楽天、日本郵政との提携で起死回生なるか?モバイル事業の見通しと適正株価

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以下、文章化したものです。

 


今回は楽天についてお話ししたいと思います。

日本郵政が楽天に資本出資を行って、両者が業務提携を行う事を発表しました。

これによって楽天の株価は大きく上がっているのですが、今後楽天の株価や業績がどのように推移していくのかという事についてお話ししたいと思います。

「楽天モバイル」の存在意義が消滅?業務提携は菅総理から三木谷社長への謝罪?

まずこれがプレスリリースの文章です。

日本郵政グループと楽天グループ資本業務提携に合意とあります。

これによりますと両社はこれまでも事業上の関わりはあったのですが、日本郵政が楽天に資本出資を行う事で、これまで以上に協力関係を築くという風に言っています。

何に関して協力関係を築くのかというとここにあります通り、物流、モバイル、そしてDXという分野に関してです。

物流というと楽天市場でやっている商品の配送なんかを日本郵政と協力して行うという事、更には楽天モバイルを今積極的に展開していて、これを郵便局の店舗の中でも売れるようにする、更には楽天が持っているITの知識を生かして、日本郵政は古い企業ですから、こちらのDX化を図るという事で両者が協力すると言っています。

これに対して日本郵政と楽天が資本関係を結んで、一方的なものなのですが日本郵政が楽天に対して1500億円、持ち株比率にして8.3%の出資を行うという発表をしました。

これによって楽天の株価大きく上昇しまして、これまで横ばいだった株価が1200円程度から1500円程度のところまで一気にと上がるというプラスの反応を得ています。

ところがこの提携なんですけれどもこの文章を見る限り、私はそんなに大したものではないのではないかという風に見ています。

というのもそもそもこの日本郵政と楽天というのは既に提携をしていて、楽天市場に出品しているお店の商品を運ぶというのはすでに行っていました。

ここにあります通り楽天フルフィルメントセンターの利用拡大、および日本郵便のゆうパック等の利用拡大に向けた日本郵便、楽天両社の協力取り組みという風にあります。

これは何もわざわざお金を出してまで協力せずとも、十分に出来ていた事でありますし、更に言えば8.3%程度持ったところでは経営権にも影響を与える数字ではないので、どういう意味があるのかは疑問です。

これを理解する為には今の楽天が置かれている社会的な状況というのを見てみるとよく分かります。

まずこの楽天の業績なんですけれども見てみて下さい。

売上高は右肩上がり順調に伸びているのですが、この赤の折れ線グラフで示した営業利益に関しては2019年12月、それから2020年12月と大きく下がって、なんと直近ではマイナスとなっています

この赤字となっている最大の要因がこのモバイル事業です。

すなわち楽天モバイルが本格的にキャリアに参入するという事で、今あちこちに基地局を建てています。

その基地局を建てる為にお金が必要ですし、それが当然費用となって試算損益計算書に表れるので、毎期毎期赤字が膨らんでいる状況です。

売上高は伸びてはいるのですがそこまで伸びているという状況ではありません。

何故ならこの楽天モバイル、使用量によっては『1年間は無料』という事も謳って、あまり売り上げには貢献していないというところがあります。

この結果業績が赤字なのですが、それでも楽天が元々ある程度の勝算はあったのではないかという風に思われます。

何故かというとこの通信事業というのは最初の設備投資は多いのですが、やがて設備が整って、そして人々が携帯の契約をするようになったら、あとはどんどん使用料収入が入ってくるという事で、潤沢なキャッシュフローを生むというそういうビジネスモデルです。

したがっては当初の赤字というのは将来の事を考えるとそこまで大きな問題ではないはずでした。

ただここで大きく風向きが変わってしまいました。

菅政権が誕生した時に携帯電話料金の引き下げをするという事で、各携帯電話会社にプレッシャーをかけました。

その結果このようにドコモだったらahamo、それからauだったらpovo、そしてソフトバンクはこのLINE MOをという形で、20ギガ2980円というようなこれまでと比べたら低価格の料金のプランを打ち出してきました。

2980円というのはまさに今は楽天が募集している楽天モバイルの金額そのものですから、楽天の存在意義がなくなってしまいます。

同じ料金になったら皆さん楽天に入りたいと思いますか?それともドコモに入りたいと思いますか? 

その結果は一目瞭然ではないかと思います。

楽天もそもそも安値で参入しますけれども、最初はある程度の利用者がいないとそもそもインフラ事業として成り立ちません。

ある程度販売台数を売れるようにならないと、iPhoneを取り扱えないという決まりがあるとも言われています。

そんな中でこの利用者を獲得する為に必死にやっていたのですが、このようなプランが誕生してきた事によって、一気に窮地に陥ってしまいました。

実はこの楽天というのは現政権であります菅総理と、楽天の三木谷社長はツーカーの仲、非常に仲が良いと言われています。

それを示しているのがこの記事でもあったりするのですが、これまでも度々この2人会っているという風に言われています。

直近ではGOTOトラベルもここに噛んでいると言われていまして、GOTOトラベルで楽天トラベル、GOTOイートで楽天のぐるなびでを利用するように三木谷さんから言われていたという風に言われています。

場合によっては「閣僚に三木谷さんが入る」という事すら噂されていた程です。

一方で菅総理が誕生した時に料金引き下げの圧力がかかって、結果総務省とやりとりもあったかもしれませんけれども、ドコモが料金を引き下げるという風になってしまいました。

もともとこの通信事業への参入というのが菅総理と三木谷さんの中で肝いりで始まった策だとすると、楽天にとっては完全にはしごを外されたというような形になってしまっています。

三木谷さんとしては安値で顧客を獲得して、そして楽天経済圏へ囲い込んで、その上で他の三社並みに値上げしよう、利益を確保しようという風に考えていた事だと思います。

ところがここで他の会社が大きく料金の引き下げに走ったという事で、想定出来なくなり先が見えない状況になっています。

もちろんそもそも楽天が通信事業に参入するというのも菅さんの案だったと言われています。

楽天が料金引き下げ競争に入る事によって、他の各社も下げるという事を期待していたのだと思います。

しかし実際にそれはなかなか出来ず、結果総理になった瞬間大きく拳を振り上げて料金を引き下げさせるというような事になった訳です。

ここで楽天はまさにはしごを外された格好なのですが、もしかしたらこの1500億円をほぼ無条件で渡しているような格好の日本郵政の出資は三木谷さんに対してはしごを外した事に対する謝罪の意味もあるのではないかという風な事が考えられます。

その辺りはもちろん藪の中なのですが、そういった動きがあるとそういった関係があるという事は知っておいた方がいいと思います。

『楽天経済圏』は盤石。モバイル事業はマイナス要因か

さて楽天の事業の中身ですが、実は今トータルでは赤字ではあるものの、その他の事業は比較的好調で、特にこのコロナ禍でECつまり楽天市場のインターネットショッピングというのは前年同期比第4四半期で35.1%、通期で見ても20%ぐらい売り上げが伸びていて結構好調です。

それからフィンテック、楽天カードですとか、楽天銀行、楽天証券といったところも非常に好調です。

みんなインターネットで取引するようになって、クレジットカードが必要なので楽天カードどんどん伸びていますし、シェアもなんと楽天カードが2割を占めているという風に言われています。

この会員数も2100万を超えたという事で国民の6人に1人は楽天カードを持っているという状況になっています。

更に銀行も口座も増えて給付金なんかもあったので、口座残高もどんどん増え続けて、最短となる6カ月で1兆円の積み上げ、決済の件数も増えています。

それから楽天証券です。

コロナ禍で株価が一気に下がったところで、多くの個人投資家が参入して今上昇が続いている中で更に口座の開設増えていると言います。

新規開設数では実はSBI証券を抜いて1位になっています。

何故これだけ調子が良いのかというと楽天経済圏というところがある訳です。

楽天ポイントは銀行も証券もカードも楽天に纏めてしまうとがっぽがっぽとポイントが貯まる状況になっています。

私もその恩恵を受けているのですが、本当にこれまでのポイントの概念を覆すぐらい大きく貯まってきます。

そんな中で楽天経済圏の一つとして楽天モバイルを加えようという画策をしているのですが、一方ではその楽天モバイル単体ではもはや利益を出すのはなかなか難しいのではないかと見られているのではないかと思いますし、私もそういう風に見ています。

もしかしたらどこかで撤退するというような事も考えなければいけない状況ではないかと思いますが、このように同じ料金だったらドコモからわざわざ楽天に移るというような事をする必要はありません。

もしそういう事になったとしても、一旦顧客を囲い込んで、その後じわじわと分からないように値上げをするというのが策だったかもしれませんけれども、もはや少なくとも菅総理いる内は各社値上げという措置には出られない訳です。

少なくともモバイル事業に関しては私はなかなかプラスの要因になりにくいと思ってまして、場合によっては今後泥沼化する事によって、企業価値に対してマイナスの要因になるのではないかという事すら考えています。

楽天の企業価値を試算。今の時価総額と照らし合わせると…

ではその時に楽天の企業価値はどうなるのかという事を少し試算してみました。

ちょっと専門的になるのですが、EV/EBITDAというのがあります。

これが減価償却費などを反映して企業全体の価値を見つめて、そこから有利子負債を差し引く事によって時価総額を想定するという手法になっています。

セグメント別に見ますとこの減価償却費、および償却費というのは出ていますから、これをセグメント損益と足す事によって、簡易的にこのEBITDA(償却前営業利益)を出す事が出来ます。

モバイル事業は算定が難しいので何も考えないという事にしています。

この国内ECインターネットサービス事業に対してはこの400億+300億で約700億円のEBITDAとなります。

更にはこのフィンテックですね。

これが800億の営業利益、そして460億の償却費という事で1300億円のEBITDAという数字になります。

これに対してモバイル事業を除いた時の有利子負債という事で、これが本格的にこの投資が始まって有利子負債が今増えているのですが、有利子負債が増える前とします。

増える前の有利子負債がモバイル事業を除いた有利子負債だと考えて、1.2兆円という数字を出す事が出来ます。

ここから先の計算ですが、【EBITDA×EV/EBITDA倍率】です。

この計算で、負債も含めた企業全体の価値を出す事が出来て、そこから有利子負債を差し引く事で想定する時価総額を算定する事が出来ます。

これを計算しますとEBITDAが1300億と700億を足して2000億、これにITの平均、甘めに見積もっているのですが12倍から15倍という数字をかけて、有利子負債を除く前の企業価値は2.4兆円から3兆円という数字が出ます。

それにモバイル事業を除く有利子負債2兆円を差し引くと、適正とされる時価総額は1.2兆円から1.8兆円くらいが妥当なのではないかというのが私の試算です。

それに対して今の時価総額がどれぐらいあるのかというと、ここにあります通りに2.15兆円です。

私の試算からするとやはり若干割高感があるという数字になります。

もちろん今後モバイル事業が上手くいくようだったり、あるいはECの事業がもっと伸びるという事になれば、もうちょっと高く評価していいかもしれませんが、一方でこのモバイル事業のリスクというのは非常に大きくなっていると考えます。

それに対して今この瞬間にこれだけ上がった訳ですから、もしこれ持っている方がいらっしゃいましたら、前途多難という事ですからこの上がった瞬間に一旦売っておくというのが手ではないかと思います。

この上がりという事に関しても先程言いました通り、この提携の内容自体は正直そんなに大したことないという風に思える訳です。

それに対して今相場がものすごく好調で何か材料あればすぐにでも飛びつくという人達で溢れています。

その人達が飛びついた事によって株価が上昇したのではないかという風に見える訳です。

持っている方はここで一旦に利益確定するというのも手ではないかと思います。

長期的にこのモバイルが成功するかという事はまだ未知数という事になります。

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3 件のコメント

  • 鋭い指摘、目から鱗が落ちました。 ありがとうございます。
    然し穿ってみると、国会や既存メディアでは接待(総務省郵政系)問題やLINEの中国からの個人情報アクセス問題で延々と時間を費やしている一方で、本件は全く質疑にあがりません。
    二人は蜜月状態で、実は楽天(三木谷さん)は、何度か失敗している中国市場へ再チャレンジするためのワンステップのようにも思えます。
    中国はBaiduやAlibabaが国有化される中で再参入のチャンスと思っているのではないでしょうか? 

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