金融緩和は踊れど実体経済にお金は回らず…株高の転換点はいつになるか?キーワードは世界の「日本化」だ!

街角景気は「壊滅状態」、盛り上がったところには「変化」

2020年もそろそろ終わりです。今年は実生活も投資も新型コロナウイルスに振り回される年になりました。

多くの経済誌では来年の相場見通しが盛んに行われる時期ですが、明日の株価もわからないのに、来年のことを話すのはまさに鬼が笑います。今年の新型コロナウイルスの流行とその後の株価上昇を見通せた人が果たして存在したでしょうか。その意味で私にも相場の見通しを聞くのはご遠慮ください。

未来を予測することは難しいですが、私たちはさまざまな事象から「今」の経済状況を知ることができます。街角に立って人の動きを見れば、景気が良いのか悪いのかだいたいわかります。例えば、デパート1階、ブランド品売り場の賑わいを覗くだけでも一目瞭然です。

その意味では、足元の経済は壊滅状態と言って良いのではないでしょうか。年の前半は、デパートはもちろん、街中から人がいなくなりました。夏~秋にかけては「GoToキャンペーン」で盛り上がりを見せたものの、ウイルスが再び猛威を奮っていることでまた極寒の状況が戻ってきそうです。

一方で、街角景気に表れないところの消費が盛り上がったことも事実です。人々は家にこもり、ネットショッピングで生活に必要な物を揃えました。例えば、在宅勤務に必要なPCや家具、ゲームなどです。これらの売上はむしろ以前より伸びる結果となりました。

それではこれらの企業がこれからも成長し続けるのかと言えば、必ずしもそうではないと思います。

盛り上がったのは大きな「変化」があったからです。私たちは、懐具合に関係なく現在の状況に適応することを求められました。そこへ給付金もありましたから、変化のための消費を行うのは必然だったのです。

しかし、これからさらに変化に向けてアクセルを踏み込むのかと言えば、そう簡単にはいかなそうです。給付金は使い切ってしまって、ボーナスも減少。さらに米英でワクチン接種も始まったことで、コロナ禍が終わる見通しもあります。こうなると、アクセルを踏み込むのは「待った」となってしまうのではないでしょうか

お金が実体経済に回っていない状況が鮮明に

同じような心理なのが、企業の経営者だと思います。持続化給付金や無利子貸付で手元の現金は確保できたけれども、これからどうなるかわからないから、とりあえず貯蓄や株式投資に回しておこうと考えるのではないでしょうか。実体経済にお金は回らず、経済成長は思ったほど回復しない可能性もあります。

それを裏付けるのが、帝国データバンクの調査です。2019年9月末~2020年9月末にかけて、国内銀行の預金は9.7%(74兆円)も増加しているのです。これはいかに実体経済にお金が流れていないかを物語っています

実体経済にお金が流れていないというのは、同じ帝国データバンクのレポートからも読み取ることができます。「2021年の景気見通しに対する企業の意識調査」で来年の景気を最も悲観視しているのが「建設業」です。建設は設備投資そのものであり、設備投資は経営者の将来見通しを示します。設備投資の減少は、人々の心理状態の停滞を表しているのです。

設備投資が減れば関連する企業の収益が減り、やがてそこで働く人々の給与が減って個人消費が減ります。こうして社会の総需要が減少することで、景気が悪循環に陥ってしまうのです。

世界中で「日本化」が起こる

実はこの状況は、私たちには見覚えのある光景です。「日本化」と呼ばれ、いくら金融緩和でお金を配り続けても、それが積極的な消費に使われることなくひたすら預金だけが積み上がりました。アベノミクス以降少しは改善する兆しが見られましたが、再びそれ以前のデフレ社会に戻ってもおかしくないのです。

同じことが、今度は日本だけでなく世界中で起こる可能性があります。コロナ禍で人々は自宅にこもって過ごすことに慣れきってしまうかもしれません。そこでは一部盛り上がる需要があったとしても、全体としての消費は減少するでしょう。

ITは人々の生活を大きく変えましたが、その多くは「無料」で提供されています。人々はお金をかけなくても楽しむ術を身に付けることになる―これがIT社会の帰結なのではないかと思います。

極端なイメージを持ち出すなら、みんなが「どうぶつの森」のようなバーチャルな世界で楽しむことを覚えれば、ゲームと生きるための出費以外必要なくなってしまいます。ゲーム先進国である日本はそれを世界に先駆けて経験しただけなのかもしれません

好調な相場の転換点はいつか?

もしこのように人々が消費しなくなるとすれば、これまで金融緩和によって支えられてきた株高にも疑問が湧いてきます。

株高を演出して来たのは、金利の低下でした。株式市場におけるPERは以下の公式で表すことができ、金利低下はPERの上昇を意味したのです。

PER=1/(r-g)
※r=金利+α、g=永続成長率

しかし、もし世界中で上記のような「日本化」が進むとすれば、上記の公式における「g」が低下することになります。すると、PERの数値が低下して株安に転じる可能性があるのです。現に世界の株価は相当な割高感が出ていますから、これが大きく下落する可能性も十分にありうると思います。

もっとも、「日本化」のような話は数年単位の話ですから、来年の相場には直接関係ないかもしれません。

それでも、株価は業績に素直に反応します。これからコロナの直撃を受ける業種はもちろん、調子が良いと思われてきた企業の業績に変調が見られるようなら、相場の転換点ともなり得ます

現在の相場は警戒感を失っているように見えます。このようなときこそ軽率な取引はせず、どっしりと構えて次のチャンスを待ちましょう。どんな社会になったとしても、最終的には「良い株を安く買う」に敵うものはありません

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3 件のコメント

  • 国の借金の拡大、コロナ禍において経営が難しくなる企業が増大する中で、株式市場だけは高値を更新し続けている。行き過ぎた金融緩和がすでにバブルを引き起こしているのではないかと不安に思う中での、判りやすい解説有難うございました。大変参考になりました。

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