パナソニック株は買い?売り?業績低迷の原因と今後の見通し

YouTubeに動画をアップロードしました!

以下、文章化したものです。


今回お話しするのは銘柄はパナソニックです。

この銘柄はもちろん皆さん知っている銘柄だと思いますし、持っている方、あるいは買おうかどうかと考えている方も多いのではないかと思います。

そもそも何故私がこのパナソニックを取り上げようかと思ったかというと、気がついたら家の周りの商品がパナソニックの製品だらけになっていたという事が挙げられます。

具体的に言うならば冷蔵庫、それから電子レンジ、コーヒーメーカー、更には空気清浄機、そしてインターホン電話といった家の中のありとあらゆるものが、気がついたらパナソニックだらけになっていました。

一定以上の品質があり、欲しい機能があるという事を考えたら、結果的にパナソニックを選ぶという事で、それほど日本人の生活様式には非常に馴染んだ商品を作っている会社だという実感が持てます。

ただパナソニックでやっているのはそれだけではなくて、幅広く事業を展開しています。

ここにあります通り、事業セグメントとしては主に5つありまして、アプライアンス、ライブソリューションズ、コネクティッドソリューションズ、オートモーティブ、そしてインダストリアルソリューションズという5つの事業モデルとなっています。

カタカナで非常にわかりにくいというところがあると思いますが、『アプライアンス』に関してはいわゆる家電です。

エアコン、ドライヤー、テレビ、ショーケースとあります。

『ライフソリューションズ』というといわゆる家の中の住宅設備です。

照明器具や配線器具、システムキッチンそして空気清浄機、これらは家電ではなくてライブソリューションズに分類されています。

『コネクティッドソリューションズ』は航空機内エンターテイメントシステムとありますが、国際線なんか乗るとをよく有ると思うのですが、モニターをパナソニックが提供していたりですとか、統合ライン管理システムは工場なんかで使われるやつです。

それからプロジェクター、パソコン、タブレットは業務用が中心なんですが、この辺りもパナソニックで製作しているという事です。

それから最近では『オートモーティブ』という事で電気自動車、あるいは自動運転、更には車内が色々な電子製品で埋め尽くされているという状況が進んでいるので、それに対しても手を打っていまして、コックピットシステム(運転席にある様々なシステム)ですとか、車載用電池は今をときめくテスラと共同で電池を作って納入しています。

あとは『インダストリアルソリューションズ』という事で、細かい部品、あるいは電池などを提供しています。

伸びない業績。なぜ?

このように幅広いビジネス展開しているのですが、一方では業績というのは必ずしも芳しくありません

このように過去十数年の業績を見てみますと、売上高に関してはほとんど伸びていないですし、利益も上がったり下がったりを繰り返すという事で緩やかな衰退と言ってもいいのではないかと思います。

事業別に見ますと売上高に関してはかなり均等になっていて、一方で利益率のところに大きな差がありまして、アプライアンス家電のところは昨年度利益率2.5%で、あんまり儲かっていません。

ライフソリューションズは10%近くてわりと儲かっています。

コネクティッドソリューションズ部品のところもわりと儲かっているというところがありますが、一方でこのオートモーティブはこの車載用電池は今どんどん売上高が伸びているというところがあるのですが、利益に関しては赤字という事で、なかなか厳しい環境にあります。

では業績の低迷の理由とは何なのかという事について私なりに分析してみました。

一つは家電部門の世界的競争激化という事があります。

家電というと日本で言うとパナソニックやソニー、日立、東芝、三菱電機といったいわゆる総合電機と言われる所が提供してきたのですが、日本にも様々な外国の物も入ってきていますし、機能を絞った物で言えば最近ではアイリスオーヤマなんかが非常に人気で、一方で高級なところで言えばバルミューダですとかそういった物がどんどん入ってきています。

とはいえ日本ではかなり高いシェアを誇っているのも間違いないのですが、ただこれが海外でウケているかというと決してそうではないのです。

日本向けにカスタマイズして色んな高性能な物を付けてきたのですが、日本人はそれでいいという事になっても、海外に関してはそんなに機能はいらない、電子レンジは温められればいいと考えている人も少なくありません。

その結果海外では韓国のLG電子とか中国のハイアールといった機能を絞って価格を抑えた物が売れていたりします。

その結果パナソニックの家電というのはほぼ日本でしか売れていないという状況です。

パナソニック全体の売上高で見ても国内の売り上げがおよそ半分という事で、国際競争力は必ずしもない。

そして日本の市場というのは必ずしも伸びていませんし、その中でこの高機能競争という形で高機能とそして値段の競争というのが家電量販店で常に行われていますから、なかなか利益を取りづらい分野になってしまっているという事が挙げられます。

更にはバラバラな事業構成というところがあります。

どこの分野で伸ばすかというのがはっきりしていません。

それぞれの事業でそれなりの製品を出しているのですけれども、ここが儲かってここに全力投球するというようなそういった状況ではありません。

一方で、常に赤字を垂れ流すような事業も多くあったりしますが、それらが放置されて結局なあなあになってしまっている、そういう大企業病的なところも少なからずあると思います。

これは元々パナソニックは松下電器でしたけれども、松下電器、松下電工、かつて買収した三洋電機、これらが買収で膨らんできたのですが、整理されないまま融合が遅れてしまっているというのが、一つ原因としては上げられるという風に考えられます。

その中で不採算部門の継続

本当はもっと大胆にリストラしていかなきゃいけないのですが、特にM&Aを行った時なんかはそれによってシナジーを出すというのが王道なのですけれども、それが出来ずに不採算部門が継続してしまっていると、株主としては望ましい事ではありません。

更には電池部分は成長分野と見込まれているのですが、正直客観的に見ればテスラに良いように使われているなと思います。

テスラとしては安く納入したい訳ですから、ハッパをかけられて無理しながら安い価格で納入させられているという実態があるのではないかという風に思います。

テスラというと世界を股にかける、そしてイーロンマスクというとんでもない経営者がいますから、そこに流されているという側面がなきにしもあらずというところがあると思います。

構造改革でコスト削減。成長はできるか

そんな中でこれじゃ駄目だという事で構造改革も実施しています。

例えば半導体事業はもう完全に譲渡してしまいましたし、希少パネルは生産終了、これらは規模がないとなかなか儲からない事業ですから、中途半端な所でやっていく必要性もないという事です。

それからソーラーや、テレビ、照明は決して儲かる分野ではなくなってしまったので、縮小、あるいは最適化という形で構造改革を実施しています。

その結果コスト削減はできています。

直近の方で見ましてもこのコロナ禍の中で一部の売り上げ落ちたのですが、一方ではこのコスト削減が効いたおかげでセグメントによっては増益になっているところもあります。

ここにあります通り構造的赤字事業によって、年間150億円まで損益が改善されるという事になっています。

固定費の削減、様々ないらない物を削った結果年間300億円削減するという事になっています。

これらは合わせて450億円もの営業利益の改善に寄与をするという事。

必ずしもそうなるとは限りませんけれども、かなりの割合で利益を改善させる力があるという事になります。

これは構造改革を続けていけば少なくとも利益率という点に関しては、結構改善する見込みがあるのではないかという風に思われる会社です。

先ほど構造改革で営業利益が450円億円ぐらい改善すると言いましたが、これまでの利益に関して言えば構造改革が効いた結果、直近でも300億円。

数百億円の営業利益の会社ですから450億円これが丸々利益になるとしたら、かなりの改善である事は間違いない言えます。

ただ利益が改善しただけで、それは結局駄目だった事業を売っているので、これだけでは決して成長はありません。

世界中の競争は激しいですからうかうかとしていたら、どんどんシェアを奪われてしまいます。

そこで何らかの成長をしていく必要があるのですが、その課題としては車載電池に関しては、正直かなり厳しい収益環境になっています。

ましてこの世界中で車載電池の競争が起きているという事から、収益性が本当に確保出来るのかというような課題があります。

またこの住設や家電に関しては国内は正直市場としても頭打ちで、どんなに頑張っても伸びるのが難しいという事になります。

一方でコロナ禍で大きく売れている物がありまして、それが空気清浄機です。

パナソニックの「ジアイーノ」というウイルスを退治するというような事を謳った空気清浄機を出しています。

それが中国でも日本でもバカ売れしています。

中国というともともとPM2.5の問題とかで空気に関しては、かなり敏感に対処をしています。

もともと外の空気汚いというところもありますから、室内ぐらいは綺麗にしようという事この空気清浄機が売れているという事あります。

このコロナ禍を受けてすごく売れてて、直近の利益にも貢献しています。

またこの住宅設備や家電、これらを全部インターネットで繋げて、スマホで管理出来るというそういうシステムを作り上げる事が出来ればそれ自体がかなり強みになるのではないかという事が考えられます。

実際に今それを十分に行っているかというと、まだまだだという風には見えるのですが、その力を持った企業である事は確かではないかと思います。

ただ一つ気になるのはやはり国内が売上の中心という事ですから、これをどうしても世界に持っていかないと利益、業績を伸ばしていくのは難しいです。

それだけの力と意欲があるのかというところであります。

また、BtoBという事に関してはそこそこ儲かっています。

馴れ合いだけでやっていたらそうそう利益が伸びるものではなくて、新たなの顧客を開拓してどんどん利益を伸ばしていく必要があります。

図で表しますと例えば成長率と収益性というマトリックスを取ると、今それぞれの事業はこういった状況ではないかと思います。

住宅や家電に関しては成長性も収益性もそんなにないというところだと思います。

BtoBに関しては収益性はそこそこありますが、このままでは成長するのは難しいです。

車載電池に関してはどんどん成長するという事が想定されていながら、収益環境に関して直近では黒字になったというところもありましたけれども、基本的にはまだ赤字で、しかも競争が厳しいという事になっています。

車載電池に関してはもっと何とかして収益性を出さないといけないという事になりますし、この住宅家電についてはもっとIOTとかそういった物で先進的な商品、あるいはユーザーの心にもマッチした製品という物を作っていく事で、収益性、あるいはもっと売れる商品としていかなければなりませんし、BtoBに関しても新しい顧客を捕まえなければいけない、これらがやはりパナソニックの課題という事になってきます。

特にBtoBの分野に関しては直近で手を打っている物がありまして、7000億円をかけてアメリカの「ブルーヨンダー」という会社を買収するという報道が出ています。

このブルーヨンダーという会社がサプライチェーンを供給網の効率化を手がける米ソフトウェア大手という事ですから、 BtoBの分野に関しては成長をするという事で一つ手を打ってきたという事が考えられます。

しかし、株式市場はネガティブに反応しています。

やはり7000億円というのは高すぎるのではないか、まして売り手がブラックストーンとニューマウンテンキャピタルというファンドです。

ファンドの目的というのはとにかく高くこの株式をパナソニックに売るという事が目的ですから、パナソニックとしては高値づかみになってしまう可能性があります。

また来年度から社長が代わって新体制になるのですけれども、そういう時に景気良く一発打ち上げるかという事で、投資銀行なんかがこの会社買いませんかという事で結構売り込んできます。

それに乗せられて買って結局利益を出せずにグダグダになってしまったケースが後を絶ちません。

そもそもこのM&Aの成功率は3割という風に言われています。

なのでそういった環境には結構を注意する必要があるのではないかと思います。

求められるものは強いアピール!

株価ですけれども、業績低迷していた事から2018年をピークにずっと下がり続けていました。

コロナ前で少し戻りかけたのですがやはりガッツリ落ちたという事になっています。

しかし直近では市場全体が好況という事もあって、パナソニックのようないわゆるバリュー的な株と言われるところでも、株価が戻ってきまして、今1300、1400円前後という形になっています。

表面的なPERを見ると20倍程度という事で、少し割安ではないようには見えるのですが、これは目先のコロナの影響も受けた業績に対するPERですから、やはり少し調整してみる考えが必要です。

直近で構造改革によるコスト削減が進んでいると言いましたが、それを元にどのような業績になるかという事を想定してみたいと思います。

かなりポジティブに見積もった数字だという事はご理解下さい。

直近の売り上げ予想がコロナの影響を受けて6.6兆円ですので、上手くいって7兆円ぐらい出たとしましょう。

それで今の営業利益率が3、4パーセントというところなんですが、これが構造改革が効いて6%出たとしましょう。

すると営業利益が420億円、そこから導き出せる純利益およそ300億円という事になります。

今の時価総額がおよそ3.2兆円ですからこれを純利益300億円で割る事で、PER10.7倍という数字が出ます。

株式に馴染みがある方だと比較的分かりやすいかと思いますが、PER10.7倍という事になると比較的割安な数字と見る事が出来るではないかと思います。

もっともかなりポジティブな見積もりに対して10.7倍ですから、そういった意味では今の株価とわりと妥当なのかなというところが私の考え方です。

確かに言える事は、少なくとも構造改革で利益や維持される分にはそんなに割高ではない、急激に下がるというようなものではないと思うのですが、一方では成長性がないとそこから上がるのは難しいという事になります。

ここからは私の意見ですが、パナソニックはまだまだ厳しい環境に置かれているという事は確かだと思います。

何故ならこれから大切になる成長分野と目されているところは車載電池という、何とも競争の激しい業界な訳です。

今間違いなく行われている事はイーロンマスク率いるテスラによって、良いように使われているというのが正直な印象です。

そのテスラもかなりしたたかで、パナソニックだけと一緒にやっているわけではなくて、実は中国の世界最大の車載電池会社と言われる、CATLとも取引をしているという事です。

また中国にはBYDという自ら電気自動車も作っている電池メーカーもあります。

これらに対して特に中国は今国内で電気自動車をとにかく世界一の市場にしようという事をやっていますから、もちろんそんな中ではパナソニックよりもCATLとかBYDの方が当然有利になってきますし、利益度外視でシェアを取るという事が大切にもなってきます。

規模の経済が間違いなく効いてくるところですから、そこが重要になってくるという事になってそれを中国の習近平の後押しでどんどんやっていくという事になりますと、やはりパナソニックとしては利益売上増がずっと続くという可能性もある訳です。

そうなってくると先ほどの資産はあまり使えなくて、利益はもっと下がり続けて、しかもいつ利益を取っていったらいいのかわからないし、負けてしまったらもマイナスで終わるという事も十分考えられます。

それに対してどちらかというと安定的に期待出来るのは、住宅設備とか空気清浄機を始めとする家電という事になります。

そちらで先進的なIOTの製品とかを出し続けていく事が出来れば、パナソニックといえばこういった家電設備だという事をアピールしていけるのではないかと思います。

現状のところそこまでのアピールには正直至ってないと思います。

私もパナソニックのCMを見ていてもまだ洗練されてないなというところを感じますし、また決算説明会なんかを聞いても正直受け答え聞いているとどこか経営者が他人事なのではないかと思えてきます。

例えばテスラに関して質問を受けた時には、テスラなんか十分な知財を持っていないという事を言ったり、中国勢に関してもあっちは CATLが強いけど、うちはこっちが強いから大丈夫だよという事を言ったり、どうも危機感や当事者意識というものを感じられません,

今度社長が交代するという事でその先どうなりますかという質問を受けたら、それは次の社長に聞いてくださいみたいなものすごくドライなやり取りをしていました。

こんな状況であるうちはまだまだ成長というのは難しい気がしています。

今の構造改革に関してはこれは利益を間違いなく増やすものですから評価しているのですが、そこから先も力強さを感じられるという状況ではないというのが私の見立てです。

まとめますとコスト削減は一定の効果生んでいますし、それを踏まえた株価に関してはかなりポジティブに見た場合ですけれども割安感はある、少なくとも大幅に割高という状況ではないので大きく下がるという可能性は限定的であろうというところです。

一方で成長分野である車載電池に関してはいばらの道ですから、果たしてどうなっていくのかという事、場合によってはどろ沼にはまり込んでしまう可能性があるという事、それから住宅分野で力を発揮出来ればいいのですがまだまだそこには至ってない、これからの状況によく注意が必要という事になります。

Print Friendly, PDF & Email

気に入ったらシェアしてもらえると嬉しいです!

コメントを残す

Popular Article - よく読まれている記事Popular Article

  • 【紅麹問題】それでも小林製薬の株価はなぜ暴落しないのか
    今回は小林製薬を改めて取り上げます。 前回、小林製薬を取り上げてから約3ヶ月が経ちましたが、そこからの進捗と、今何が起こっているのかを示して...
  • 本田技研工業 配当利回り4% PBR0.65倍は投資チャンスか?
    本田技研工業(以下、ホンダ)の株価が好調です。 出典:株探 月足チャート 過去20年の平均PERは約10倍ですが、24年7月9日現在のPER...
  • 配当利回り 3.4%のキリンHDに投資して良い?成長性を考える
    今回は国内大手のビールメーカー、キリンホールディングス(以下、キリン)を分析します。株価は2018年にピークをつけた後、2,000円前後でほ...
  • 半年で株価30%下落のヤマトHDに何が起きている?投資するべきか?
    日経平均が2万2,000円をつけるなど日本市場が盛り上がる中、冴えない企業があります。それはヤマトホールディングス(以下、ヤマト)です。20...
  • 三菱重工が好調!その理由をアナリストが解説
    今回は三菱重工についてです。 これは過去2年のチャートですが、500円台のところから3倍以上に伸びています。 三菱重工に何が起きているのか、...

Article List - 記事一覧Article List

カテゴリから記事を探す