスの購入を勧誘するものではありません。上記に基づく行動により発生したいかなる損失についても、当社は一切の責任を負いかねます。内容には正確性を期しておりますが、それを保証するものではありませんので、取扱いには十分留意してください。
コメントを残す