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以下、文章化したものです。
今回はつばめ投資が2021年に最も注目している業界である、半導体業界について取り上げたいと思います。
半導体業界というと、かつてはシリコンサイクルと言われて、盛り上がっては落ち込みという形を繰り返す業界だったのですが、ここにきてグレートサイクルと呼ばれる半導体業界の拡大が起きるのではないかとも言われています。
そんな中で半導体業界が一体どのような方向に向かっているのか、あるいはそんな中で有望な日本企業があるのかという事について取り上げてみたいと思います。
半導体の今。日本企業の位置づけは?
私が半導体業界に注目している理由の一つとして、半導体製造装置を作っている東京エレクトロンの社長のこの発言が一つのきっかけとなっています。
2020年11月に発表したものなのですが、社長が言った事には、来年から再来年はビッグイヤーズ、すなわち2021年2022年はものすごく半導体業界が盛り上がる年になるだろうという風に言っています。
ここに書いてあります通り2020年に10%超成長すると予想を公表したとあり、更には来年は今年を上回り再来年も同様で、2021年から2022年はビッグイヤーズになると言っています。
東京エレクトロンが作っている半導体製造装置というのは、半導体を最終的に作る前にその半導体を作る装置を作るものです。
非常にややこしいのですが、要は物を作る流れの上流にあります。
すなわちここの情報というのはこれからの半導体業界を先取りしているという事が出来ます。
そこの社長がこれから先ものすごい盛り上がる年になるという風に言っている訳ですから、それはやはり何らかの兆候を掴んでいるのではないかという事が推測されます。
そもそも半導体とは何かという事についてまず振り返ってみたいと思います。
私達が普段使っているスマートフォンの大きさは、大きくなったり小さくなったり多少はありますが、基本的にはほぼ同じような大きさで作られています。
しかしその性能は年々進化しています。
この進化している理由というのが半導体の進化に他なりません。
つまり沢山の情報を処理したり保存したりする為には、当然物理的に沢山の半導体が必要になる事になりますが、それを繰り返していると当然このスマートフォン自体もどんどん大きくなってきます。
ところがそれをとにかく小さくする事によって、同じスペースでより大量の情報をより早く処理する事が可能になってきています。
昔のパソコンを知っている人ならわかると思いますが、パソコンが開発された時というと、それはもう一つの部屋で収まりきらないぐらいものすごく大きなスペースを必要としていました。
それが今やデスクトップ、ノートブックという形でものすごく小さくなって、しかも処理速度は何十倍何百倍何千倍にも上がっています。
その究極的な物がスマートフォンという事になります。
したがって電子機器が進化する程、あるいは処理すべき情報が増えれば増える程、この半導体というのは進化を遂げなければなりませんし、またそれだけ量が沢山いるという事になります。
業界の予測としても、これまでも増えてきたところなんですが、今後更に増えるという事が想定されています。
ではその半導体の会社というと何があるか、予測値という形になりますが世界各国の半導体メーカーのランキングです。
1位は皆さんご存知のインテルです。
2位に来るのが韓国のサムスン。
そして3位がTSMCです。
馴染みがない方もいらっしゃるかと思いますが、TSMCは台湾の半導体を作るファウンドリで自ら設計が行わないのだけれども、とにかく工場を持ってそれを作るという会社です。
これが世界3位になっていまして、4位にSKハイニックスこちらも韓国の会社です。
そして5位がマイクロンという形になります。
こうやって見るとNvidiaなど最近市場を賑わせた銘柄なんかも入っていますが、日本企業が出てくるのは12位のキオクシア(旧東芝メモリ)が入ってくる程度でこの15位のランキングにはこの時点で入ってきていません。
半導体業界は日本企業で有望企業がなくて残念だなという風に、日本株の投資家同士では思ってしまうかもしれないのですが、実は半導体の産業というのは決してこれだけでは留まりません。
先程あげました社長の発言があった東京エレクトロンは、半導体製造装置を作る会社です。
半導体を作る装置というのは実は半導体メーカーが作るのではなくて、それと更に別の会社が作っています。
何故これほど分業を体制しいているかと言うと、半導体を作るというのはものすごく難しいものなのです。
というのも小さくなっていると言いましたが、ナノメートルともはや目では確認出来ないようなレベルの小ささになっています。
それを作る機械という事ですからものすごい技術が要請される訳です。
しかも半導体の部品というのもかなり高度、あるいは特殊な物となっていまして、電気を流して情報を処理したりする訳なんですけれども、ただただ導線を繋いでいるという物ではありません。
この半導体というのがまさにそれを表していて、普通に導線を繋ぐのだったらオンとオフしかありませんが、この半導体は特定の条件によって電気を通したり通さなかったりする事が出来る、その性質を使ってあらゆる情報を処理しているという事になります。
したがってそこで使用される物体というのもまた高度な技術が要請されます。
この相当細かく精密な技術が要請される部分において、日本企業が強みを発揮しています。
日本企業の特性としてはこういった精密とか、あるいは難しい技術が要請されるというところについては、今かなりの強みを持っています。
実際にそれを活かして日本企業は色々活躍しています。
さっき挙げたようなこの半導体製造装置という点では、筆頭には東京エレクトロンがありますし、更にはこれアドバンテストといった会社、それからスクリーン、そして日立ハイテクノロジーズ、それからニコン、国際エレクトリック、ダイフク、それからキャノンといったところ入ってきます。
半導体製造装置とひとくくりにされますが、それぞれがそれぞれで得意分野があって、各分野に関しては高いシェアを持っています。
この東京エレクトロンに関してもこの分野に関しては、1位のアプライドに次いで世界2位のシェアを誇ります。
またこの半導体の材料となるシリコンウエハは土台なのですが、これに関しても日本企業は高いシェアを持っていまして、株をやる人にとっては馴染みの深い会社かもしれませんが信越化学工業も非常に優秀でこの分野に進出して業績を伸ばしてきた会社です。
2019年の市場シェアは32%、そして2位のサムコは25%というような形で、この2社だけで50%を超えるシェアを誇っています。
更に言えば半導体フォトレジストというものがあります。
これに関しても半導体を作る上で必要不可欠なものです。
JSR、東京応化工業、先程も出ました信越化学、住友化学、富士フィルムで世界シェアの90%以上を握っています。
1年くらい前に韓国との貿易で摩擦が起こって、日本の製品を韓国に輸出するのを難しくするというような話が出ました。
それで問題になったのがこの半導体フォトレジストで、何故ならこの半導体フォトレジストは9割の世界シェアを日本企業が握っているので、先程ありましたように半導体メーカーである韓国のサムスンがこれらを輸入しようと思ったら、なかなか輸入出来ないという状況になって大混乱をもたらしました。
逆に言えばそれほど日本企業がこの分野に関して、生命線を握っている、いわば日本企業無しでは世界中で半導体を作ることは出来ないということです。
究極的にはダイシングソー、つまり半導体チップを切断する技術を持っている会社があるのですが、これに関しては日本企業が100%である訳です。
具体的な企業でいえばディスコや東京精密といった会社になります。
日本企業の半導体に関する世界シェアは、シリコンウエハ62%、フォトレジスト84%、コータ/デベロッパ92%、洗浄装置69%、平坦化装置43.6%、ダイシングソー100%、テスティング装置64.1%などなどかなり日本企業が高いシェア握っているという事がはっきりしています。
めまぐるしい”世代交代”
この半導体ですけれども、これまでこの情報化社会が進む中でますます求められていると言いましたが、実はそう平坦な道のりでもありませんでした。
というのも日々この半導体が進化しているので、これらのメーカーはそれに追いつく為にどんどん投資をしなければなりません。
しかし第1世代第2世代みたいな商品があったとしたら、この第1世代の物を作ってもその第一世代が18ヶ月とかそれくらいのサイクルで終わってしまいます。
何とか回収する為にこの18ヶ月のうちに大量に生産するのですが、やがては次の第2世代に移った時にその第1世代で作った物はいらなくなってしまいます。
するとそのいらなくなった物が在庫として残ってもほとんど使えないという事になってしまいます。
いらないという事になると価格下落という事を引き起こします。
実は半導体業界というのはこういった盛り上がっては在庫が余って価格下落を繰り返す、そして損失を計上するといったシリコンサイクルと言われるものをくり返してきました。
それを表しているのが東京エレクトロンの業績で、ここにあります通り過去10年なんですけれども、高い業績の時もあれば売り上げが落ち込んで、そしてまた盛り上がってという事を繰り返してきました。
この赤の線が営業利益ゼロの線なのですが、時にはゼロに限りなく近かったり赤字になっている事もありました。
それほど半導体業界というのは傾向を捉えるのが難しい業界となっています。
先ほど少しに取り上げましたキオクシアに関しても、東芝から切り離された訳ですが、切り離した時は結構業績が良くて高く売れると思ったのですが、今やそのサイクルが終わってしまって、直近の業績や赤字となっています。
しかもコロナで混乱の中、上場を目指していたのですが、結果それが叶わず上場が延期になってしまったという経緯があります。
当然よく知っているはずの東芝ですらそれが読めないという事になりますから、それほど半導体業界を読むのは難しいという事になります。
5Gの追い風
しかしここで大きく流れを変えているのが5Gの登場です。
つい最近この携帯通信で5Gが始まりましたが、これによって行われる事は高速大容量通信という事になります。
我々の携帯で2時間の映画を一瞬でダウンロード出来たりというような事が言われています。
また、情報をAIで処理する為にはで沢山の情報を入れ込んでそれを処理しなければなりませんし、5Gが出来るようになれば自動運転もインターネット回線を通じて出来るようになると言われています。
そんな中でこの世の中で使われるデータ量が爆発的に増えるという事が想定されます。
データ量が爆発的に増えるという事は、それを処理する為の半導体も沢山必要になるという事ですし、それは一瞬で終わる訳ではなくてデータをどんどん保存しなければなりません。
半導体というのは情報を処理するロジック半導体と、情報を保存するメモリ半導体というものがあるのですが、この両方が沢山必要になってくる事になります。
一つ分かりやすいところで言うならば、皆さんグーグルフォトは使っているでしょうか。
私も使っていたのですけれども目下今まで携帯で撮った写真を無料でアップロードする事が出来たのですが、この2021年の6月からそれを取りやめると言っています。
グーグルといえばこれらを保存する為にアメリカの砂漠地帯に、大量のデータセンターを持っていたのですが、それを無料から有料化するという事はもはやそのデータセンターがいっぱいになってきているという事を示唆しています。
このようにYouTubeで発信している私ですが、こういったデータもすべてグーグルに保存されています。
すると当然データセンターがどんどん足りなくなってきます。
そしてそれに追いつかせる為に半導体をどんどん買わなければならないということになります。
まさにそれが東京エレクトロンの社長が言ったように、ビッグイヤーになるという事をある意味示唆していると言えるのではないかと思います。
ハイリスクハイリターン?アップダウンが激しい=買うタイミングも現れやすい
もっとも投資家としてはただ良いから買えばいいのかというと決してそうではありません。
最も大きなリスクとなっているのが米中貿易戦争です。
この世界の半導体の消費者として非常に大きなシェアを占めていたのが、中国のファーウェイなのですけれども、アメリカの圧力によって日本企業やアメリカ、韓国の企業がファーウェイに製品を輸出出来なくなりました。
かなり世界で大きな消費者であるファーウェイ、中国市場といったところに輸出出来ないという事になると、当然需要が減ってしまいますから、それによって価格下落が起きて半導体のグレートサイクルが終わってしまう可能性というもの十分にあるという風に見えます。
更には今アメリカによって中国企業がいじめられてますけれども、この半導体というのがまさにその貿易戦争の中核となっていまして、今や半導体を制した者が世界を制するというような産業構造になり兼ねません。
そんな中で中国が行っている事は国のお金を多額に投じて、半導体製造の会社というのをアメリカや台湾に追いつけというような形で育成している最中なんです。
もしそれが実を結んだという声になると、価格競争更に深刻になったり、あるいは日本企業ではなくて中国企業でも出来るというような事になる可能性が長期的な話ですけれども、ゼロではないという事になります。
かつて日本企業は電子製品で高い世界シェアを持っていたのですが、それを韓国や中国に技術を持っていかれたように、下手をすると同じ事を半導体で繰り返しかねないという事にもなるので、十分に見ておく必要があります。
さてこれらの半導体関連企業の株価についても見ていきたいと思います。
マネックス証券のデータですけれども、東京エクストロン、アドバンテスト、スクリーンというような形で入れさせていただきましたが、予想PERを見ますと28.3倍、36.9倍、33倍、ディスコは出てないですが、EV/EBITDAで27倍です。
この辺は10倍ぐらいが平均と言われるのですが、ちょっと高いところになっています。
東京精密20.4倍、半導体検査機器の会社のレーザーテックがなんとPER93倍ととても高いところになっています。
それだけ成長期待があるという事なんですが、PERが高いという事でこれからの成長は結構を織り込まれてしまっているところがあると言わざるを得ません。
更にはこの半導体の材料といったところでも予想PER見ますと、26倍30倍65倍43倍26倍25倍とそうではないところもありますが、比較的に高い水準になっていまして、特に材料についてはこれらの会社は半導体の材料だけを作っているわけではなくて、様々な物の中の一部に半導体があるという事になりますから、その辺は各企業で個別で見ていくしかないという事になります。
特に半導体関連製品の自分の会社の中でのシェアが高い会社というのは、業績は正直かなり上がったり下がったりが激しいです。
先ほど東京エレクトロンでありましたけれども、ものすごく利益を上げる年もあれば、赤字になってしまう年もあります。
それに合わせて株価もアップダウンを繰り返しやすいという事になります。
すなわちハイリスクハイリターンの投資であるという事は間違いありません。
ただし長期で見た場合というのはやはり半導体市場の成長に伴って株価も上昇してきていまして、東京エレクトロンを5年のチャートについて見ればですね4、5倍というところまで一気に伸びてきています。
したがってこれらの会社は短期的には大きく上がったり下がったりを繰り返すかもしれませんが、良い会社だったら間違いなく長期投資に向いている会社だという風に私は考えています。
もちろんその技術の優位性が続くという事が大前提ですが、これらの今挙げたような会社の中からそういった企業を見つけていきたいと思っています。
株価の動きが激しいという事は下がった時に買えば、そこからの上がりの幅というのは当然大きくなります。
ハイリスクハイリターンと言いましたけれども、企業の分析が出来る人にとっては株価のアップダウンというのはむしろ下がったときに買うべき味方だという事が出来ます。
ぜひこれらの企業の中から良い企業を見つけ出して、それらの企業が相場の要因、あるいは何らかのネガティブな材料によって大きく下がった時は、ぜひ買いを検討してみるという事をお勧めいたします。
つばめ投資顧問としましても半導体、あるいはそれに限らず、そういった戦略を基本的に取っていますしこれからもやっていこうと考えています。
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