ソフトバンク(9434)損切りした理由。菅総理誕生で変わってしまった前提条件。投資が上達するための最低条件とは?

YouTubeに動画をアップロードしました!

以下、文章化したものです。


今回は私が携帯電話会社のソフトバンクを損切りしたという事についてお話しいたします。

損切りと言うとすごくダサい話で私としても恥ずかしい限りなのですが、一方で損切りなくして投資家として成長する事は出来ませんし、ポートフォリオを健全に保つ為にも絶対に必要な措置です。

私はそれまでソフトバンクを買い増ししていましたが、一転して損切りに転じる経緯となった、その思考回路について詳しくお話ししたいと思います。

買いながらも抱えていた「モヤモヤ」の正体

ソフトバンクの株価ですがこの半年堅調に推移していました。

携帯電話会社という事で業績は非常に安定しています。

一方でそこまで高い成長性も見込まれないという事から、PERとしては12~13倍程度で取引されていました。

その流れが大きく変わったのが親会社であるソフトバンクグループによる売り出しです。

親会社が60%以上の株式を持っていましたが、それを40%にまで減らす、その為に投資家に株を販売するという事で、株式需給の悪化が懸念されて株価が下落に転じました。

しかしながらこの株式の売り出しというのは株式の需給、売りと買いで売りが多くなってしまうという点に関しては株価下落要因となり得るのですが、一方でそれというのは株式の本来の価値、すなわち利益などには影響を与えません。

これが公募増資と大きく違うところで、公募増資は発行済み株式数が増加する事によって、一株当たりの価値が減ってしまうという現象が発生します。

これを希薄化というのですが、売り出しではこの希薄化は発生しません。

株式需給の悪化によって株価が下がっても、その後利益が増えれば利益に合わせて長期的には株価も上昇するという事が見込まれます。

その為この売り出しが発表されてから、私はこのソフトバンクを買い増していました。

しかし時をほぼ同じくして安倍総理が辞任してしまいました。

安倍総理が辞任してその次には菅総理が誕生するのではないかという事が当初から言われていました。

菅総理というと官房長官時代から携帯電話料金は4割引き下げられるという発言をする等、この部分に関してものすごく執着を見せています。

ただ、およそ2年前に当時の官房長官が拳を振り上げた時には、実際には端末と通信料金の分離など、いわゆる2年縛りの廃止などが行われたのですが、これによって何が起きたのかというと携帯電話会社間での、ユーザーの移動が起こりにくくなって、むしろ顧客が固定化されて料金そのものはそんなに下がらないという結果を生みました。

今回も同じような事になるのではないかと考えて、私は一旦それでも買いにまわりました。

同じような内容の動画も投稿しています。

ところがその動画を出したり実際にソフトバンクを買ったりしている中で、何かモヤモヤしたものを感じました。

その正体が何なのかという事はよくわからなかったのですが、その後菅総理の動きを見ていると、その正体が何となく分かってきました。

最大なものが菅総理の携帯電話料金の引き下げに対する執着心です。

一度は拳を振り上げながらあまり成果を生まなかった、しかし総理大臣になってそれを本格的にやろうという気持ちがまだ決して衰えていなかった訳です。

また政権の動きを見ているとこれまで温めていた、行政改革とかそういった事を矢継ぎ早にやっています。

この携帯料金についても、例えばハンコの廃止と同じようにどんどん切り込んでくるのではないかという事が考えられました。

これらもあって菅総理の政権支持率というのは非常に高いところにあります。

そしてこの携帯電話料金の引き下げというのは、誰も反対する人がいません

確かに政府が民間の料金に口を出すというのはおかしいと見る向きもあります。

けれども料金が安くなるのだったら嬉しい考えるので、世論としても料金引き下げの流れになるのではないかという事が考えられました。

これらからこの買いについては分が悪いのではないかと考えて、一転して損切りに転じる事となりました。

その結果、最終的には-5.7%の損失で撤退したという事になります。

これが起きる前、はソフトバンクに期待しているからこそ買っていましたが、その期待というのがまずは5GDX(デジタルトランスフォーメーション)への期待です。

5Gというのは現行の4Gに次ぐ高速大容量通信です。

携帯電話会社はあまり成長性がないとも見られていますが、かつて3Gから4Gになる際に契約の切り替えによって、より高い料金を課す事が出来るようになりました。

その結果携帯電話会社の業績というのはこの4G、あるいはスマホになるにしたがって右肩上がりに伸びていきました。

これからも自動運転やIOTなんかによって、携帯の契約回線数そのものも増えるという事が考えられましたし、また先ほどのように3Gから4Gに代わって業績が伸びたように、4Gから5Gに変わった時も料金の上乗せによって、売上が伸びるのではないかと考えていました。

同時にこのデジタルトランスフォーメーション、つまり新型コロナウイルスによって在宅勤務とかIT化がどんどん進む中で携帯通信と固定通信、更には傘下にヤフーやLINEなども持っているので、それらの総合力でデジタルトランスフォーメーションを加速させて、それらも利益を上乗せさせる事が出来る要因になるのではないかと思った訳です。

実際に買い始めたのも新型コロナが発生してからですから、それはかなりの追い風になるのではないかという事を考えました。

また、株式需給悪化懸念の解消という事もありました。

親会社のソフトバンクグループがこれから株を売るのではないかと考えられていましたから、だからこそ株価は抑えられていたところがあった訳です。

そこで親会社が60%から40%まで売るという事になったので、これは悪材料の出尽くしなのではないか、この後は利益の上昇にしたがって、緩やかな上昇が見込めるのではないかという事を考えて、これも買い材料だと私は考えていました。

また3つ目の理由としては高配当利回りという事がありました。

これだけ安定している事業に対して、利回りは6%もありました。

6%というとランキングの中でもかなり高い部類です。

一方でこの形態の条件収入というのは安定していたので、減配のリスクも少ないだろうと、最悪会社としてそんなに成長しなかったとしても6%の配当が受け続けられるならいいのではないかのという風に、ある意味安易に考えていたのかもしれません。

ところが菅総理誕生によってこれらの前提条件が大きく崩れてしまう事になりました。

つまりこの会社の魅力というのは、安定した携帯料金に対して成長性もあるという、この2段階があったからこそ買う理由となっていました。

菅総理の誕生によって安定した携帯料金というのが引き下げられるという事になったら、この前提が大きく崩れてしまいます。

また投資家としてはただ単に悪材料が出たから売りというのも、あまり望ましい事ではないのですが、じゃあどうやって判断するのかというと、これを数字に落とし込んで考えます。

その数字というのが期待値と呼ばれるものです。

皆さんも数学で習ったのではないかと思います。

この期待値は簡単に計算しますと、例えば今後3年で上手くいかなくて全く成長しない可能性というのが50%あったとします。

一方では上手くいって5年で30%利益が伸びますという事を考えて、30%というのは配当も含まれた数字ですが、この確率は50%あると考えましょう。

するとこの期待値というのは、0×50%+30%×50%、結果15%の期待値という風になります。

15%上がる可能性上がる期待値があるならば、事業自体も安定しているし買ってもいいかなという考えだったのが菅総理誕生以前の話です。

しかしこの菅総理が誕生して料金が実際に引き下げられるという事になると、この前提条件が変わってしまいます。

その中で一番大きいのが安定しているはずだった携帯事業が衰退してしまう、利益が減ってしまう可能性というのが大いに出てきました。

これを仮に40%としましょう。

そしてゼロ成長が30%。

30%プラス成長はこれも30%の確率で起きるとします。

同じように期待値を計算しますと-30×40%+0×30%+30×30%で-3%という数字になります。

投資家としてはこの期待値がプラスになるかマイナスになるかというのは非常に大きな事で、期待値がプラスであるからこそ私達は投資するのですが、一方で期待値がマイナスになるというのは投資する価値が全くありません。

したがってこの菅総理誕生によって期待値がプラスからマイナスに転じてしまった、だからこそ私はこれは売らなくてはいけない、私が感じていた違和感の正体というのは、これだったんだという風に考えるようになりました。

もっとも本当にこのようになるかどうかはわかりません。

もしかしたらこの料金引き下げというのも、上手くいかなくて株価は上昇に転じるかも知れません。

けれどもそれは今の時点ではわかりません。

結局はこの期待値というのは主観的な確率でしかないのですが、ただよくよく考えた上でその主観的な確率がマイナスになるのだったら、やはりその株を持っている理由がありません

投資家としてはこのように考えて行動しなければならないという事になります。

3つの教訓

この損切りから得られる教訓を3つまとめました。

1つは政府や世論に逆らうなという事です。

政府の要求や世論というのは、時に論理的でなかったり必ずしも的を射てなかったりはするのですが、一方でそれを覆すにはものすごいパワーがいりますし、結果流されてしまうという事も珍しくありません。

今回も共産主義国でもないのに料金を政府の力で引き下げるというのは、おかしいという論調もあるのですが、一方で携帯が安くなって嬉しくないという人もほとんどいません。

したがって今後料金引き下げの流れになるのではないか、そうなるとソフトバンクや他の携帯キャリア会社の利益も持たないだろうという風に考えました。

2つ目は立ち止まる勇気です。

私はここで売却・損切りを決めるまでむしろナンピン買いだという風に考えて、アクセルを踏んでいました。

ところが何かおかしいと感じた時に冷静になって、一旦アクセルから足を離してみました。

すると数字で冷静に考えた時にこれは有利な賭けではないと考えるに至って、結果すぐ売るという事が出来ました。

今のところこの決断が正しかったかどうかというのはわかりませんが、もしここの株が上がるような事があっても、その結果を振り返るよりは、現時点で考えて期待値がより高い物に投資した方が、長期的に見た時には良いパフォーマンスを生む事になるはずです。

そうしなければ投資家として能力が向上する事はありません。

したがって違和感を感じた時には立ち止まってよく考えるという事、これが投資家にとって求められる必須スキルです。

3つ目は損切りは早くという事です。

株というのは下がり始めて流れが変わったらズルズルと下がり続けるものです。

もしかしたら上がるのでないか、状況は悪いけれどもまたリバウンドもあるだろうと考えて、売りを先延ばしにしてしまう人がほとんどです。

やはりここで早く売る事が出来なければ結局は塩漬けになって、一向に前に進めないという事も起きます。

私の会員の皆さんの動きを見ていても損切りがいつまでも出来なくて、資産が全く増えないという方を多く見てきました。

損切りというと非常に辛い事でダサい事だとは思いますが、これなくして資産が増えるという事はないと考えてください。

それほど重要な事です。

どんなに株が上手くなっても損切りが全くないという事は決してありません。

むしろ投資が上手い人というのは利益を大きく伸ばせるというよりも、損切りを的確にできる人の方が上手いという事が出来る訳です。

ぜひ皆さんも迷っている物があったら、塩漬けになっている物があったら、もう一度その投資の可能性、期待値という物を考えてみて、損切りすべきなのではないかという事を考えてみてください。

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