【ソフトバンクG】第1四半期は1.2兆円の黒字。復活の「のろし」は上がったか?決算のカラクリと適正株価を計算します

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以下、文章化したものです。


今回はソフトバンクの決算についてお話ししたいと思います。

ソフトバンクの決算第1四半期で1.2兆円もの黒字を記録しました。

ついこの間まで大赤字という決算でしたが、ここに来てこれだけの黒字を計上出来るという事は復活の前触れなのではないかと見えます。

しかし実際に見てみるとそうとは言い切れない側面があります。

ソフトバンクの株価がこれから上がるのかどうかという事についてもお話ししたいと思います。

四半期の業績はもはや無意味?

読売新聞の記事に、『ソフトバンクグループ、巨額赤字から一転、4〜6月期は最終黒字1兆2557億円』とあります。

四半期で1兆円を超える純利益という事なので金額としてはとんでもない事です。

一方で、昨年度は赤字になるなど決して業績が思わしくありませんでした。

この1.2兆円の中身についてもっと深く決算説明資料から見ていきたいと思います。

これが決算の中身です。

Tモバイルはもともと『Sprint』というアメリカの携帯会社を持っていましたが、SprintとTモバイルが合併してTモバイルの株式になり、その後Tモバイルの主要株主であるドイツテレコムに売却したことによってSprint時代からの売却益を計上したものが、ピンクで示されているうちの4219億円ということになります。

同様に合併によって生じた株式交換差益という会計上の利益が7364億円となっています。

一番上の1296億円もその取引で生じたもので、ピンクで示されている売却益というのは2回目はないので一時的な利益になってしまいます。

それ以外の利益を見るとソフトバンク事業で2592億円、ビジョンファンド事業で1296億円という必ずしも大きくない数字となっています。

一方ではこのアリババ先渡取引に係るデリバティブ損失も難しいものになっています。

こういった金融取引上の損失もを計上しています。

利益というと毎期毎期積み上げていくものですが、ソフトバンクの利益というともはや投資会社になっているので、株式の売り買い、あるいは評価益つまり株式の時価が高くなったり安くなったりする事で、大きくこの業績がぶれてしまいます

つまりこの四半期のような短期の業績を見ても、もはやほとんど意味がないとを言っても過言ではないかもしれません。

私達が企業の決算を見る時にはその利益が今後も続くのかという事を考えます。

そういった観点で見ると今後も続くものという事を考えると、このソフトバンク事業とビジョンファンド事業は一時的な評価益という部分もありますので、これらから良くておよそ3000億円程度という事で、実はこの会社は継続的に利益を出す仕組みというものが整っていません

もはや利益で評価するというのはかなり難しいです。

ニュースなどでは赤字とか黒字とかが取り上げられていますが、もはやそこで見る意味は投資家としてはほとんどありません。

資産の中身が鍵

では一体何を見るのかというと、バランスシートです。

つまりどんな資産を持っているのかという事を見なければなりません。

ソフトバンクはもはや投資会社なので、アリババやソフトバンクの携帯通信会社、あるいは半導体のarm、ビジョンファンドといったところを持っていて、これらの株式の価値を積み上げると26.3兆円になると言われています。

それに対してこの純負債つまり借金を引いた残りの21.7兆円、これがソフトバンクの株式の価値だと孫社長も言っています。

この21.7兆円に対してソフトバンクの時価総額は13兆円です。

つまり本来あるべき価値に対して今市場で評価されているのが13兆円なので、かなり割安なのではないかという風な見方をする人も少なくありません。

実際に孫社長も、うちの会社の株は割安に評価されていると憤りを隠さない訳です。

しかし実はこういうケースは少なくなくて、持っている資産が株式である場合というのはあまり評価されにくい側面があります。

具体的なケースとしては、宝ホールディングスというお酒の会社が、医薬品会社のタカラバイオの株式を持っていて、タカラバイオは今すごく株価が調子良く上がっています。

宝ホールディングスのタカラバイオの保有株式分は60%くらいあるのですが、タカラバイオの時価総額が上がったがゆえに、保有株式分が宝ホールディングスの時価を越えてしまったというケースもあります。

また京成電鉄がオリエンタルランドの株式をおよそ20%を持っているのですが、それに対してその保有株の時価よりも京成電鉄の時価の方が安く放置されているという事になります。

これに合わせてソフトバンクグループと先程の主なところではアリババという事になります。

親会社が財布で、子会社がその中に入っているお金だとすると、財布とお金のセットで13兆円で売られているのに、蓋を開けてみると中には26兆円ものお金が入っているという状況に一見見える訳です。

ではその13兆円は少なくとも20数兆円までは上がってもいいのではないかと見えるのですがそう簡単にもいきません。

なぜ評価されない?

時価総額が上がらない理由として3つ挙げます。

一つ目は株価が水物であるという事になります。

先程現金が入っていたらというお話をしましたが、現金だったらその価値は動かないので間違いなくそれだけのを物があるのですが、中に入ってるのが株なのです。

株の価値というのは日々動くものです。

今、20数兆円あったかと思ったら急に半額になってしまうと、それは半額の価値しかないという事になって、実際やはり13兆円で正しかったのではないかというような考え方もできます。

このように株価が動きやすい故に財布の中に入っているお金というのは、あまり評価されない側面がある訳です。

二つ目は株主還元期待が低いということです。

株式を持っているとソフトバンクグループや自分の子会社だったりする場合、グループとして成長する為に必要な株だったりします。

するとその株はすぐには売れないという事になります。

売れない株を持っていても親会社の株主に対しては、いつまで経っても配当などの形で還元される事がありません。

実際にソフトバンクグループもこうやって持っている株式の価値は伸びていると言いながら、配当はあまり伸びていないというような状況があります。

この配当というのは株主が最終的に会社からお金を貰う場面なので、それが期待出来ない、あるいはだいぶ先になってしまうという事になると、それに対する評価は現れにくくなります。

持っている資産を今すぐ現金化して株主に配ってくれたら、株主はものすごく大喜びな訳です。

そういう所に着目して投資を行うのが村上ファンドなどのアクティビストと言われる人達です。

このアクティビストは、持っている資産を売ってしまってそれを株主に配当を自己株式取得などの形で還元すれば、株価が少なくてもそこまでは上がるという風に言って、企業の株を買って色々文句を付けてくる訳です。

また別の形ではそれだけ安い物が市場にあるのだったら、いっそその会社ごと買ってしまって後からその不動産などを売って、自分の物にしてしまえばいいやというように考える人もいます。

それが起きたのがついこの間のユニゾホールディングスのケースです。

私も買っていたのですけれどもこの会社は不動産会社で、持っている不動産に対して株式の時価が3分の1ぐらいの時価で評価されていました。

800億円出せば2400億円分が自動的に得られるという状況でした。

実際にこれに名乗りを上げたのが旅行会社のHISだった訳です。

HISが買うと、ファンドが更に目を付けてこの会社安いという事で次々に買収合戦になります。

最終的に従業員がファンドを設立して自ら株式を買うEBOという形を取ったのですけれども、この中で株価は2000円から6000円と3倍になって最終的に保有不動産分の時価ぐらいは実現したという事になります。

但し同じ事がソフトバンクで起こるのかというとその可能性は非常に低いです。

ソフトバンクグループは孫正義さんがまだ株式を20%ぐらい持っていますし、そもそも時価が13兆円ですから、過半数取ろうと思っても6.5兆円ぐらいのお金が必要になります。

それ程のお金を持っている会社やファンドというのはなかなか無いので、かなり難しいという言わざるを得ません。

三つ目は孫(損)ディスカウントです。

まさにその孫さんについてですが、例えアリババをの株を沢山持っていてそれは一部売って現金化したとしましょう。

でも孫さんの事ですからそれを全部株式配当に回してしまおうとはなかなか考えないと思います。

それよりももっと将来性のあるWeWork、あるいはOYOなどの新興企業に投資しようと思うかもしれないです。

しかしこれはリスクのある行為ですし、ついこの間まではソフトバンクはこれでかなり苦しめられました。

同じような事を繰り返してしまうのだったら、これは投資家にお金をドブに捨ててるというような疑念を抱かせてしまって、それ故持っている株式の価値よりもソフトバンクグループ自体は安く評価されているという側面も少なからずあります。

ソフトバンクGの適正株価

このようななかなか上がりにくいソフトバンクのグループの適正株価はいくらぐらいかというところを計算してみたいと思います。

方法の一つとしては純利益で考えられると思います。

冒頭で利益は継続する物にこそ意味があるという話をしました。

ではこの会社、投資会社ではありますが連結会計を通じて、継続的な利益というのはある程度を見積もる事が出来ます。

主要子会社がソフトバンクの携帯会社だったり、あるいはSprint、それからアリババという事になります。

これらの純利益を持ち分比率に対して按分して、足し上げる事で継続的な純利益というのを計算する事が出来ると思います。

先程あげた宝ホールディングスや京成電鉄なども、持っている時価というのはありますが、それ以外に自ら出す会計上の純利益という形のPERで評価されたりする訳です。

PERで見るとソフトバンク通信会社については5000億円の純利益を毎年出して、それの66%持っているので3300億円グループに所属するという事になります。

またアリババも2兆円の純利益に対して29%ですから5800億円の純利益です。

更にTモバイルは24%を持っています。

これが4000億円に対して24%ですから、960億円これらを足すとこれらだけでもおよそ1兆円の純利益で、あるいはarmといった半導体会社があるという事を考えると、1兆円に対して時価総額が13兆円ですから割り算するとPER13倍という数字になります。

ここまでくると13倍だったらわりと平均的な水準です。

これに対して保有株式の時価が21兆円ぐらいなので、21兆円と13兆円で結局この間ぐらいがソフトバンクグループの妥当な時価総額なのではないかという事になります。

つまり良く上がっても2倍は今行かないのではないかというぐらいの水準です。

ではここから上昇するにはどうしたらいいのかという事ですが、まずは資産売却を行って、目先で株主還元も行ってしまえば、少なくとも先程言ったようないつ還元されるかわからないといった投資家の不安を払拭する事が出来ます。

これで上がったのが直近数ヶ月です。

資産売却4.5兆円と自己株取得1.5兆円という発表をしました。

それを受けて株価は4500円程度だったところから最大7000円ぐらいまで上がりました。

この株主還元というのはソフトバンクグループの株価にとって、大きなプラスになる事なので今後も着目していく必要があると思います。

端的にいえば文句を言わせない程の投資成果をあげるという事が必要になります。

目先、WeWorkやOYOが必ずしも素晴らしいとは言い難い投資の失敗に近いものを生んでしまっています。

これらではなくて例えばアリババのようにすごく株価が伸びる成長企業に投資出来て、その成果が出た時には孫さんの信頼が増して株価が上がるという事が考えられます。

一方では変な物に投資すると思われていますから、そもそも投資事業を辞めてしまって粛々と既存事業の改善に努めるという事をすれば、もしかしたら既存株式ぐらいの価値は評価されるかもしれないというのが期待としてあります。

目先この決算を受けて株価はどちらかと言うと下落傾向にあります。

これは相場全体の動きとも切っては切り離せないものなんですけれども、大体株価としては良くて1万円くらいかなと思います。

1万円から6000円ぐらいの間をうろうろするのではないかというのが私の見立てです。

最悪期は3月頃です。

WeWorkがめちゃくちゃになって更にはコロナショックを受けてという時期が一番大変な時期だったと思います。

これを見ますとビジョンファンドの価値というのは、トータルの価値の一部に過ぎないので、結局鍵を握るのは一番大きいアリババという事になります。

これらの動向を見て今後ソフトバンクグループ上がるのかどうかを見て行きたいと思います。

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