ソフトバンクという会社はあまりにも有名ですが、その事業の中身について正確に知っている人はそういないのではないでしょうか。バリュー株投資においても一筋縄ではいきません。ソフトバンクの価値について改めて分析します。
ソフトバンクは3つに分けて考える
一般的にはソフトバンクは携帯通信会社と見られます。確かに、収益の大部分は携帯通信事業からもたらされます。
しかし、アメリカの携帯通信会社であるスプリントを買収したり、中国のオンラインショッピングモールを運営するアリババの筆頭株主であったりと、常に株式市場に話題を振りまいてくれる会社でもあります。
ソフトバンクを理解するには、会社の事業を3つに分けて考える必要があります。3つとは、携帯通信事業をはじめとする国内事業、アメリカのスプリント事業、そしてアリババに代表される投資事業です。
国内事業は「金のなる木」
日本の大手携帯キャリアは、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社で固定された感じがあります。格安スマホも出てきていますが、大きな流れで言えば3社の寡占が揺らぐことはないでしょう。
かつてボーダフォン買収して携帯事業に参入したソフトバンクは、画期的な価格設定でシェアを取りに来ましたが、いまやその気概はなく3社横並びとなっています。悪い意味ではなく、ビジネスとしてはそれが正解でしょう。価格競争は当面起こりそうになく、利益を生みやすい環境にあります。
また、かつてはつながり状況が良くないと批判されていましたが、積極的な基地局への投資により、他社に劣らない電波状況を達成しています。更なる大きな投資が必要な状況でもありません。
つまり、ソフトバンクの携帯通信事業は、3,200万人の契約者から安定的に収益がもたらされる、経営学でいうところの「金のなる木」なのです。
同じように、ソフトバンクの金のなる木がもう一つあります。それがヤフーです。
ご存じのとおり、ヤフーは日本のインターネット業界において圧倒的な地位を築いていますから、黙っていてもジャブジャブお金が湧いてくる状況なのです。
ソフトバンクはヤフーの株式の36%を保有しています。ヤフーが成長することで、ソフトバンクはその果実を収穫できるのです。
「問題児」のスプリント
携帯通信事業とヤフーから湧いてくる多額の収入を投じている先がスプリントです。
スプリントはアメリカにおける第4位の携帯キャリアです。上位にはAT&Tとベライゾン、さらにTモバイルという会社があります。アメリカの大手携帯キャリアはこの4社で構成されています。
この中でスプリントは圧倒的な「負け組企業」です。これまで赤字を垂れ流し、資本を食いつぶしました。有利子負債を3兆円以上抱え、毎年の利払いは3,000億円にもなります。ソフトバンクが買収するまではどうにもならない状況でした。
ソフトバンクはこの問題児を買収することで、日本と同じように携帯通信事業を拡大させようとしました。そのために、競合のTモバイルの買収を試みましたが、アメリカ政府当局の反対にあい、実現することはありませんでした。
さらに、AT&Tやベライゾンもソフトバンクが日本でシェアを獲得した戦略を十分に勉強していましたから、前もって手を打っていったのです。
打つ手のないソフトバンクは、目標を財務改善に切り替えました。ひたすらコストを削減することで、未だに赤字となっているスプリントをなんとか黒字に持ってくることが当面の目標となっています。
スプリントはそれでも約5,000万人の契約者を抱えていますから、確実にコスト削減を行えば、やがてはキャッシュフローを生み出せる企業になっていくことは不可能ではありません。しかし、そこまでの道のりは長く、スプリントを評価するまでは少し時間がかかりそうです。
「ジョーカー」としての投資事業
ソフトバンクの事業でジョーカーとなりうるのか投資事業です。
ソフトバンクが保有するアリババの株式価値は、当初出資額の20億円が今では6兆円の価値があります。世界を股にかけてインターネット業界を席巻しようとしている孫社長の手腕にかかれば、アリババと同じような企業をまた見つけられないとも限りません。
実際に、インドのオンラインショッピングモール運営事業者であるスナップディールに700億円の出資を行って筆頭株主になっています。アリババのように大きな成長をすることがあれば、ソフトバンクの価値にも大きな貢献をすることになるでしょう。
その他にも、インドや中国を中心として、インターネットを軸としたベンチャー投資を積極的に行っています。ベンチャー投資は当初投資金額としては微々たるものですから、仮に失敗したとしても、「金のなる木」を抱えるソフトバンクにとっては大きな問題ではありません。
最近大きな動きがありました。2月に最大5,000億円の自己株式所得を発表し、直近では投資資産であるアリババ、ガンホーの株式を売却し、1兆円以上の収入を得ることになりました。これは投資回収したものを一部は株主に還元するという意思表示ととらえられ、株主にとって価値が実現されるチャンスです。
素晴らしい会社をそこそこの値段で買う
ソフトバンクのトータル価値を考えると、スプリントの価値算出は難しいものの、国内事業は豊富なキャッシュを安定的に創出し、投資事業は将来の爆発的な可能性を予感させます。
現在のソフトバンクの時価総額は7.2兆円です。NTTドコモ(11.0兆円)やKDDI(8.2兆円)よりも小さく割安にも見えますが、それ以上に私がソフトバンクに注目する理由がバフェットのこの言葉に集約されます。
そこそこの会社を素晴らしい値段で買うよりも、素晴らしい会社をそこそこの値段で買いたい。
ソフトバンクのROEは17%と、上場企業の平均を大きく上回ります。孫社長の経営を見ていると、株主の資金をより可能性のある投資に回していることを実感します。少なくとも孫社長が在任している間は「素晴らしい会社」の部類に入るのではないでしょうか。
全体像を理解するのには根気のいる企業ですが、長い目で見て大きなリターンを生む可能性があります。すぐに成果は出なくとも、長期的な視野で応援したい会社です。
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