日本M&Aセンター下落、逆張りの好機か?

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以下、文章化したものです。


日本M&Aセンターを始め、M&Aの仲介を行う会社の株価が下がっています。

これらの会社はこれまで絶好調で株価も上昇してきましたが、ここに来て河野行政改革担当大臣の発言があって、株価が大きく下落してしまっています。

果たしてこの株価下落は逆張りの好機となるのか、それともますます株価は下がってしまうのかという事についてお話しします。

拡大するМ&A市場。「利益相反」問題とは?

これが日本M&Aセンターの株価ですけれども、この年末年始をピークに7千円ぐらいあったところが17%下落しまして、その間市場は好調でしたから個別の要因があったという事が考えられます。

その要因というのがここにある通り河野行政改革担当大臣の発言です。

『M&A仲介企業の株価下落、手数料両取りに「利益相反」問題の指摘』とあります。

詳細は後でお話しするのですけれども、河野行政改革担当大臣は菅政権の懐刀とも言われているのですが、歯に衣着せぬ発言で有名です。

その人がM&Aを仲介する会社が両手取引を行っていて、これがその企業を売ったり買ったりする人達にとって利益相反になっているという風に指摘をしています。

両手取引と言いますと、ざっくり言うと売り手企業と買い手企業両方共のアドバイザーになって、双方から手数料をもらうという形になっています。

しかしアドバイザーという立ち位置の上では、これは必ずしも売り手や買い手の為になっていないのではないかという事で、中小企業庁が全国の後継者不足に悩む中小企業に、このM&Aのやり方に注意を促しています。

ではそもそもこのM&Aとは何なのか、またこの日本M&Aセンターと何なのかという事について考えてみたいと思います。

近頃になってよく聞かれるようになった用語ですけれども、このM&Aは日本語でいうところの合併・買収という事です。

すなわちある企業がある企業の主に株式を買って、買われた企業の会社の経営主体が変わるというものです。

大きな企業ではニュースになるのですがこれが中小企業でも活発に行われています。

その最大の理由が後継者不足という事になります。

団塊の世代なんかが小さい企業を作ってどんどんは大きくしてきて、事業を続けてきましたが、やがてはそこの創業社長が年老いて、そろそろ誰かに事業を譲らなければならないという局面がやってきます。

しかし自分に子供がいなかったり、あるいは子供にがいたとしても継ぐ気がなかったり、あるいはこの継がせるような楽な仕事ではないから継がせたくないという人も少なくないと言われています。

しかし企業としてはずっとやっていて取引先や従業員もいますから、いきなりやめる訳にもいきません。

そこで活躍するのがその会社を引き継ぐ別の会社に売ってしまって、その別の会社が引き継ぐというやり方です。

これをすれば別の会社を経営しているという実績がありますから、買われる企業にとっても経験があるところに任せるという事なので安心が出来ますし、買う方の企業にとっても同じ事業をやっているのなら事業拡大という事になりますし、少し周辺の事業を行っているという事になれば、ますます事業領域を拡大、更にはシナジー効果という事もあって、今後の事業を成長させる上に必要な1つのパーツという風になっていきます。

これを受けましてこのM&Aの市場というのは拡大してきまして、あまり表に出る指標ではないのですが、このM&A仲介を手掛ける上位3社の件数を見ますと、ここのところ右肩上がりになっています。

その中でもこの日本M&Aセンターというのは1991年に設立された、中小企業のM&A仲介としては老舗の部類になります。

市場がこのように拡大しているので当然そこで最大のシェアを占めるこの日本M&Aセンターの業績というのもどんどん拡大しています。

ここにあります通り売り上げがぐんぐん伸びて、そして利益もそれに連動するような形で伸びていきます。

当然と言えば当然で、M&A仲介は何も設備がいりません

とにかくその人間がその間に立ってM&Aという案件を成立させる事を目的とした会社なのです。

したがって営業利益率は40%を超える高い数字となっていますし、市場が拡大するにつれてますます業績が伸びていく、利益も伸びていくという事が考えられます。

更に言えばここで業界最大手になるという事は、売り手の情報も買い手の情報もどんどん同じ会社に集まってくるという事になります。

私も大企業にM&Aをやるような会社に勤めていたのでよくわかるのですが情報が全てなのです。

特にこの売り手の情報というのはものすごく強い情報で、買いたい企業は沢山います。

しっかりとした売り物を持っている企業の情報があれば、それだけで仲介会社になる事が出来て、そしていわば濡れ手に粟の形で、どんどん業績を伸ばしていく事が出来る訳です。

そんな事から業績の拡大というのは市場の拡大に伴う業績の拡大という事で、株価も見事に上昇していてこの5年で見ましてもおよそ4、5倍というところにまで伸びてきています。

しかし今回河野大臣が指摘したのはこの仲介という仕組みに問題があるのではないかという事です。

どういう事か具体的に説明します。

M&Aには当然売り手と買い手がいて、日本M&Aセンターはその間に入る立場になります。

売り手が後継者がいないので自分の会社を売りたいという風に考えている場合このようなところに相談します。

その時点で100万から300万の着手金を支払う事になるのですが、これを受けて日本M&Aセンターは買ってくれる会社はないかという事を探します。 

先程言いました通り、買ってくれる会社の方が多いという風になるのですが、買い手側も「こんな会社が買いたい」というような相談をします。

この買い手からの着手金に関しても100万から500万貰うという風にされています。

そして最終的に話がまとまった暁には成功報酬として、両方から資産規模に比例した成功報酬を貰う事になります。

したがって日本語M&Aセンターはこの両方から着手金、更には成功報酬を貰う事になって、成功報酬というのもまた大きくてM&Aというのは1億、2億とか億単位の話ですから、例えば成功報酬5%という事になると10億円の取引があったとしたら10億円の5%で5000万円という、まさに先程言いましたように濡れ手に粟のビジネスという事にもなります。

そんな中で利益相反の話です。

売り手に関しては当然高く売りたい訳です。

一方でこの買い手に関しては少しでも安く買いたい訳です。

この間に入る日本M&Aセンターも出来れば高く売りたいのですが、とにかく成立させる事で成功報酬が入るので、とにかく成立させる事が優先になってしまいます

したがって特にこの売り手にとってはもっと高く売れたはずなのに、成立を急いで高く売れなかったかも知れません。

買い手にとっても売られた会社の中身をもっと調べたかったのに、とにかく成立を急いだせいで納得のいかない買い物をさせられる可能性というのもある訳です。

このようにM&Aというのは様々な利益相反だったり、問題点をはらんでいます。

実際に中小企業庁がまとめているM&Aに関して苦労した事例という事では、売り手の方では自社の正当な価値がわからないままプロセスが進んでしまったとか正式な譲渡価格が大幅な減額をされてしまった、買い手の側でもM&A後に交渉の過程で明らかにならなかった設備の買い替えが必要になったなど不満の声も聞かれています。

例えばこれが裁判だったら当然この被告側と原告側両方に弁護士がついて、それぞれの主張をぶつけ合うのですが、間に立っている人が一人だとそういう事も出来なかったりします。

同じような問題が不動産取引でも起こる事があるのですが、不動産会社は非常に沢山あるので気を付けていればそうならないようなところを選べます。

この中小企業のM&Aというところに関しては、まだまだ生まれたばかりの市場ですし、ブラックボックスになっている部分が非常に大きい訳です。

一方でこのM&Aというのは国が規制しているものではありません。

これはM&A仲介会社が自由にやっている事ですから、報酬というのも決める事が出来ますし、両手取引というのもなんら制限する法律はないという事になります。

そんな中でこれから想定されるこの中小企業のM&Aという動きに対して、中小企業は問題体を解決していかないといけないという事で、今回の河野さんの発言に繋がったのだと思われます。

しかしこれに対して日本M&Aセンターもただ黙って言われている訳ではなくて、対策は打っているという事を言っています。

というのも日本M&Aセンターの仕組みで、同じ会社の中に売り手の担当者と買い手の担当者がそれぞれ付いているそうです。

そして売り物があったとしたらAの会社が売りに出るという事になると、それもM&Aセンターの中で買い手を募集します。

すると色んな担当者が居ますからこの担当者がそれぞれ自分の顧客企業を連れてきて、ではこのBの会社が1億円で買う、Cの会社が2億で買う、Dの会社が3億で買うという形になると、最終的に社内コンペを行って、一番高い一番優良な提案に対して、この売り手の企業は最終的に売るという事になります。

3億円で売れるという事になるので少なくとも安く売ってしまうというような事態が避けられるという風に言っています。

実はこの社内コンペというところがミソで、それぞれの担当者の報酬というのはM&Aが成立するかどうかで非常に大きく変わってくるという風にされています。

3億円という提示した人だけが、自分の給料を上げる事が出来ます。

したがってこの担当者というのを本気を出す事になりますし、更には売り手の情報も買い手の情報も集めてこなければならないので、ますます営業担当者が頑張って自分の顧客企業の為に働く、インセンティブが働くという風に言われています。

彼らはそうやって報酬に対して強いインセンティブを持っています。

その結果の平均年収というもの日本M&Aセンターで1300万、M&Aキャピタルパートナーズで2200万、ストライクで1357万というかなり高い報酬を得ている人達という事になります。

実は私も経営者の人にお話を聞いた事がありまして、この経営者の方は日本M&Aセンターにをお願いして何社か会社を売却した事があるという事なのですけれども、日本M&Aセンターに関してはとにかく別格で、何故ならこの日本M&Aセンターにはこの買い手の情報がものすごく沢山あって、そこに対する担当者というのも優秀だという風に言っています。

だからこそ先程も言いました最大の企業である日本M&Aセンターには、色んな情報がありますから、案件も多く出てきやすいですし、担当者間の競争も働きやすいという事になります。

それもあって市場が伸びているというのもあります。

当然その中で日本M&Aセンターも伸びているという事になります。

両手取引は規制されるか

さて話を戻すと利益相反というのが今後どうなるのかという事についてです。

これはあくまで私の想定ですが、M&A仲介を規制する法律というのはなかなかありませんし、また今新型コロナでものすごく忙しい中でこの為の法律を新たにつくるという動きにはなかなかなりにくいのではないかと思います。

更に言えば多くの国民にとってこの企業のM&Aというところに対する関心はほとんどないでしょうから、敢えてわざわざ今法律を作るような事は非常に考えにくいと思います。

もし仮に両手取引が禁止されたとしたら当然受け取れる手数料は半分になってしまいますから、結構厳しいという事にはなるのですがすぐそのような状況になる可能性は極めて低いのではないかと思います。

更に言えば一般の消費者がこうやって何か損失を被る可能性があるのだったら、国にも動くという事になるのですが、そこで立ち会っているのは経営者ですから、経営者というと一定の判断が出来る人とされています。

そんな中で自由契約であるM&A仲介に口を挟むというのは、資本主義社会の国としてもあまり望ましくない姿なのではないかとい思います。

株価下落でもまだ高い

さて問題は株価でして今逆張りのタイミングなのかという事についてです。

長期で見るとやはり大きく伸びてきて今も高い水準にあります。

ここで17パーセント下がったと先程言いましたけれども、5年で見るほんのわずかな下落に過ぎません。

今PER見るとここにある通り89倍とかなり高い数字が出てきます。

過去の推移で見てもこの日本M&Aセンターは50倍前後というのが平均的には水準だったのですが、新型コロナ禍で株価むしろ上昇して、一旦100倍を超えてそれが80倍になったというところです。

割安かどうかという観点で言えばまだ割安ではないと考えますし、もちろん今後コロナで更に後継者不足とか事業を譲渡するというような動きが進んでくるでしょうから、業績の成長は十分に見込まれると思うのですが、例えば今のPER80倍から業績が倍になったとしてもPERが40倍という事になりますから、それでやっと過去の平均のPERぐらいという事ですから、あまり旨味のある状況では必ずしもないと考えます。

他の会社に関しても同様です。

これがPER50倍ぐらいで株価にして3500円ぐらいになったら、かなり美味しい水準なのではないかと思いますが、市場の拡大と両手取引の規制が無いという前提の話なので、まだまだそういう意味では逆張りするタイミングではないのではないかと思います。

これからますます株価が下がって3000円と4000円とか、それぐらいの水準になってきたらいよいよ長期投資家として検討出来るタイミングになるのではないかと思いますので、良い会社である事、更には市場の拡大が続いている事は間違いありませんから、そういった観点でこの会社と今後を見ていきたいと思います。

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