JT減配!でも大丈夫なワケ

YouTubeに動画をアップロードしました!

以下、文章化したものです。


今回は「JT」日本たばこ産業についてお話ししたいと思います。

JTは高配当株として知られていたのですが、ここにきてなんと上場以来初の減配を行ったせいで、多くの高配当株に投資する投資家ががっかりしています。

今後JTはどうなってしまうのかという見通しをこれからお話しします。

JT減配!タバコは”オワコン”なのか!?

JTが、2020年12月期に関しては一株当たり154円の配当で実施する事になっているのですが、一方で決算発表におきまして今年度2021年12月期に関して130円に引き下げるという事を発表しました。

JTというとに1994年に上場してからずっと増配を続けてきましたが、ここにきてなんと上場以来初の減配へとなってしまいました。

この減配の発表で株価は大きく値下がりしています。

終値で7.5%の下落となってしまいました。

一体何が起きたのかと言うと今年度2021年度の業績予想が悪化してしまったという事と同時に、配当の方針を変更したという事があります。

これまでは安定的な配当という事を重視して、とにかく減配はしないという方針だったのですが、ここにきて急に配当性向、利益に対して配当をどれだけ出すかという数字なのですが、この目安をこれまでは設定していなかったのですが、2021年から急に配当性向75%を目安とすると言ってきました。

2020年の実績が88%という実績となっているので、これを75%とした事で減配となりますし、また今年度の業績も悪くなるという事から、結果想定される2021年の配当は減配になってしまういう事です。

直近の業績が悪化しているという事、そしてJTの主要事業がタバコですが、タバコというと「正直斜陽なのではないか」「これから伸びる可能性は全然ないのではないか」「周りでも禁煙をしている人は多い」という声が聞こえてきます。

実際にタバコの喫煙率というのはどんどん下がっていて、更には健康にも悪いという事で市場から見放されている銘柄でもあります。

それが減益と減配という事でいよいよオワコンなのではないかという風に見られています。

しかし、タバコ自体の喫煙率というものは下がっていくとは私は考えているのですけれども、一方でこのタバコのビジネスモデルが終わった訳ではないという風に考えています。

何故かというとタバコ事業のビジネスモデルの本質というところにあります。

このようにタバコの販売本数というのはどんどん減っていくのですが、一方でこの会社が行っている事は増税やそれ以外のタイミングでタバコの値上げを行っています。

日本でも行っていますし海外でも同じような流れがあります。

これによって本数が減ってもタバコ1箱当たりの金額を引き上げる事によって、利益は確保するというのがタバコのビジネスモデルです。

これが結構美味しいビジネスモデルとなっていて、というのもやはり中毒性のあるものですから、一旦吸い始めた人はいくらタバコの値段が上がっても買う人は買います。

したがって本数が減りながら値上げした物を買うので、結果として利益率はどんどん上がっていく訳です。

世界中で同じことが起きています。

JTの戦略としてはこうやって利益を維持するだけではなくて、同じような状況にある海外のタバコ会社をどんどん買収していく事によって大きくなってきました。

実はJTの売り上げを見ると国内タバコに関しては26%しかなくて、一方で海外タバコの売り上げというのが62%を占めています。

既にこのようにグローバルな企業となっています。

先進国では日本も含めてなかなか厳しい状況があるのですが、中東やロシア系などの新興国ではまだかなり喫煙者が多かったりして、ビジネスとしてはまだ美味しい部分があるのです。

そういったところのタバコ会社を買収して大きくなって、そして利益を増やしていった、あるいは維持してきたというのがこれまでの流れという事になります。

それを表しているのがこのキャッシュフローの推移でして、この赤の折れ線グラフで示されているのがフリーキャッシュフロー、つまり会社が最終的に事業で生み出したお金から、投資したお金を引いた余力という事になる訳ですが、大きな買収なんかを行うと緑が大きく下に行ってフリーキャッシュフローも赤字になってしまうのですが、それ以外の時ではずっと黒字を維持しています。

この数字を見るとを4000億から5000億といった数字が並んでいます。

このフリーキャッシュフローが配当の原資となる訳で、現在の配当は大体年間で3000億円くらい払い出しているのですが、それに対しては4000億5000億のフリーキャッシュフローが生まれていますから、実は配当を出す余力はまだ十分に残っている会社なのです。

なので極端な話をすれば配当性向が100パーセントであっても、特に財務上は問題ない水準だという風に考えられます。

また業績が悪化していると言いましたけれども、実態のところはそんなに悪化しているという空気がなくて、こちらが2020年度の業績のプレゼン資料ですが、これを見る通り為替一定調整後営業利益が前年度比プラス5.5%となっています。

もっとも表面的にはマイナスとなっているのですが、ここに関してはプラスという事になっています。

これはどういう事かというと、JTが海外に多く進出していると言いましたけれども、その進出している国の通貨が下落して、結果的に表面的な数字として表れるものはマイナスになってしまっているという事です。

特に大きな影響を与えているのがロシアのルーブル、それからイランのリヤル、そしてトルコのリラです。

これらの通貨が今新型コロナ、イランに関しては経済制裁の影響なんかもあって非常に大きく下がっています。

これが JTの表面上の業績に大きく影響しています。

しかし企業の実態というのはキャッシュフローで見るというのが最も的確なものだという風に言われていまして、その点ではこのフリーキャッシュフローが大きくプラスで推移している限りはそんなに大きな問題はないという風に考えられます。

リストラ、そして「仁義」の減配

一方で今回の件で大きく影響しているのが国内の不振という事になります。

国内ではJTが想定した以上にタバコ離れが進んでいて、また紙巻タバコから加熱式タバコへの流れというものがあります。

この図表を見ていただくと実はこの紙巻タバコ(RMC)はJTの販売本数でいうと、なんと9%のマイナスという事になっています。

年間10%近く市場が小さくなっていくというのは、これは大変な事で当然そこに余剰の設備だったり余剰人員というものが生まれてきます。

それが2021年の業績に影響してきまして、ここにあります通り国内たばこ事業の競争力強化に係る施設関連費用計上370億円とあります。

ここには退職推奨、および希望退職の募集に伴う引当金、それから日本の国内のタバコ製造工場及び、フィルター製造工場の廃止等に係る減損損失という風に書かれています。

これはざっくり言いますとリストラです。

人が余剰になってきたので退職金を積み増して早期退職してもらったり、あるいは同時に工場を閉鎖する、それに伴う減損損失というのが生まれてくる訳です。

但しこれらのものは一時的なものですし、特に工場の閉鎖に関してはこれから追加的なキャッシュアウトが生じる訳ではないので、JTの財務には大きな影響はないという事になります。

リストラに関しては『3000人規模で人員削減 九州工場を閉鎖 たばこ事業縮小』という日経の記事も出ていますが、これは実は既定路線でしてここのように社員数も減れば工場数もどんどん減ってきたというのがこれまでの経緯になります。

最近のタバコ離れの加速によって、これが想定より早く進んだという事ではあろうかと思います。

一方でタバコのビジネスモデルというところに挙げた通り、こうやって本数は減っても値上げによって利益を確保出来ますし、またこうやって需要を無くなった設備とか人員を減らす事が出来ればコスト削減によって、利益が少なくとも維持出来るというのはビジネスモデルという事になります。

このリストラと配当というのは実は密接に関連しているという風に考えます。

というのも早期退職を募るにあたって、一方で配当を減らさずに利益以上の配当を出すという事になると、まだ余裕があるのにリストラを行っているのかと風に、従業員からの反発が出かねない訳です。

なのでかなり日本的な考え方ではあるのですが、リストラをするからには当然株主もその痛みを伴ってもらわないといけないというこで減配を行ったという風に見えます。

ある人がツイッターでこれを『仁義』と言っていたのですが、まさにこのリストラに対する仁義という事で、配当が一時的にでも減らされたという事が挙げられます。

そのリストラの効果がどのように出てくるのかと言いますと、上記にあります通り全ての施策がほぼ完了する2023年には年間約400億円を見込む(2019年比)とあります。

つまり2019年に対してこの2023年には400億円コストが減って、利益が上乗せされるという風に言えます。

その場合どうなるのかというと、これは過去の業績推移ですが、2019年に対して利益は400億円増えるという事ですから、この赤のラインで示したところまで利益が増えるという事になります。

これは過去最高水準に近いというところになると思いますし、またこのぐらいの営業利益が出れば、純利益から換算したEPSはおよそ200円となります。

それに対して今の方針である配当性向75%という風になると、配当150円という事になります。

昨年度の配当が154円ですから2023年には結局このぐらいまで戻ってくるという事が想定される訳です。

配当が目的なら心配なしか

以上の話をまとめますと、まずはJTの財務は言われているほど厳しくないですし、ビジネスモデルを考えると今後も安定したキャッシュフローを生み続けるという事が考えられます。

今の業績の落ち込みは国内事業が急にシュリンクした事による、リストラ費用が一時的に計上したされたという事と、海外の通貨が下がってしまっているという事になります。

また一方ではこの減配の理由としては国内をリストラする為の、仁義を切ったのではないかという事が考えられます。

このリストラが終わるとやがては増益要因という風になり得ますから、このリストラが終わった暁にはまた配当も元ぐらいの水準には戻るのではないかという事は想定されます。

そういった意味で配当目的で投資している投資家にとっては、そんなに心配する必要がないのではないかという事が考えられます。

実際にこの130円という配当をベースにすると、配当利回りは尚6パーセント程度あります。

そんなに株価の変動を気にせずに配当を受け続ければいいのではないかという風に考えます。

高配当株投資というのはそもそもあまり成長が見込めないところから、一方ではキャッシュがどんどん生まれてくるといったものを絞り出していくと、成長には期待せずに淡々と配当を受け続けるというのが好配当株投資の特徴になりますから、それを考えるとなんら慌てるものではないという事になります。

もっとも別の動画で解説しているのですが、私自身はJTを持ってはいるのですが高配当株投資は過去やっていたものは辞めてしまいました。

というのもどちらかいうと成長する銘柄に集中したという事になります。

どっちが良いという事ではなくて配当によるキャッシュフローというのは非常に大きいですし、一方では高成長によるキャピタルゲインというのはこれは上手くいけばかなり大きなリターンが見込めますが、一方ではリスクがあるという事になりどちらも天秤にかけて、自分に合った投資手法というのを選べば良いという事になります。

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4 件のコメント

  • いつも大変勉強になる情報をありがとうございます

    JTで気になることがあります
    それは、たばこによる健康被害です
    グローバルにマーケットを広げ、シェアも高い・・・海外から訴えられたら相当な罰金が科せられるのではと思います
    なぜ、アメリカやロシアがJTのタバコを買うのか・・・儲かるなら自国のタバコ産業を育成するのでは・・・時期を見て訴えるのでは・・・とよからぬ詮索をしてしまいます
    膨大な金額を請求されたら、一発でJT(つまり日本)資産が海外に持っていかれそうで、別の意味で怖いです

    • ご指摘はごもっともで、これまでもそうでしたし、これからも同じ問題が残ります。
      一方で、これまで大丈夫だったという経緯もあります。これは、どの国にとってもたばこ税が貴重な収入源となっているからです。
      とはいえリスクはどのような銘柄にもありますから、その中でJTはマシな方だとは思います。

  • ありがとうございます。
    配当目当てで1万株以上保有しています。
    減配と先行き不安で動揺していましたが、少し落ち着かせていただきました。
    130円の配当は、まだまだまだ有難く思っております。

  • ありがとうございます。
    配当目当てで1万株以上保有しています。
    減配と先行き不安で動揺していましたが、少し落ち着かせていただきました。
    130円の配当は、まだまだまだ有難く思っております。

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