バイク免許の難関「一本橋」と長期投資の関係
バイクの免許試験に「一本橋」というものがあります。幅30cm、長さ15mの平均台をバイクに乗ってゆっくり渡り切るものです。
私も昨年教習所に通いましたが、この一本橋にとても苦戦しました。どうしてもふらついて落ちてしまうのです。落ちたら即失格なのに、試験本番までの練習で1~2回しか成功しない有様でした。
そこで教官からいただいたアドバイスが以下のようなものでした。
「栫井くん、足元を見ていないかい?目線は遠くを見るんだよ。そうすればうまくいくから。」
ハンドルさばきが問題だと思っていたので、目線の話をされて半信半疑でした。しかし「溺れるものは藁をも掴む」状態だったので、どうにでもなれと教官の言うことを信じて本番に臨みました。
すると、驚くほどふらつかずに、余裕で橋を渡り切ることができました。見事に一発合格です。アドバイスをいただいた教官には感謝するばかりです。
良品計画の「数年後の未来」を見続けた結果
なぜこのような話をしたかと言えば、これがそのまま投資にも当てはまると思ったからです。
私たちが行っているのは長期投資です。したがって、見るべきは足元の株価の動きではなく、企業の数年後の姿なのです。数年後を思い浮かべれば、目の前で起こることに心を惑わされずに望んだ結果が得られると考えます。
それを実践したのが、主力の推奨銘柄である良品計画のケースです。
推奨をはじめたのが約1年半前、株価がピークの4000円から2000円まで下がってきたときでした。売上が伸びている一方で利益が下落し、「成長の陰り」が噂されていたのです。
しかし、開示資料を読み込むと、減益要因はシステムや物流、人材への投資であり、商品そのものはとてもよく売れていることがわかりました。何より私自身が無印良品のヘビーユーザーですから、店がいつも賑わっていることは肌感覚で知っていました。
そこで買い始めて、2019年末にかけて一旦は上昇しました。しかし、安堵するのも束の間、中国で新型コロナウイルスが発生し、同国が売上高の約3割を占める同社の株価は大きく下がり出しました。そこからウイルスは世界規模に拡大し、株価は反発するまもなく1000円を割り込むところまで下がりました。
多くの投資家はここで狼狽売りをしてしまったでしょう。しかし、当時から会員の方ならおわかりのように、私はここでさらに買い増しました。それができたのは、まさに「数年先の未来」を見ていたからです。以下が当時会員に宛てたメールの抜粋です。
会員の皆さま
以下の銘柄が約定しました。
良品計画(7453)100株 1,330円
指値より大幅に低い価格での約定です。投げ売り状態と言って良いと思います。
バリュー株投資家にとって、このような時ほど買いどきです。回復に時間がかかったとしても、ここでたくさん買えれば、将来の資産が大きく増える可能性が増します。
見るべきは目先の状況ではなく、数年先の未来です。2020年3月9日 つばめ投資顧問会員宛メール
「数年先の未来」とは、コロナが収束し、これまでの成長路線に回帰したときの未来です。減益要因となった投資が効果を顕し、中国を含めた店舗が増えれば業績が向上している確率はとても高いと判断しました。
もっとも、その未来を確認すべく、店舗へも足を運びました。すると、客は減るどころかむしろ増えていて、特に学校が休校になっていたことから棚がスカスカになるほどお菓子が売れていたのです。
そこで私は「これは食品が来る」と確信し、その後さらに買い増しを進めました。以下は株価が大底をつけた3月19日に会員に宛てたメールです。
以下の銘柄が約定しました。
良品計画(7453)200株 1,000円
まさかこの値段で買えてしまいました。これで買いはじめから目標としていた10分割前の単元(1,000株)に到達です。
今まさにイオンモール内の無印良品に来ていますが、平日にしては人が多い印象です。新型コロナの影響により自宅で過ごす機会が多くなると、「体にフィットするソファ」やレトルトカレーを重宝します。棚を見ると、子供向けなのかお菓子が売れている印象を受けました。
目先芳しくなくても、まだまだ長期的な成長が期待される財務良好銘柄です。正直、時価総額3,000億円はありえない数字だと思います(ニトリ1.5兆円、しまむら3,000億円)。あとはじっくり上がるのを期待したいと思います。2020年3月19日 つばめ投資顧問会員宛メール
橋から落ちなければ「合格」にたどり着ける
この買いが功を奏し、良品計画の株価は大底の2倍以上に上昇しました。ここで買えた多くの会員が資産を増やせたのです。
足元の株価だけを見ていたらこの成果を得ることはできなかったでしょう。3月の株価はまさに「投げ売り」状態でした。筆頭株主だった機関投資家も売りに回り、目先を見れば下がることが明白だったからです。
それでも、遠くを見続けたからこそ、私は買うことができました。まさに一本橋さながらです。
一本橋で遠くを見るべき理由は、身体の重心をブラさないためだそうです。近くが気になるとどうしても細かなズレを修正しようと余計に動いてしまいます。それでズレがさらに拡大してついには橋から落ちてしまうのです。
一方、遠くを見ていると、全くズレていないということはないのでしょうが、そんなことは気にならないので落ちるほどには至らないということです。重心さえ傾かなければ、30cmの幅からは容易に落ちることはありません。
長期投資でも同じです。企業の数年後の未来さえ見続けていれば、足元の株価変動や細かな材料に左右されることはありません。そこで下手に動くと、得られるはずだった利益も得られなくなってしまいます。
細かくトレードして最高の動きができれば良いですが、実際はそんなにうまくいきません。それならせめて30cmの橋から落ちないように気をつければ、誰でも「合格」にたどり着けるのです。
さて、すでに買値から45%の利益をあげている良品計画ですが、これからどうすべきか、会員の方ならよくわかっていると思います。見るべきは足元ではなく、数年先の未来です。
今の株価の低迷を考えると利確しとけばよかったのでは?
長期投資の言葉に縛られてる気がしますね