【投資家必見】アップルの「インテル離れ」で半導体業界はどうなる?注目すべきはトヨタの2倍の時価総額を持つ台湾企業

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以下、文章化したものです。


アップルが最新のMac PCにこれまでインテルのCPUを使っていたところから独自のCPU「M1」を搭載すると発表しました。
 
これによって業界のインテル離れがますます進むのではないかということが懸念されています。

Macの離脱、他社の台頭、開発の遅れ~インテル参ってる?

これがアップルの発表です。
 
”新しい心臓。さらなる能力。”ということでApple M1チップを搭載したことで性能は最大3倍、高速グラフィックスは最大6倍と、インテルに挑戦状を叩きつけているような内容でもあります。
 
Mac PCの変遷というと、まず発売された1984年から1994年はモトローラの作っている68系というCPUを使っていました。
それがさらに進化して1994年から2006年は Power PC と呼ばれて、IBMとAppleとモトローラの3社が共同して作ったCPUを使っていて、いわゆる独自のCPUを使っていました。
 
これは一方ではインテルを使ったマイクロソフト陣営に対抗するものでもありました。
 
しかし、2006年になるといよいよこれでは対抗できないということで、この後インテル製のCPUに切り替えたわけです。
 
今皆さんが使われているMacのPCのほとんどはもはやインテル製のCPUは使われているということになります。
 
しかしここにきてアップルはまた独自のCPUに切り替えてこの「M1」というものを搭載してきました。
 
これによってパソコンにおける独占的な地位を築いてきたインテルから離れていってしまうのではないかということが懸念されています。
 
実はアップルが独自のCPUをを搭載するのではないかとはずっと言われていたことでした。
 
なぜかというと、iphoneや ipadに搭載されているチップ、これは「Aシリーズ」と言われるものですけれども、これらはアップルが独自に開発したものだったので、開発能力を持っていないわけではなく、いつかはパソコンに応用するということが想定されていました。
 
もっと言うならばアップルはパソコンもどんどんiphoneとかipadに寄せていって、これもまたwindowsに対抗するようにこちらのを世界で囲い込みを図っていくのではないかということが考えられます。
 
さて困ったのがインテルです。
アップルが離れてしまったこともあり、株価もコロナショック以外のところでもドカンと下がるような展開が続いています。
 
これはなぜかというと、一つはMacが離脱してしまったこと、それとライバルのAMDというところがあります。
 
この会社も同じようにですねパソコンの半導体をつくっている会社なのですが、今パソコンの世界ではこのMac特に自作PCではインテルのからAMDに乗り換えるという動きが起きています。
 
このAMDというのが、より安価でそしてより高速なものを投入しているということになっています。
 
その流れから、インテルにかつての栄光はなくなってしまったのではないかということが考えられているわけです。
 
さらにそこに追い打ちをかけているのがこの7nm開発の遅れというところになります。
 
技術に関して劣後してしまっている部分があるわけです。
 
さてこの技術ですが、今まで半導体の最先端というと常にインテルが走っている状況でしたがここで大きく潮目が変わっています。
 
その潮目を変えた会社がTSMCです。
 
皆さんあまり耳にしたことがないかも知れませんが、ものすごい会社です。
 
GDP規模で言ったら日本よりもはるかに小さい台湾の企業です。
 
その企業が何をしているかと言うと、製造に特化したファウンドリーです。
 
工場は持っていて、よその企業が開発した半導体をその工場でとにかく作って、製造を依頼した企業にお返しするという、これが製造に特化したファンドリーと言われるものです。
 
ここが世界最先端の半導体製造技術を持っていて、今や世界時価総額第11位、約44兆円、これはトヨタの約2倍です。
 
つまり、台湾1位の会社は日本1位のトヨタの2倍になるほど大きく上回る、それが最先端の半導体工場を持っているこのTSMCということになるわけです。
 
世界最先端の半導体技術を持っていますから当然ここに製造を依頼したい会社っていうのがどんどん出てきます。
 
それがアップルであったりするわけです。
 
アップルだけではなくて、先ほど説明したようなAMD、それから車の自動運転では必要になると言われている半導体を開発しているnVIDIAなんかもTSMCに製造を依頼しています。
 
このTSMC連合とインテル、インテルは開発から製造まで一気通貫して行う会社なのですが、この対抗軸というのができてきているわけです。
 
そして今劣勢にあるのがインテルということになります。
 
なぜ劣勢にあるのかというと、開発能力の違いというところにあります。
 
半導体というととにかく小さくする、微細化と言われますが、小さくしなければなりません。
 
なぜなら、スマホやパソコンなどいろいろな商品を作っていくにあたって能力を向上させようとするとたくさんの部品を入れる必要があります。
 
しかし当然、スマホなんかを作ろうと思ったら物理的に限界がありますから、今度はこの半導体をどんどん小さくすることによってより性能の高いものをより小さなスペースで作り上げるということがこの半導体製造における絶対の道になります。
 
その結果、TSMCは2018年の7nmそれから2020年の5nm、そして5nm+というところもありますけれども、この微細化の技術でいつのまにかインテルを追い越すというところまで来てしまったわけです。
 
サムスンもインテルに先行しているというふうに言われています。
 
今インテルが作っているのが10nmというところなのですが、TSMCのメインのものはもはや7nm、そして今回のアップルのチップにはですね5nmという、もうインテルの半分のサイズのものを製造しているということになるわけです。
 
当然他の会社としてもTSMCがインテルよりも凄いモノを作れるんだったらどんどん頼もうという形になって、パソコンの世界でもインテルからAMDへの乗り換えなるなどの動きが起きているわけです。
 
特に最近のインテルの株価が下がっているのもまさにここに起因していて、当然サムスンやTSMCに追いつこうと頑張っているんですけれどもその開発がどうもうまくいかず、予定が半年1年と先延ばしになっています。
 
それを受けて、その発表があるごとに株価が下がってしまっているという状況にあるわけです。

主戦場を「データセンター」へ

これでインテルはヤバいという風に見えるかもしれませんが一概にはそう言えません。
 
インテルは未だに世界最大の半導体製造メーカーということになります。
 
このグラフを見ると、パソコン市場自体がそれほど伸びているわけではないですし、スマホ向けの半導体の製造というところには完全に出遅れてしまってもはや撤退してしまっているという状況が続いていたのですが、ここで伸びているのが赤のデータセンターです。
 
データセンターっていうと今皆さんの生活にどんどん入り込んできているクラウドというもので、いろんなデータをインターネット回線で吸い上げてこのクラウドで保存したり処理したりされているわけです。
 
しかしこのクラウドというのも本当に宙に浮いているわけではなくて、実際にはサーバーといって半導体の大量に詰まった箱がアメリカの砂漠のど真ん中にたくさん作られていたりするわけです。
 
そこに対してインテルやその他の半導体メーカーの物をどんどん入れなきゃいけないのですが、それがデータセンターと呼ばれるものです。
 
それがどんどん伸びているということになるわけです。
 
そしてこのデータセンター向けCPUのシェアをインテルが90%を占めています
 
ライバルのAMDも進出しているのですが、まだ10%に過ぎない、つまり今インテルの主戦場はパソコンからデータセンターに移りつつあるというところになるわけです。
 
このデータセンターが今後ものすごく伸びるということが考えられます。
 
なぜかというと、5G、高速大容量通信無線通信ということになりますが、これがデータ量の増大をもたらします。
 
これに加えてAIや先ほど説明したようなクラウドによって世の中のデータの量というのはものすごく増えて、しかもそれを処理するソフトウェアというのはどんどん進化しています。
 
それを受けて今後の半導体の市場はまだまだ拡大するということが見込まれているわけです。

拡大市場における良好なライバル関係

さて先ほど説明したようにTSMC連合とインテルというのが半導体業界で覇権を争っているわけですが、一方でこのライバル関係というのは半導体業界に限らずですねあらゆる業界で起きていることです。
 
例えばこの中でも触れたとおり、パソコンだったらアップルとwindowsというところがありますし、また飲料業界においてはコカコーラとペプシというこれもまた永遠のライバルがいるわけです。
 
時々によってどっちが勝ったりとかどっちが優勢というようなことも言われていていますけれども、これらに共通しているのは市場が拡大しているということです。
 
その拡大している市場で何が起きているのか。
 
これは過去10年のマイクロソフトとアップルの株価推移ですが、この10年はアップルが優勢だったのではないかと思われがちなのですがwindowsの方もクラウドとか、windows PC自体も粘り強く戦っていますから、アップルの方が勝っているとはいえ両社とも7倍とか10倍とかそれぐらいの株価推移を遂げているわけです。
 
これはつまり市場が拡大しているから、ライバル関係はあるものの切磋琢磨しながら両方とも伸びているというところがあるわけです。
 
コカコーラはウォーレン・バフェット銘柄として非常に有名ですが、バフェットが買ったこの1985年頃には、コカコーラはペプシに負けてしまうんじゃないかと言われて株価が下がっていたというところがあります。
 
しかしふたを開けてみるとそこから株価は30倍になっています。
 
じゃあペプシが負けたのかというと決してそういうことはなくて、ペプシも同じように伸びていて、株価も同じく30倍ぐらいに伸びているわけです。
 
つまり、拡大する市場においてはこの2つのライバルがいたらお互い切磋琢磨してそれぞれが市場の拡大を牽引するという形でむしろ好影響を与え続けるということになります。
 
これが何社もあってどんどん価格競争を繰り広げるということになると利益をどんどん削られて体力がなくなってしまうのですが、この半導体のCPUに関してはこのTSMCとインテルという2つのライバルがいるに過ぎないわけです。
 
一応サムスンもいますけれどもその中で拡大する半導体市場はこの2社が牽引していってお互いが成長し続けるのではないかという仮説を持っています。
技術的な部分の専門家ではないので詳しくは分かりかねますが、ビジネスという観点で見たらとりわけインテルがヤバいという状況ではないのではないかと考えています。
 
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