金融緩和=貨幣価値の低下
今週は「これからインフレが起きるか」について書きたいと思います。
コロナ禍における経済対策として、各国が金融緩和の度合いを強めています。金融緩和には「質的緩和」と「量的緩和」があります。質的緩和とは主に金利を引き下げることで、量的緩和とは市中に出回るお金の量を増やすことです。
金利が下がると企業や個人がお金を借りるハードルが下がりますし、お金の量(=銀行の手元資金)が増えると銀行もお金を貸しやすくなります。政府はこれによってお金を使う企業や個人が増え、経済が活性化することを期待しているのです。
しかし、歴史的に見ればこれが行き過ぎるとインフレを引き起こします。お金を手に入れるハードルが下がるので、みんなが欲しいもの、例えば石油などを先回りして買おうという動機が生じ、価格が上昇します。物への需要に対し、貨幣の供給が上回るためです。これは同時に「貨幣価値が下がる」ことを意味します。
貨幣価値が急激に下がると、経済は混乱します。預金が価値を失ってしまい、年金生活者は生活に困窮することになってしまいます。ソ連崩壊後のロシアでは、インフレにより年金生活者が家庭菜園でしのがなければならない事態が発生しました。
目下行われている異常なほどの金融緩和を考えると、私たちは将来インフレが発生する可能性に今から備えなければならないのです。
原油価格↑、長期金利↑、金価格↓が意味すること
ところが、ここにきてそう簡単にインフレにならなそうな気配も漂っています。
まず、金融政策です。歴史上多くの国がインフレによる社会の混乱に苦しめられてきました。そのため、インフレの予兆を察知すると、政府・中央銀行はすかさず金利を引き上げ、金融緩和を終了させる可能性があるのです。
米FRBは、インフレ率2%までは大規模緩和を続けると言及していますが、逆に言えば2%を超えると金融緩和を終了させる可能性を示唆しています。
足元では原油価格の上昇が見られます。原油は世の中のさまざまな商品に関連しますから、これが上がれば物価の上昇は避けられません。そこへ原油価格の上昇を見込んだ投機資金が流れ込めばますますの混乱を招きますから、政府・中央銀行は必要な措置を行うでしょう。
この状況を見越してか、長期金利は引き上がりつつあります。金融市場は常に政府の動向に先回りして動こうとするからです。この辺りは、原油に限らず不動産価格についても同様のことが言えます。
また、インフレに対する備えとして代表的なものが「金」です。
コロナ禍の当初、金価格は一時急激に上昇しました。しかし、8月をピークにひたすら下落を続けています。これは、投資家が「実はそれほどインフレにならないのではいか」と考えていることを示唆しているように見えます。
インフレとは別の意味の「貨幣価値の低下」
金価格の推移が示すように、これだけ大規模な金融緩和を行ってもインフレにならないということがあり得るのでしょうか。
その可能性を暗示しているのが、日本の状況です。日本の政策金利は、1990年代半ばに1%を下回ってから一度も1%を超えることなく推移しています。いわば、すでに30年近く金融緩和を続けている稀有な国ということです。
そんな状況の中で、皆さまご承知の通りインフレどころかデフレが長らく続きました。アベノミクスにより「黒田バズーカ」で一段の金融緩和が行われてからは何とかプラスに持ち直しましたが、目標の2%に届く気配はありません。
お金は安く借りられるのに、物価が上がらないとはどういうことか。それは、人々が消費に対する意欲を失っているからだと考えます。若者の自動車離れ、お酒離れなど、○○離れが叫ばれて久しいですが、これこそが消費意欲の減退を意味しています。
ではなぜ消費しなくなったのかと言えば、一応30台半ばの自分に言わせて貰えば、お金を使わなくても十分楽しめる要素が増えたからです。
インターネットやスマートフォンの発達により、通信料さえ払っていればほとんど「無料」で遊びを見つけられるようになりました。車がなくても必要な買い物はネットでできますし、飲み会をしなくてもSNSで友人とつながれます。
そんな状況下でこのコロナ禍です。飲み会はリモートになり、出勤もしなくて良くなりました。もはやお金を使って遊ぶ必要などなくなってしまったのです。いわば、インフレとは別の意味での「貨幣価値の低下」です。お金にあまり意味がなくなってしまったのです。これが、日本だけでなく世界中で起きているのです。
すなわち、いくら金融緩和を続けても、昔のようにインフレにはならず、かといってお金はあまり回らないので過去30年の日本のような低成長時代が世界中で訪れる可能性があるのではないかと考えています。
インフレになってもならなくても安心できる投資とは?
このような状況下で、株式投資家としてはどう考えたら良いのでしょうか。
実は答えは難しくありません。まず、インフレになるとしたら、きちんと売れる物を作っている会社なら物価の上昇にしたがって収益も増えますから、株価も上昇することになります。
逆にインフレにならなかったとして、必ずしもそれによって株価が下がるということでもありません。例えば、低成長時代が長く続いたとしても、世の中の変化に対応するため、あるいは人々が生活する上で必要不可欠な商品を作っている企業は業績を伸ばすでしょう。
実際に低成長下の日本でも、ファーストリテイリング(ユニクロ)やニトリなど、一部の対応した企業はしっかりと株価を伸ばしてきました。
これらは「デフレ銘柄」と総称されますが、そこは本質ではありません。これらの企業が成長できたのは、時代に対応して顧客が求める商品を作り続けた結果に過ぎないのです。
私自身この20年来、ユニクロやニトリの商品にはお世話になり続けています。それは単に安いからではなく、値段に対して必要なクオリティを満たし、そしてどこでも手に入る安心感があるからです。いずれも強烈なカリスマ経営者の企業ですが、彼らが健在な限りこれからも伸び続けるでしょう(株価には割高感が漂いますが)。
個別株投資家の強みは、この柔軟性にあると考えます。素晴らしい商品を作っている企業を適正な価格で買えば、インフレだろうと何だろうと、しっかりと株価は伸びていくものです。これは経済全体の情勢に左右されるインデックスでは得られない特権です。
今からあらゆる社会の変化に対応するため、ぜひ株式投資、できれば個別株投資を始めましょう。これをマスターすれば、経済で怖いものはありません。
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