ドコモ完全子会社化!4兆円TOB、40%のプレミアムで損するのは誰か?裏に潜む政府と証券会社の思惑

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以下、文章化したものです。


今回はNTTがNTTドコモを完全子会社化したという話について解説したいと思います。

NTTがドコモの株を全て買い上げるという事で、今NTTドコモの株式を持っている人にとっては、高く買い取ってもらえるので非常にラッキーだったという事が言えます。

一方ではその裏で損をしている人が必ずいます

それが誰かというと私はNTTの株主だと思います。

その理由をこれから解説したいと思います。

買収劇の内幕

もともとNTTはNTTドコモの株式を66%保有していました。

ほぼ3分の2という事なので実質的には支配していたという事にはなります。

しかしそれでも子会社が上場しているという事は、子会社の少数株主がいて、その少数株主にも説明をしながら経営をしていかなければならないという事、更には親子関係の間で軋轢があったりもして、必ずしもスピーディなグループ経営が行える体制とは言えない部分がある訳です。

そういったものの解消を目指して、かつては親会社から独立して上場したNTTドコモを、再び完全子会社化するという事になっています。

その買収金額は4兆円にもなります。

過去にもなかなか例を見ない巨大な買収というような話になります。

NTTはドコモの株式を3900円で買い取るというふうに発表したので、株価はそれに向けて急騰しまして、今3885円という3900円近い金額で取引されているという事になります。

ドコモを持っている人はほぼ間違いなくNTTに3900円で、買い取ってもらえるという事にはなります。

何故ならすでに66%の株式を保有していて、このTOBによって発行済み株式の0.45%だけ買い増せば、このTOBは成立すると言っています。

またこの直近の株価に比較すると40%の上乗せ価格で、いわゆるプレミアムというのですが、40%もの上昇を見ればもはや株主はみんな売りたいという事にになります。

ですから株主の方はこうやってTOBに応募するという形になります。

ただTOBに応募するには、今回三菱UFJモルガン・スタンレー証券の口座を開かないといけないという事になるので、それが面倒だという事は多少割り引かれるかもしれませんが、3885円で市場で売るという事も出来ます。

ただTOBに応募しなくてずっと持ち続けていたりしても、やがては強制的に3900円で買い取られるという事になるので、もはや株主である人は何の心配もしなくていい訳です。

この買収の目的を、NTTは以下のように発表しています。

NTTドコモの競争力強化、それから成長というような事を言っています。

5Gが始まったところですが、5G・6Gという事が始まってきますし、また今コロナ禍でリモートワークとかDX(デジタルトランスフォーメーション)とかそういった動きがどんどん加速しています。

それに対してグループ一体となってお客さんに対して、営業をかけるという事をしないと今後は過酷な競争を乗り切っていけないのではないかという風に考える訳です。

実際にKDDIとかソフトバンクはこのコロナ禍のリモートワークを機に、どんどん法人に光通信などと携帯通信を一緒くたにして営業をかけていたりしてます。

このまま行くとこういった動きにはドコモNTTグループが、乗り遅れてしまうという事を懸念したのではないかという風に思います。

またもっと長期的な事を考えれば様々な技術開発などしないといけませんので、それは一体となって行った方がいいという事になる訳です。

更にここにきて大きな話となっているのが、菅総理の誕生という事になります。

菅総理は一番の政策として携帯電話料金の値下げという事を言っています。

これがこのNTTドコモの完全子会社化の動きを加速させたのではないかと見られます。

というのもこの買収自体はコロナ禍の4月から検討されていたという事が今回の発表資料に出ているのですが、菅総理誕生を受けて、今にもやらなければいけないというような動きがあったのではないかと考えています。

その理由が2つあります。

一つはこの料金の値下げという事がもちろんあります。

というのもNTTは筆頭株主が財務大臣32%という事となってる訳です。

もともと電電公社ですから、国が民営化して売り出したというのがこの会社の始まりという事になって、まだその株式を全て売る事はなく32%を保有しています。

それだけの筆頭株主なので政府の意向には逆らえないような人達がいるところですから、国が値下げするとを言ったら値下げしないわけにはいかないと考えられます。

一方でドコモはいかにも上場会社として、値下げに関してはのらりくらりとかわしていた部分があります。

けれどもこの買収と政府の意向も受けて値下げが加速するのではないかと見られています。

いくつか新聞記事を見ましても、ドコモがなかなか煮え切らずに料金を下げないところをしびれを切らして親会社であるNTTが買収をかけたという風にも言われています。

となるとこれからこの料金を下げる可能性の高い、ドコモを買収したNTTというのが最終的には収益の面で損を被ってしまうかも知れませんし、会社の損というのは株主の損なので結果、NTTの株主が損失を被るという事になり兼ねません。

またもう一つこのNTTの株主が損をしているのではないかと考えられる点がありまして、それがNTTドコモの株価の推移です。

これを見ますと8月末に安倍総理が辞任を発表し、菅さんがいよいよ総理になるのではないかと言われている時に、過去にも携帯料金の値下げという話をしていましたから、そこから携帯会社の株は下落していきました。

先ほど4月からこの買収の検討していたという事ですが、実際8月頃からいくらで買収するのかというような話を始めたそうです。

それが8月11日に3400円と、それから25日に3,600円、そしてこの株価が下がり始めてから出した数字というのが9月2日に3,750円、9月17日に3800円、そして最終的に9月25日に3900円という金額が決定しました。

ここにおかしな点があります。

というのも、目下この菅総理の誕生によって株価が下がっている中で、このTOB価格というのは交渉の中でどんどん上がっていっている訳なんです。

確かにこのTOBをかける時というのは現在の株価に対してある程度の上乗せ価格支払わないと、買い取られる方の株主に失礼だという事になるので、上乗せする事自体は問題ないのですが、ただこの株価が下がっている中で、あえて高い価格を提示するというのがでちょっと状況がよくわからない訳です。

しかも菅総理の単純の誕生によって外部環境が悪い中で、これが上がっていくというのはどうしても不可解と思わざるを得ません。

すでに66%の株式を持っていて、どんな価格であってもこのTOB成立する事がほぼ確実な案件です。

だったらわざわざ高いプレミアムを支払わなくても、現在の価格に少しだけでも上乗せして、この価格なら3000円くらいにしてしまえば、おそらくほぼ確実にTOBを成立したと言える訳です。

当然40%のプレミアムで買い取ってもらえたドコモの株主は得をしたという事になりますが、一方で誰がそのお金を払うのかというとNTTが払うので、そこで利益が減ってしまったのを誰が被るかというと最終的にはNTTの株主という事になります。

じゃあ何故こんな高い価格で買ったのかというと、証券会社が関係あります。

買収という行為には必ず証券会社が絡みます。

当然証券会社も儲けなければいけないので、TOBなど買収のアドバイスによって手数料を得るわけですが、その手数料体系が今回どうなってるかわかりませんが、一般的にはこの買収金額に対して何パーセントという計算方式をとります。

したがって証券会社としてはこの買収金額が上がれば上がる程入ってくる手数料が多くなるという事になります。

私自身もその証券会社に所属していたので、そういう事があるという事は身近に感じていました。

そしてこの買収価格というのは当然今付いてる株価も基準にはするのですが、一方でDCF法といってちょっと難しい将来の財務諸表なんかを作って、実際に金融理論に基づいて株価を計算するという方式があります。

この方式というのは、鉛筆を舐めれば実はどうにでも動かせるものなんです。

そこで証券会社としては高い価格を提示して、これぐらいの価格で買っても妥当だというような事を言って、高い価格で買い取らせたという可能性があります。

そこに対してNTTの経営陣というのは正直会社の利益がどうなるかというのは二の次なんです。

何故ならば自分が大株主ではないので利益が上がろうが下がろうが知った事かというような、極端に言えばそういったこともあるかも知れません。

それより大事な大株主様である政府の意向を汲むという事が大切だったという事も考えられます。

その結果割を食うのは残ったNTTの株主という事になって、この買収劇の損得勘定という事になる訳です。

成長も期待できない、経営陣も信用できない

さてそのNTTが買いなのかという事についてです。

過去13年くらいの業績ですが、赤が営業利益なので、こうやって見ると業績に伸びているように見えますが、年平均に直すとわずか2.68%の成長に過ぎないのです。

図体がもともと大きいのでそんなに大きな成長は望めないのですが、それにしても物足りない数字であるといえます。

大きく上昇しているところのほとんどは、実はドコモの利益の上昇によるものなのです。

この時期には4Gが普及して一気にスマホも普及して、その料金を上げてそれによって利益上乗せさせる事が出来たからここで成長したのですが、一方で今起きている事はその料金を下げさせようとしているという事なので、これまでのような成長が続くとはなかなか考えにくいです。

むしろマイナス成長に転じてしまう可能性すらあります。

まして今株主をある意味で軽視するような買収劇というのをやってしまう経営陣というのは、株主としては信用が置けないのではないかと考えられます。

株価を見ましてもここ5年上がったり下がったりをほぼレンジの中で推移しているという形になっています。

今後も大きな上昇というのは見込めないと考えられます。

配当が4.42パーセントとまずまず高いですが、当然利益が減ってしまうと配当も減ってしまう可能性も十分にありますし、一見安定しているようですが、前提条件が変わってしまうとその安定が大きく崩れてしまうという事もあります。

そういう事からNTTの長期投資は私の方からは必ずしもお勧めできません

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