野村HD巨額損失の真相―アルケゴスのビル・ホワン氏の超ハイリスク取引

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以下、文章化したものです。

 


今回は野村ホールディングスが2200億円もの損失を計上したニュースについてお話ししたいと思います。

この損失の裏にはある投資家の存在があったのですが、この投資家の動きを見る事によって今金融市場が抱えているリスクというところまで理解する事が出来ます。

抜け駆けされた?損失のワケ

これはどういう事かというと、野村ホールディングスは世界中に子会社を持っていてアメリカでも取引を行っているのですが、そのアメリカの顧客にアルケゴスという会社がありました。

このアルケゴスは何なのかというと、資産管理会社です。

いわゆる金融機関とはちょっと違って、ヘッジファンドともちょっと違う。

ただの会社資産を運用するだけの会社という事になっています。

このアルケゴスを立ち上げたのが元々アメリカでタイガーファンドという会社を立ち上げていた韓国系のホワン氏という方です。

このアルケゴスが行なっていたのがものすごい『レバレッジ』、すなわち借り入れを起こして自己資金の何倍もの取引を行う事をやっていました。

それでご承知の通り、2021年に入ってからの株式市場は非常に好調です。

その好調の波に乗ってこのアルケゴスは多額のレバレッジをかけて、ものすごい技益をあげていました。

報道されているところによると100億ドル、日本円にしておよそ1兆円もの利益を上げていたと言います。

そこで保有していた銘柄というのがここにあるような、CBSだったり、ディスカバリーいずれもアメリカの大手メディアという事になります。

それから中国のバイドゥやGSXテクエデュという、アメリカのメディアと中国系の企業というのを持っていました。

そしてこの年始から見ていただきますと、CBSに関しては40ドルぐらいだったのが、なんと100ドル、2倍以上に値上がりしています。

ここに対してレバレッジをかけて自己資金の6倍から8倍の取引を行っていたそうなのですが、株価が2倍になったという事は、レバレッジが8倍だとしたら、16倍もの利益を上げていたという風に見える訳です。

このようにこのアルケゴスは少数の銘柄にレバレッジをかけて、集中投資を行っていたのですが、風向きが大きく変わったのが3月23日です。

3月23日にこのCBSコーポレーションが増資を発表しました。

増資というと株式を発行して資金を調達する事なのですが、もうすでに株式を持っている人にとっては一株当り利益が減ってしまうので、一般的にかなり嫌われるものです。

その為CBSも例外ではなくて株価は上がったところからやはり一気に大きく下がりました。

先程8倍のレバレッジをかけて16倍の利益を上げたのではないかという事を言いましたけれども、下がる時には当然それとは反対の動きがおこります。

例えば株価が10%下がるとしたら8倍ですから、80%分の損失を被ってしまうという事になります。

そもそもこれらの会社は16倍の利益を一人で手に出来たかというと、必ずしもそうではないと思われまして、最初はもちろん自分で買うのですが、自分で買いながらどんどん相場を釣り上げていったというところがあるのではないかと思います。

したがって安いところで全部買えていたという事ではなくて、自分の買いが株価を引き上げるというような動きにもなっていたのではないかと思います。

それである程度高いところでも買っているはずで、そこに対して株価が下がったという事になるとこの損失は実は相当なものになっていたのではないかと思われます。

このCBSだけではなくて同業であるディスカバリーに関しても、同じようにつれ安、連想売りで株価が下がったという事がありました。

これだけ集中投資している株価がまとめて下がるという事になると、当然そのレバレッジをかけた時の損失はかなりのものとなります。

そして一般の個人の信用取引でも同じなのですが、レバレッジをかけた物の株が下がると追加証拠金を求められる事になります。

その追加証拠金を払えないという事になると、全て持っている株を清算しなければなりません。

このアルケゴスは実はその追加証拠金をもう払えなかったと言うのです。

そうなると行き着く先は破産という事が考えられます。

しかし証券会社としては、破産されてしまうと取引において損失を被ってしまいますから、その前に元々担保として取っている株式を我先に売る事によって、なんとか損失を抑えようとする動きになったと思われます。

一般的に株式は市場で色んな人と取引するのですが、特定の投資家に対してまとめて売るという、ブロックトレードを行います。

この時にゴールドマンサックスがなんと1兆円を超える、過去最大級のブロックトレードを行ったと言われます。

これによってすでに増資によって下がり始めたCBSなどの株価というのは、当然その株式需給が一気に悪化しますから、この売りが多いという事は株価が下がるという事を意味します。

そしてこのようにこれらの会社上がったところからもう一気に元の水準に戻る程にまで下落しました。

この動きの中でなんとかこのゴールドマンサックスとかモルガンスタンレーは、先に売り逃げる事によって、ほとんど損失を逃れたと言われています。

一方でここから同じようにこのアルケゴスと取引を行っていたクレディ・スイスや、野村ホールディングスに関しては逃げ遅れてしまいました。

するとこれから発生する損失としてはアルケゴスの破産だったり、あるいはその担保に取っていた株式自体も今このようにダダ下がりという事になってしまいますから、これらの一連の流れによってクレディ・スイスは3300から4400億円、野村ホールディングスに関しては2000億円もの損失を被ってしまいました。

誰かがまとめて売ってしまうと株価は一気に下がるという事はもう目に見えていましたから、そうならないようにこの4社で協議を行ったという報道も行われています。

しかしその協議はまとまらずにこのゴールドマンサックスとモルガンスタンレーが抜け駆けをしたというような事も言われています。

「欲」と「レバレッジ」。その先にあるものは...

いずれにしてもこれらの会社がこれほどリスクの高い取引を顧客にさせていたという事は間違いありません。

しかもその顧客というのがアメリカの金融庁であるSECに登録をしていないような、ファミリーオフィスと呼ばれる資産管理会社でしたから、いわゆるその報告義務なんかもなくて、もはや水面下の取引となっていました。

自分の顧客の事ですからその内容についてはこれらの会社を理解していたと思うのですが、それだけ高いリスクの持った取引をさせているという事がそもそものを問題なのではないかと思います。

もっと言えばこのアルケゴスを立ちあげた会社社長であるホワン氏というのは、過去にかなり傷のある方です。

以前はタイガーファンドというのをやっていたのですが、そこではインサイダー取引と相場操縦の疑いで、実はおよそ10年前に金融業界から追放されています。

その事実を見るとこの人物に関してはどんな手を使ってでも、儲けようと思っているのではないかと想定されます。

当然そのような過去があった事を知らないはずはありませんが、一方でこれらの証券会社はそれだけレバレッジの高い取引をするという事は多額の手数料をおとしてくれます。

その為過去の犯罪経歴というのには目を瞑って、このアルケゴスはホワン氏と取引を行っていたのではないかという事が考えられます。

その事自体がコンプライアンス上いかがなものかというところはあります。

すなわちこれらの会社が損失を被ってしまったのは、自業自得なのではないかという風に考えられます。

さて今回このアルケゴスという会社が窮地に陥って、証券会社が損失を被る形になってしまったのですが、これ自体が金融市場の崩壊を招くとか、リーマンショックの再来になるとかそういうものでは必ずしもありません。

個人としてはものすごい資産を動かしていたのですが、市場全体にしてはそんなに大きなもののではないです。

ところが同じような動きがヘッジファンドとか、同じような資産管理会社で起きていないとも限りません。

事実、ウォールストリートジャーナルによると、この1月以降のヘッジファンドの借り入れが急増しているという訳です。

このアルケゴスの事例が氷山の一角で、同じように多額のレバレッジを効かせた投資家がどんどん増えているという事ならば、株価急落のリスクというのはその分膨れ上がっています。

今説明したようにレバレッジを効かせた取引というのは、少しでも下がると一気に追証を迫られたりとかもう首が回らなくなってしまいます。

そうなるともう否が応でも株を売るしかありません。

そうすると他の株も下がるという事になります。

そういう動きが重なると売りが売りを呼んで、ついにはそれこそリーマンショックのような株価急落のような事態にもなってしまいかねません。

私たちはこのような動きに注意を払わなければなりません。

過去の相場、歴史を見ても「欲深さ」と「レバレッジ」、この2つが結びついた時は必ず金融危機が起こっています

今新型コロナウイルスの金融緩和によって、金融市場は過去に例を見ない間は状態になっていますけれども、今の緩んだ空気が突然終わってしまわないとも限らない訳です。

是非この事は頭に置いていてよく市場を観察するようにして下さい。

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4 件のコメント

  • ユーチューブに紹介されている各種の相場の解説は、短期取引、信用取引等の確率の低い危険な手法が大半で、参考程度に見ていましたが、つばめ投資顧問では、より安全で資産運用に適したものであることが分かりました。コロナショックで暴落した時は、落ちるナイフを拾うなと言ったコメントが溢れかえっていましたが、実際にはそこで買った銘柄が一番良い成績を収めました。(ただし資金の一部でした)もっと買えば買ったと思っています。この件について、つばめ投資顧問で質問したことがありましたが、納得できる回答でした。相場を予想せず暴騰、暴落どちらにも対応できるようにするというスタイルが正しいものであると実感しました。

  • ユーチューブに紹介されている各種の相場の解説は、短期取引、信用取引等の確率の低い危険な手法が大半で、参考程度に見ていましたが、つばめ投資顧問では、より安全で資産運用に適したものであることが分かりました。コロナショックで暴落した時は、落ちるナイフを拾うなと言ったコメントが溢れかえっていましたが、実際にはそこで買った銘柄が一番良い成績を収めました。(ただし資金の一部でした)もっと買えば良かったと思っています。この件について、つばめ投資顧問で質問したことがありましたが、納得できる回答でした。相場を予想せず暴騰、暴落どちらにも対応できるようにするというスタイルが正しいものであると実感しました。(修正再コメント)

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