東芝買収、非上場化を検討―どこでしくじったのか?

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以下、文章化したものです。

 


今回は東芝についてお話ししたいと思います。

東芝に対してイギリスのファンドであるCVCキャピタルが買収提案を行うという事です。

この買収が成立すれば東芝は上場廃止になる見込みです。

何故今このような状況になっているのかという事について、東芝の経営のしくじりという観点から見ていきたいと思います。

目先を優先した経営の悪手

こちらの日経のスクープです。

これはどういう事かというと東芝に対してイギリスの投資ファンドであるCVCキャピタルというところが、御社を2兆円で買いますというような話をしている訳です。

この2兆円という金額、一般的に企業が上場企業を買収する時は、現在の株価よりも30%のプレミアム上乗せ価格を支払うという風にに言われています。

この報道がなされる前の東芝の時価総額は1.7兆円ぐらいなので、それに3割のプレミアムを乗せて2.3兆円という資産になっています。

この報道受けて東芝の株価が大きく上昇して、当然その買収に向けて上昇しているという事になるのですが、これをやると東芝はいよいよ上場を廃止になってしまうという事なんです。

実は東芝というと数年前に経営危機を迎えて、一時は東証2部に落ちてしまっていました。

しかしそこから何とか東証1部に戻ってきた矢先の出来事ですから、驚きを隠せません。

こうなってしまったのは、東芝のこれまでのしくじりが未だに尾を引いているという部分があります。

これにあります通り2015年4月、不正会計問題が発覚しました。

チャレンジといって、売り上げを水増しするような会計が行われていた事から、それによって損失を計上したという事もありますし、この東芝のガバナンス自体にも問題があるという風にされていました。

更にはこの2016年12月にはアメリカの原子力子会社のウエスチングハウスというところをかなりの高値で買収していたのですが、それに価値がないという事になって、驚愕の数千億もの損失を計上する事になりました。

その結果財務に関しては債務超過という事になりました。

上場企業が債務超過になるとすぐに上場廃止になる訳ではないのですが、これが2期連続で続くと上場廃止になってしまいます。

少なくとも1期の時点で東証1部だったものは東証2部に落ちてしまいますから、それを受けて東芝は東証2部に落ちてしまいました。

ここから上場廃止を免れる為には何とかこの債務超過を解消しなければいけません。

債務超過を解消する為には資本を入れる、つまり増資をしないといけません。

しかしこの時点で東芝は会計に問題があるとか、あるい継続性に疑義がある、このまま行くと潰れてしまうのではないかというような事も報道もされていましたから、公募増資なんかで多くの投資家から資金を募るというのは公的な観点でも難しかった訳です。

そんな時に助け舟というか、お金を出すぞと言ってきた人達が約6000億円の増資というところなんですが、この時に出資したのが旧村上ファンド系のエフィッシモという会社を始めとする、多くのファンド達、多くは”モノ言う株主”達なんです。

彼らが増資の引き受け手になって何とか資本を増やして、そして東芝は上場廃止を免れる事が出来ました。

この増資というのが当時の報道です。

実は村上ファンド系のエフィッシモという会社は、この増資の前から東芝の株を買い増していました。

それで800億円の増資を行ったのですがそれでかなりの株を得て、筆頭株主に躍り出ています。

村上ファンドというと皆さん覚えているかも知れません。

ライブドアがニッポン放送を買収しようとした時に出てきて、そこでインサイダー取引があったという事で懲役刑もかつて受けているのは村上氏で、その彼に連なるファンドがこのエフィッシモなんですが、モノ言う株主という事で企業に様々な注文を出して、そして株価を上げさせてリターンを得るというのが目的とするファンドです。

このエフィッシモだったり、それに似たようなファンドが多く株主として残った事が後々尾を引いてくる事になります。

それはまた説明するとして、東芝は未だに経営状況が厳しくて、もともとかなり収益性の低い状態でしたから経営改革という事で様々な事業を売却していく訳です。

2015年にはCMOSイメージセンサーを売却、海外テレビ事業から撤退、2016年には東芝メディカルをキャノンに売却、2017年にはウエスチングハウス社をグループから除外し、東芝メモリを売却しました。

2018年にはテレビ事業、PC事業から撤退、そして2019年英国原子力発電やLPG事業から撤退しています。

この中で特に注目すべきなのは、東芝メディカル東芝メモリーです。

実はこれは東芝のかなりの核を担っていた事業です。

東芝メディカルはMRIなど病院に対してかなり難しい設備を納入していました。

実はここは結構利益を出していまして、更に医療という事なので、今後更に需要が期待出来たのですが、目先の財務状況を改善する為にどうしても売らざるを得なかった訳です。

買う方は欲しい器具はいっぱいありましたから、競争になっていたのですが、結果キャノンが買ったという事になります。

また一方でこの東芝メモリは半導体のを作る会社なのですが、半導体というと実は業績のアップダウンが激しくて、ダウンの時は結構な赤字を計上して、その時は経営を厳しくしてしまうのですが、一方で調子が良いと時はものすごく儲かります。

今足元でTSMCが11兆円の投資を行うと言っていたりもする事から、半導体事業はものすごく活性化しています。

3割の株式は持っていたのですがこの時点で売ってしまわざるを得なかったというのは非常に悲しい状況ではあります。

そこに至るまで経営改革を行えていなかったというのが、東芝の一つのしくじりという事になります。

青の棒グラフで示されているのが売上高です。

見事に右肩下がりです。

企業を切り売りしているので当然減っていって、ピーク時の半分以下というところになってきました。

一方ではテレビとかPCとかそういうコンシューマー向けは全く利益が取れていませんでしたから、これらを売却する事によって何とか利益を確保しました。

営業利益は恒常的に黒字になるような体質には出来て、何とか東証2部から東証1部復帰する事は出来ました。

ところが先程言いました2つ目のしくじりです。

目先の上場廃止を免れる為に村上ファンド系を始めとする、多くのモノ言う株主を入れてしまったのが今東芝を苦しめているというところがあります。

株主構成を見ますとゴールドマンサックスとかカタカナの名前が並んでいますけれども、直接的に見てもファンドだったりするところは投資銀行とかそういったところを通じて買っているので実態の保有者というのは分かりにくいところがあるのですが、こうやってみる限りやはりファンドがいっぱい持っている事は間違いなくて、その中で筆頭株主になっているのがこの村上ファンド系のエフィッシモです。

これが15%超の株式を持っています。

そのエフィッシモが様々こういったファンドに呼びかけて、東芝に対して色々モノを言おうとしてきます。

例えば直近は2020年7月にあった株主総会では、エフィッシモが送り出す取締役を就任させてくれというような株主提案も行っています。

更には現在の車谷社長に対して賛成58%で、50%を切ってしまうと賛成されないので、社長の続投そのものもかなり薄氷でした。

つまり株主総会運営自体がかなり厳しいという状況になっています。

更に言うとこの先程取締役選任の株主提案を行ったと言いましたが、これに関して問題があったのではないかという話が出ています。

それに対して再調査をしてほしいというような株主提案をエフィッシモが行いました。

そしてなんとその再調査に対して株式決議をはかったら、2021年3月に可決されました。

こういった状況から見ましても現時点でこの東芝の経営というのは、このエフィッシモにかなり掻き回されている状態ですし、何も手を打たなければこの状態はまだまだ続いてしまうという事になります。

そこでこのままだと経営がままならないので、車谷社長が泣きついたのが先程説明したイギリスのファンドCVCキャピタルという事になります。

このCVCキャピタルはモノ言う株主とかではなくて、比較的まともな「プライベートエクイティ」、上場してない株式に投資をするようなファンドなのですが、そこが東芝を買収してこれらの株主を一掃する事によって、東芝が安定した経営を行う事を目指した訳です。

この車谷社長が泣きついたCVCキャピタルというところ、実は車谷さんは三井住友銀行出身なのですが、このCVCキャピタルのアジアパシフィックジャパン会長兼共同代表を一時勤めていました。

つまり彼が古巣に泣きついたという事がある訳です。

自分の古巣に東芝を買わせるような動きというのはそもそも広義の利益相反に当たるのではないかという話はあります。

その話はまた別途という事にはなるのですが、買収提案を受けまして東芝の株価上昇して、ここで大きく上がっています。

ところがその過去の株価を遡ってみますと、この第三者割当増資が行われた辺りが3000円位です。

これが直近でこの買収の報道が起きる前も4000円に達していないような状況でした。

すなわちこの村上ファンドとしては実はそんなに現時点で利益を上げている状況ではありませんでした。

ところが、こうやってCVCキャピタルが3割のプレミアムを乗せて売却するという事になると、この金額に関してはエフィッシモがクレームつけてくるかもしれませんが、間違いなく言える事は、買収が成立するなら買った価格よりもかなり高い金額で売れる事は確実になってきたという事です。

そういった意味でこれまで色々モノを言ってきたファンドとしては甲斐があったという風には言えるのですが、色々モノを言って株を最終的に買い取らせるというやり方はそういう方法がありまして、「グリーンメーラー」と言います。

ここにあります通り株式を買い占めた上で高値で関係者に買い取りを迫る買収者の事とあります。

村上ファンドは直接的に買い取りを迫った訳ではないのですが、ぐるぐるかき回した事で結果的に買取を行うような流れにしたという意味ではこのグリーンメーラーが成功したと言えるのではないかと思います。

ただこういった行為は必ずしも褒められたものではなくて、場合によっては経営をぐちゃぐちゃにしてしまうという要素もあります。

そのグリーンメーラーを最終的に利する形になるとしたら、東芝の経営陣は一体何をやっているんだというようなところがあります。

そもそも何故東芝がこういった状況に陥ってしまったのかというと、とにかく過去の経営陣達が目先の利益ばかりを優先した結果だという思われます。

東芝というとブランドがすごいですし、ものすごく大きな会社です。

しかしその経営者達はですね自分の任期だけ良ければ良いという事も考えたのかもしれません。

例えば不正会計でも目先の業績を上げようとしたり、あるいはこの上場廃止に関してもとにかく上場廃止を逃れようとするばかりにこのモノ言う株主呼び入れてしまった、謂わば自ら鬼を中に招き入れてしまうような事をしました。

自分の任期中は大きな赤字を出して上場廃止になってもいいから、東芝を再建させる為に必死にやって来れたら、大事な事業、東芝メモリや東芝メディカルといった大事な事業を売る必要もなかったかも知れませんし、結果的にグリーンメーラーを利するような事もなかったのではないかと思います。

そういった意味で東芝の経営陣には猛省してもらいたいと思いますし、また他の日本企業はこの事例を反面教師としてやっていただきたいというところではあります。

買収は立て直しのチャンス。政府は許すか?

さてこれから東芝がどうなるかという事なんですが、この買収自体が成功するかどうかはまだ分からないのです。

というのも東芝というとそれこそ原発とかインフラとか、日本の国益に対する重要な事業を行っています。

これが外為法といって外国の企業がこの東芝に1%以上の追加投資を行う時には、審査を行わなければなりません。

この審査が通らなければなければこのCVCキャピタルが丸ごと東芝を買ってしまうようなやり方は出来ないという事になります。

要するに政府が首を縦に振るかどうかというところです。

逆に言えば政府が首を縦に振ってしまえばCVCキャピタルが買うという事もありえるでしょうし、また単独ではなくて例えば政府系のファンドが入ったり、日本のファンド事業会社が入ったりするような形で、何とかまとめるという事もあると思います。

これは東芝、車谷社長の根回し次第という事になります。

もしこの買収が成立したらむしろ東芝の経営に関しては私は明るいという風に思っています。

というのも東芝は色々切り売りして売上こそ減りましたけれども、まだ全く死んでいるという状況ではありません。

例えばこのインフラシステムや、エレベーターとかそういったものを含めたビル環境、それから発電とかそういったエネルギーに関しては利益率から見てもそれなりの力を持っています。

これが何かというとまさに今バイデン政権でも行われているグリーンイノベーションの本命です。

これを環境に対する設備というの東芝が一手に担う事が出来ればかなりの強みを持ってくるようになると思いますし、IOTなんかも含めて、これらとデータを含めた総合的なソリューションを提供出来るという事になれば、まだまだ東芝が生き返る余地は残っていると思います。

それだけの人材がいると思っていますから、後は経営次第という事になります。

正直銀行出身の車谷社長がこのまま社長に居残るという事になると、いよいよ車谷社長がこのCVCに助けを求めて自分の続投をさせたという事になると、利益相関を問われかねませんから、車谷社長は退任するのが筋ではないかと思います。

外部のより優秀な経営者が入ってくる事が出来ればそれは可能だと思いますが、ただ一筋縄にはいかない事も確かです。

それほどかなり難しい経営という事になるのですが、東芝の今後どうなるかという事はこれはある意味日本経済の立て直しという事もかかっている訳です。

今後も注意深く見守っていきたいと思います。


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