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以下、文章化したものです。
今回は海運3社について見ていきたいと思います。
この海運3社の株価は直近で非常に大きく上昇しています。
一方で株価水準を見ますとPERがなんと7倍程度、場合によっては2倍程度という会社もあって、非常に割安な水準に見えます。
はたしてこれらの会社は割安なバリュー株として、これからも買えるのかという事について説明していきたいと思います。
コロナの反動!コンテナ価格の高騰
日本郵船、商船三井、川崎汽船という3社があるのですが、これらがこの1年で大きく上昇しています。
多くの投資家がこれらの会社での取引で利益をあげていると見える訳ですが、何故これだけ株価が上昇しているのかというと、足元での業績が非常に明るい見通しが立っています。
各社とも業績の上方修正を発表していますし、その裏付けとなるのがコンテナ価格の上昇にあります。
ここにあります日本経済新聞の記事です。
コンテナ運賃の価格が非常に高くなっているのですが、1年前はこの40フィートコンテナ辺りおよそ1500ドルぐらいだったのですけれども、これが何と大きく上昇しまして、4000ドルぐらいにまで上昇しました。
何故このような事になっているのかというと、確かにあるのは新型コロナの影響です。
1年前はむしろこの新型コロナで物流が完全に止まってしまって、これらの会社先行きが見えない状況にもなっていました。
ところがそこで一旦物流が止まった事によって、逆に反動需要が発生しました。
コロナの中でも物を世界中で運ばないといけないという事があったので、どんどん運ぶべき荷物というのが各社溜まっていきました。
一方で、供給力、運ぶ力というのはなかなか高まりませんでした。
というのも、ロックダウンとか新型コロナ対策によって、労働力が足りなくなってしまったからです。
供給に関しては混乱が起きていると言います。
そんな中で、一方では各国が給付金なんかでどんどん個人の懐は潤っていたりして、それで何をやったのかというとパソコンとかスマートフォンとか様々な物を買うという動きが起きました。
こうやって供給の方はものすごく少なくなっているのに、一方で運ばなければならない需要というのはどんどん高まりました。
これよって需要と供給の乖離が生まれました。
こういったときに何が起こるのかというと、価格の高騰です。
すなわち船会社としてはどうしても運びたい人がいるのだから、纏めてたくさん運ぶ事は出来ないけれども、逆に高い価格でも運ぶ人がいるなら、料金を値上げしましょうよという動きになります。
こうやってコンテナの運賃がどんどん高騰して、各社の業績にプラスの影響を与えたという事になります。
この価格の高騰は業績に非常に大きな効果を与えて、一般的に売上が増加した時に、例えば100の売り上げに対して利益率が30%だったとしましょう。
これが売上が120になったとすると利益率が30%のままだったら、利益を30から36に上がる程度になります。
ところが価格の引き上げというのは価格を単純にいじるだけですから、コストは全く増えません。
すると同じ売り上げが100から120になったのでも企業はそのままで利益だけが増えるという事になりますから、30だった利益が50になるという事になります。
これによって価格の高騰が利益を大きく引き上げるというところになっていますし、もともとこれらの海運会社は利益率が低いので、利益率が低いほど価格を引き上げた時の効果が大きいです。
利益率が2%から4%になっただけで2倍になります。
この結果これらの各社これまで経験した事のないような高い利益を上げる事が見込まれています。
株価が大きく高騰したもう一つの要因としては、そもそもこれらの会社の株価が非常に安く抑えられていたというのがあります。
何故株価が安かったのかというと業界的な構造があります。
この業績を見ますと各社非常に落ち込んでいます。
売上高を見ても右肩下がりと言える状況です。
利益に関しては度々この点線を下回る赤字になるというような状況が続いています。
特にこの川崎汽船などは悲惨で、2期に1回は赤字というような状況になっています。
こんな状況でしたから全く期待されていなかったと言えるのですが、先ほど説明したようにコンテナ価格の上昇によって利益が急に押し上がるという状況になりました。
その結果、株価がすごく上がって日本郵船に関しては3倍というような状況になりました。
実はこのような状況になる伏線というのもありまして、この3社は低収益に抗おうとして、手を組んでコンテナ事業の統合会社を立ち上げました。
それが2017年の事で、オーシャンネットワークエクスプレスという会社です。
各社がおよそ3割ずつを出資してコンテナ事業に関して、これらの会社で世界に伍していこうという事になりました。
少なくとも日本の中で競争している場合ではないというような事になりました。
ここから分かります通り海運事業で大切なのは要は規模を持って価格競争力、価格交渉力を付けるという事なのです。
今たまたまは供給力が減って価格交渉力があったから、このコンテナ価格が上がったという事になっているのですが、今回このオーシャンエクスプレスが非常に効果を発揮したと思われていまして、価格交渉力を持った中で高くを引き上げた結果、業績に大きなプラスになったとこういう事になります。
いびつな損益計算書のワケ
余談ですけれどもこの統合会社のおかげで、各社のPL(損益計算書)がちょっといびつな事になっていまして、これが日本郵船の第三四半期の決算なのですが、通常の営業利益と経常利益というのはそんなに大きく変わらなかったり、利息の支払いで経常利益の方が小さいというパターンが多いのですが、ここに関してはなんと直近で営業利益470億に対して経常利益1200億という3倍近い数字になっています。
これは何故かというと、この持分法による投資利益、これがコンテナ事業の利益です。
日本郵船の場合は38%を持っていますので、このオーシャンエクスプレスの利益の38%がここに乗ってくるという事になります。
今回この部分が非常に大きく儲かったのでこの営業外収益が出て、そして結果経常利益が非常に大きくなったということになっています。
これは商船三井や川崎汽船も同じで今後もこのような状況になってくるという事になります。
損益計算書の分析をする時には是非気をつけて見てみて下さい。
目先のPERだけで判断するな!
さてこれだけ株価が上昇してきたにも関わらず割高なのかというと、PERを見てみましょう。
このように予想PER日本郵政が7.3倍、商船三井が7.9倍、そして川崎汽船に至っては2.7倍という上がって尚すごく低いと思える水準です。
では長期投資としてこれらを会社を買っていいのかという事を考えたいと思うのですが、これまで説明した通り業績が上昇しているのは一時的にコロナの混乱によって、需要と供給のバランスが大きく崩れて、コンテナ船の価格が非常に高止まりしているところにあります。
もちろん業界としてはこの状態をずっと続けたい訳ですから、それこそこのワンのように統合を行って価格交渉力を付けるとこういう動きが考えられるのですが、一方では競争というのもありますから、ずっとこの状態が続くというのはなかなか考えにくいと思います。
やがては平常の状態に戻ったらこの価格も戻っていくのではないかと考えられます。
そうなると尚苦しい状態というのは変わりません。
そもそもこの海運事業というのは船に大きな投資をして、その費用をなんとか払いつつ、一方ではこの価格競争に勝ち抜いていかないといけないという側面がありますから、厳しい事に今後も変わりがないのではないかというのが私の見立てです。
それでもこの価格が定着すれば利益が高くなり続けるという事も考えられますから、その辺を勘案したとしても、バリエーション水準を見ても例えば目先のPERだけで割高割安を判断してはいけないという典型的な事例になります。
PER7.3倍とありますけれども過去に遡って見た場合に、例えばこの経営統合を行った後の2018年からの平均EPSを見ると、143円という事になります。
これは直近の予想である533円に比べるとやはりかなり少ないです。
これに対するPERというのを考えます。
現在の終値が3,905円ですから、こ3905を43で割るとPERとしては27.3倍という数字が出ます。
これが現在の妥当な見るべきPER水準ではないかと思います。
そう考えると平均が15倍程度といわれる中で、少し割高だなという事があります。
もちろんこのコンテナ船価格の高止まりが続けば利益が上がるという事も考えられるのですが、それにしてもやはり高いという印象は否めません。
最後にもう一度言いますと、目先のPERが必ずしもを割高割安を示しているものではなくて、ちゃんと過去とか背景に迫る必要があります。
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