製造業は絶好調!本格的な景気回復なるか?上昇を続ける相場で全ての投資家が気をつけるべきこと

コロナ禍でも製造業は絶好調!景気回復か?

2021年3月調査分の日銀短観が発表されました。大企業製造業の景況感指数(「良い」から「悪い」を引いたもの)はプラス5ポイントとなり、新型コロナウイルス蔓延前を上回りました。一方で、非製造業はマイナス1ポイントと、二極化が鮮明になりつつあります。良かった業種、悪かった業種を以下にまとめました。

タイミングを同じくして、米ISM製造業景況指数も発表され、こちらも64.7と基準とされる50を大きく上回りました。半導体不足が叫ばれるなど、世界的に製造業は好調なようです。

製造業が好調な理由は主に2つあると考えます。

1つは、コロナ禍での生産不足に対応するものです。コロナ禍では工場もストップしたため、供給が減少しました。一方でPCなどのIT機器をはじめとする製品の需要はむしろ高まりましたから、やがて需要に追いつかなくなります。製造各社は、ここにきて急ピッチで生産を行っているのです。これは、日銀短観において在庫の減少が続いていることからも確認できます。

もう1つは、消費者が他にお金を使う場所がないという状況です。コロナ禍で経済的に窮地に陥っていない人を除けば、給付金などで懐は潤っている状況にあります。しかし、それを使おうと思っても飲食やレジャーなどには使いようがありませんから、物を買うしかないのです。それがPCやスマホ、あるいはゲームということになります。

問題はこれがいつまで続くかということです。1つ目の「供給不足」については、やがて供給が追いつけば落ち着いてくるものと思われます。一方で、2つ目の需要の偏りに関しては、コロナが終わらない限り似たような状況が続く可能性があります。

そして、製造業は一般的に「シクリカル銘柄」と呼ばれ、景気後退時には大きく下がることから、これまで売られ株価は低迷していました。ここ最近でこれらの株価が回復したのは、景気回復を見越していた可能性があります。

製造業に関してはまだ割安感のある銘柄が転がっている印象です。もっとも、景気回復がこのまま続くかどうかは未知数ですから予断は許しませんが、長い目でみた時に強みを持つ商品があり、株価にも割安感があるならこの辺りで買っておくのも手かもしれません。それほど、製造業における力強さを感じます。

商品価格の上昇があれば厄介

日銀短観の中で気がかりなのが、仕入価格の上昇です。これは、供給不足によるものと、商品(コモディティ)価格の上昇によるものが考えられます。

【出典】日銀短観

前者はやがて解消すると思われますが、後者は厄介です。商品(原油や金属)は有限ですから、急に生産量は増えません。ここに投機マネーが群がったら、さらに価格を上昇させます。これがやがて販売価格にも影響し、コストプッシュ型のインフレになりかねないのです。

コストプッシュ型のインフレは、景気回復を伴わないインフレ、すなわちスタグフレーションをもたらします。すると、現時点で経済的に困窮している中間層以下がより苦しめられることになるのです。

金融当局としてはそのような事態を避けなければなりませんから、少なくとも投機マネーを解消させるために金融緩和の蛇口を占める必要性に駆られます。当然それは株価へもマイナスの影響を与えますが、実体経済を悪化させないためには必要な措置です。

この辺り、注意深く見守る必要があります。

バイデン増税の行方は?金融市場に危機をもたらすもの

好調な株価や景況感を支えているもう一つの要因が、米バイデン政権の掲げる200兆円にも及ぶ財政出動です。これにより、インフラや半導体、気候変動対策などへ投資を行うということです。株式市場はこの発表を待っていたように上昇し、S&P500は史上初めて4000ポイントを超えました。

ところが、この株価上昇はそう一筋縄に捉えて良い物ではありません。なぜなら、この経済対策は法人税や富裕層への課税とセットだからです。

トランプ政権下では、法人税率が35%から21%にまで引き下げられました。これが株価上昇を勢いづけたことは間違いないのですが、ますます貧富の格差を招く結果となりました。バイデン大統領はこの是正を図ろうと、法人税率を28%に引き上げるとしています。

これが実現すれば、純利益は単純計算で9%減少することになります。そうなると、減税が相場全体を押し上げたのとは反対に、今度は相場全体を引き下げることになります。

もちろん、野党・共和党は反対するでしょうから、そう簡単には増税が行われそうにはありません。しかし、一つのリスクとして捉えておく必要があります。

今の株式市場は、上昇に次ぐ上昇でリスクを忘れてしまっているように見えます。アメリカではアルケゴスという元ファンドマネージャーの運営する資産管理会社が巨額のレバレッジ運用に失敗したことで、野村HDをはじめとする金融機関は数千億円もの損失を被る結果となりました。レバレッジは良い時は大きく儲かりますが、失敗するとそのダメージは莫大かつ急激なものとなるのです。

金融市場において、危機をもたらすのはいつも「強欲とレバレッジ」です。このことを忘れないように、いつ何が起きても慌てないようにしたいものです。

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