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以下、文章化したものです。
今回はホームセンターについてお話ししたいと思います。
この新型コロナ禍でお家で過ごす機会が増えた事で、ホームセンターがにわかに注目を集めています。
アウトドアやDIYなどの需要も高まって、業績も株価も右肩上がりで伸びているのですが、一方で株価は一見割安にも見える数字に収まっています。
今これらの銘柄が買いなのかどうかという事についてお話しします。
なぜ割安?「業界地図」で探る
新型コロナを受けた3月、あるいは4月以降の既存店売上高の推移です。
今回は、DCMホールディングス、コーナン商事、コメリという大手3社を取り上げました。
DCMホールディングスが11.5%、コーナン商事が14.7%、コメリが13.8%と非常に大きな伸びを示しています。
これに伴って利益の方も大きく上乗せされているという状況です。
当然株価も上昇して、過去6ヶ月の株価推移を見ますと、DCMホールディングスがプラス40%、それからコメリがプラス60%、そしてコーナン商事がプラス80%と上昇している事がわかります。
一方でこれだけ上昇したにも関わらずPERの水準を見ますと、DCMホールディングスが13.7倍、コーナンが10.3倍、コメリが14.3倍と伸びている企業としてはかなり低い水準に抑えられています。
PBRに関しても1倍を下回って、いわゆる割安株の条件を満たしています。
しかし足元でこれだけ調子が良いので、もっと株価が上がって高く評価されてもおかしくないのではないかと思います。
こういった時に考えるべきは、何故これだけ割安な数字に抑えられているのかという事を深追いして考える事です。
まず業績を見てみますとDCMホールディングスは売上高はほとんど伸びていません。
ちなみにこのDCMホールディングスというと、持ち株会社でわかりにくいのですが、お店の名前としてはカーマ、ダイキ、ホーマックという3つが統合して出来た会社です。
その後もM&Aなどによって規模を拡大させてきましたが、一方であまり売上高が伸びていないという状況が続いています。
また、営業利益に関してはここ最近上昇基調で右肩上がりです。
コーナンはもっと好調で売上高も伸ばしていますし、利益に関しても過去最高の水準で推移しているという状況です。
それからコメリも一時期利益が落ち込んだという事もありますが、売上高そのものは右肩上がりに成長を続けていって、これだけ見るとどちらかというと成長銘柄と捉えられてもおかしくありません。
これに対してPERは10倍とか13倍という数字はやはり割安だと思われます。
ただしここで気になるのはマクロ経済、つまりもっと全体的な動きという事になります。
こういった時に頼りになるのが業界地図です。
この業界地図は株を分析する人なら必ずと言っていいほど、手元に持っていて欲しいものです。
そこに書かれている事が、ホームセンターは店舗数はものすごく増えていますが、一方で市場規模自体がもはや頭打ちになっています。
店舗が増えて市場が増えないという事になると、店舗当たりの売上というのはどんどん減ってしまうので、これはホームセンターの経営にとっては厳しい状況になります。
つまりこの割安な理由として市場が飽和しているという事で、これから激戦になってしまい、価格競争などにに巻き込まれてしまうという事が考えられるので、そういう意味で投資家は不安視しているという事が挙げられます。
またそもそも現時点においてもある程度は価格競争があり利益率が低いです。
どの会社も営業利益率にして5%程度とを決して高くない水準です。
ここに対して今勢いを伸ばしているのがドラッグストアで、店舗もどんどん増やしています。
ドラッグストアとホームセンターと言うと、市場がかなり被ります。
薬や日用品、ペット用品なんかもその範疇に入ると思います。
今でも利益率が低いのに、競争によって更に下がるという事になると、売り上げが伸びたとしても利益が成長しないというようなところになってしまいます。
また消費増税後の落ち込みの懸念というのも大きいです。
先程のところに戻ってみますと例えばコメリで見ると非常にわかりやすいのですが、前回の消費増税があった2014年4月なんですが、それに向けて売上高、利益ともに一度大きく伸びました。
しかしこれの一部は消費増税前の駆け込み需要だったという事がわかります。
だからこそ翌年には売上高、利益ともに大きく減らしてしまっています。
コーナンに関しても似たような状況があります。
そして目下昨年2020年2月期、あるいは3月期にいずれの会社も利益が高いところを記録していますが、昨年10月に消費増税があったので、そこから同じようにやはり駆け込み需要とその反動という事が考えられます。
例えば去年の業績で見た時のPERが仮に低かったとしても、今年利益が下がってしまうとしたらその数字が低くても決して割安ではないという判断が出来る訳です。
「新しい日常」に入り込めるか
この新型コロナショックが起きる前はホームセンターは厳しいという事で、割安に据え置かれていました。
けれどもコロナで大きく流れが変わってきた訳です。
冒頭でも申し上げました通りマスクや除菌アルコールなどを求めて、ホームセンターに人が殺到しました。
お店などではビニールをあちこちに貼らないといけなくなったので、そういったビニールなども売れているという事があります。
そして在宅勤務をお家で過ごす時間が増えた事によって、DIYあるいはのインテリア、収納用品なども売れる事になって今にわかに脚光を浴びて売上高を伸ばしています。
ホームセンターの多くは非常に広いです。
広い店舗を持っていて何が良いかと言うと、密になりにくいです。
だから家族連れでもスーパーなどに比べても比較的気軽に行く事が出来ます。
少し見て回るだけでも色々物があるので楽しいというのも間違いありません。
したがってここで人々の流れが変わるのかどうかという事が、今後のホームセンターのを鍵を握ります。
大切なのはホームセンターが人々の日常に入り込む事です。
例えば東日本大震災後のコンビニエンスストア考えてみてください。
東日本大震災では物流が止まってしまって物が不足するという状況がありました。
そんな時に強い物流網を発揮して、身近にあって商品を買える場所がコンビニエンスストアでした。
東日本大震災を機に、コンビニエンスストアは大きく業績を伸ばし、株価を伸びたという事例があります。
ホームセンターがこの新型コロナショックを受けて、人々の動きが変わった事によってその恩恵を受けられるのかどうか、というのが各社の天下の分かれ目という事にもなってきます。
成長するホームセンターの条件として参考になるのが、アメリカのホームデポの事例です。
ホームデポというとこのようにものすごく大きな売り場に、大きな大工用品などを大量に安く売っています。
これでいて売上高11兆円世界最大のディスカウントストアですし、その中で営業利益率14%もの高い数字を誇っています。
先ほど日本のホームセンターの営業利益率が5%程度と言いましたが、それに比べても高い数字となっています。
これぐらいになるとPER今25倍ぐらいあるのですが、高い評価をされるという事になります。
つまりホームセンター成功の鍵はとにかく規模を拡大しないといけません。
日本のホームセンターというとまだ数千億円単位なんですがホームデポは11兆円です。
11兆円もあれば当然『バイイングパワー』、物を買う力というのが強くなるので、仕入先に対して大量に買うから安くしてよというような形で有利な条件を引き出す事が出来ます。
また名前も知れているのでお客さんに対する宣伝というのも、より効率的にになってきます。
その延長線上にあるのがプライベートブランドです。
今ホームセンター各社ともプライベートブランド強化しているのですが、何故かというと、結局仕入れて売るよりも、より低い原価で商品を作る事が出来る訳です。
そのメーカーにおける広告宣伝費なども必要なくなります。
ホームデポだったらホームデポ商品というような形で売って、ホームデポのこの商品が人気だということがあれば、人々が自然に集まってきて高い利益率で物を売る事が出来るようになります。
そしてもうひとつはWEB対応です。
アメリカでは、今だと特にAmazonによる小売業への侵略がどんどん続いていまして、百貨店などはこの新型コロナ禍でも潰れたりしてしまっています。
そんな中でホームデポは影響を全く受けていないという訳ではないですが、かなり低い数字にを抑えられていて、むしろ業績を伸ばしている会社の一つです。
何故かというと早い段階からWEB対応を進めていて、ホームデポにおいてあるような大型の商品というのはAmazonでは取り扱いにくい訳です。
そういった所で早くからWEBの対応を進めて、利益率を下げる事もなく、今の業績を残せているというのが、ホームデポの成功のを事例という事になります。
トップを走るのは非上場のカインズ
じゃあ日本でこのような事を先進的に行っている企業があるのかというと、実は一つあります。
それが業界首位のカインズです。
今3つ挙げたこのDCM、コーナン、コメリを上回って業界一位になっています。
じゃあ何故先ほどの分析に入っていないのかという事になると思うのですが、実はこのカインズ、残念な事に上場していません。
だから私達が株を買う事は出来ません。
ただしこのカインズはものすごく注目すべき対象で、実はカインズはスーパーのベイシアグループです。
関東の田舎の方に行くとも必ずといっていい程このスーパーのベイシアがありますが、ここがものすごく安く商品を売っています。
その成功の鍵が流通がすごく上手だという事が言われています。
この流通グループの中に入っているのがカインズであって、もっと言うと今絶好調のワークマンも実はベイシアグループです。
ワークマンの株をカインズの創業者や、ベイシアカインズが直接持っていて、実質的に過半数を持っているという形のグループになっています。
ワークマンが成功した鍵というのも、このベイシアグループのを理念と言ったところにもあるでしょうし、もしカインズやベイシアといったところが上場していたとしたら、この新型コロナの状況を追い風にして、ますます成長を遂げたという事が考えられます。
そういった意味で非常に惜しいです。
ただし私もホームセンターは他の会社についても注目していて、やっている事といえば規模拡大を目指しているというのは間違いありません。
DCMもよくM&Aなんかをしていますし、コーナンについても同じような形で行なっています。
プライベートブランドの拡充というのはもちろんですし、最近利益が向上してきたのもこのプライベートブランドが増えたからという側面もあります。
WEB対応が一番進んでいるのはやはりカインズが圧倒的と言える状況なのですが、その他の会社も徐々に始めているというところであります。
惜しむらくはまだ分散しすぎていて十分な規模、例えば売上高1兆円ぐらいは欲しいところですが、まだいずれの会社もそこまで達していないという状況があります。
しかしながらこの中で良い経営をして、将来のホームデポのような会社になるところがあれば注目に値する思いますし、またこの株価 、PERが低いという事も考えると、少なくとも大きく値下がりするというようなリスクはかなり抑えられるのではないかと考えます。
そういった観点で私はこれからの行方に注目してみたいと思っています。
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