バイデン勝利なら株価は下がるはずでは?それでも上がる理由
米大統領選は史上稀に見る長期戦となっていますが、「常識的に」考えればバイデン氏勝利ということになりそうです。この状況を受け、株価は上昇しています。日経平均株価は実に29年ぶりの高値を更新しました。
しかし、下馬評ではバイデン氏が勝てば株価は下がると言われていました。なぜなら、同氏は「法人増税」や「超富裕層のキャピタルゲイン強化」を掲げていたからです。ここはトランプ大統領と決定的に違うところでした。
なぜバイデン氏有利と報じられているのに、株価が上昇しているのでしょうか。
相場において正確な答えは存在しませんが、一つ挙げられているのが連邦議会における「上下院のねじれ」です。大統領選挙と同時に行われている選挙で、上院の過半数を共和党(下院は民主党)が獲得する可能性が高まり、そうなるとバイデン氏の政策が思うように通らないと予測されることから、投資家は現在の状況が継続すると考えたのです。
ただ、それだけでは「上がる」要因としては弱いでしょう。そこで理解すべきなのが、「空売りの買い戻し」です。短期志向の機関投資家は、大統領選のような大きなイベントの前に相場変動で大きく儲けるために「仕込み」を行います。バイデン氏有利の数字が出ていましたから、空売りを行った投資家が多かったのではないかと思われます。
そこに上記のような状況で思うように株価が下がりませんでしたから、彼らは損失回避のために空売りした株を買い戻さなければなりません(これを「ショートカバー」と言います)。すなわち買い戻しによる大量の「買い」が一気に入りますから、それが相場を押し上げたのです。
このように、目先の相場はいつも「思惑」で動きます。経済ニュースの株価解説が空虚に聞こえるのはこのためです。相場はいわば投資家の妄想の中にあるのです。
「バイデン大統領」下でのシナリオ。株価は上がるか、下がるか
状況は刻一刻と変わります。現在の状況になったからには、私たちは「バイデン大統領」の誕生を前提にものごとを考える必要があります。
そうは言っても、単純に上がるか下がるかを決め打ちできるわけではありません。上記のように市場は思惑で動きますから、あてが外れると思わぬ損失を被ることになります。これでは丁半博打に等しくなってきます。
ただし、「可能性」を考えることは投資家にとって有益です。動きを事前に予測するのではなく、どう動いても冷静に対処することができるからです。
バイデン大統領の誕生で株価が上がるシナリオと言えば、財政支援策です。民主党はニューディール政策に代表されるように伝統的に財政拡大志向ですから、コロナ禍において公共工事などを積極化させ雇用拡大を図ることが考えられます。これまでに行われている金融緩和とあわせて、株価をさらに押し上げる原動力となるでしょう。
一方で、メインシナリオは下落に向かう可能性です。最大の理由が法人税の増税です。トランプ大統領は法人税を35%から21%にまで引き下げ株価上昇の起爆剤となりましたが、バイデン氏はこれを行き過ぎだとして28%まで引き上げあることを明言しています。法人税の引き上げは株主の取り分を直接的に減じさせます。
やや長期的な話で言えば政府財政の悪化懸念があります。政府が財政拡大策を取れば、やがてドルに対する信用が失われてくることになります。そこでドル売りが起きればドル安や長期金利の上昇を招き、株価にマイナスの影響を与えかねないのです。
もっとも、いずれにしてもこう素直には動いてくれないのが株価です。何より大きなインパクトをもたらすのが予期しないことが起きた時です。リーマン・ブラザーズの破綻や新型コロナウイルスの蔓延は突然起きたことでしたから、株価の急落をもたらしました。例えば大きな企業の破綻や「ワクチンが効かない」なんてことが起きれば、また大きな下落をもたらすことにもなるでしょう。
これから起きることはトランプ政権の「揺り戻し」
もっと大局的な見方をすれば、バイデン氏の勝利はこのトランプ政権の「揺り戻し」だと考えます。
トランプ政権下では、何にも先んじて株価を上げることが正義でしたから、金融緩和や法人減税などをなりふり構わず行いました。これで株価が上がらないはずはなかったのです。
しかし、一方的な行動は犠牲を伴います。株価の上昇や減税により富裕層はますます豊かになり、一般庶民との格差は拡がりました。景気が良いときはどちらも上向きでしたから大きな問題にはなりませんでしたが、新型コロナウイルスにより失業率が急上昇した一方で資産家は株価上昇でウハウハです。ここに社会的軋轢が起きないはずがありません。
バイデン大統領は、世論や民主党の思想に押されて、格差を是正するための政策を取るでしょう。そうなると、これまでのように株価上昇一辺倒のような展開にはならないのではないかと考えます。
何より、現在の株価は実体経済とかけ離れています。確かにハイテク企業の成長は目覚ましいですが、経済は最終的には一体のものです。経済規模と株価の比率を示す「バフェット指数」は、目安とされる100%を大きく上回り、過去に例を見ない水準となっています。
上のグラフの「100%」からの乖離はまさに「歪み」をあらわすものです。そして、歪みはいつか是正されるものです。バイデン大統領の誕生がその契機となる可能性があります。
私が注目する「バイデン銘柄」
そのような観点で見た時に、私が今注目しているのは「製造業」です。GAFAMに代表されるハイテク株が隆盛を極めていますが、経済社会はそれだけでは成立しません。スマートフォン一つ作るにしても、Appleだけでは不可能で、そこには様々な部品製造会社が存在します。そしてその多くが日本企業です。
製造業はコロナで一時操業が難しくなるなど向かい風が吹き、株価は下落傾向にありますが、世の中にとって必要なことは疑いようがありません。やがては業績も回復してくるでしょう。
バイデン氏も、米国の雇用を守るため製造業の優遇を示唆しています。これは米国に拠点を構える多くの日本企業にも適用されるものだと考えられます。
社会に必要とされ、将来性がありながら株価が割安に評価されている会社―私はこのような銘柄を丹念に探したいと思います。引き続きお付き合いよろしくお願いいたします。
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